皆さん、こんにちは!
富士通ラーニングメディア デジタル人材育成ソリューション事業本部の吉田です。
このコラムは、プロジェクトマネジメントや品質マネジメント、上流工程について執筆するシリーズの第14弾です。(前回までのコラムはこちら(注1))
プロジェクトマネージャーという職務は、常に「決断」の連続です。品質の悪化、予算の超過、スケジュールの遅延・・・日々押し寄せる多種多様な問題に対し、プロジェクトマネージャーは最適な一手を見出すことを求められます。
しかし、プロジェクトマネージャーが最も頭を悩ませる問題の多くは、実は技術的な難しさだけから来るものではありません。
そう、プロジェクトの真の難敵は、往々にして「人」であり、「組織」です。能力は抜群なのにルールを軽視する超一流のベテラン。重要な課題をいつまでも放置する顧客側のキーパーソン。あるいは、緊急事態にも関わらず、個人の都合を優先するメンバーの存在。これらはプロジェクトマネージャーにとって、技術では解決できない、そして時に「正解」が見えにくい、手ごわい壁として立ちはだかります。
今回のコラムでは、プロジェクトマネージャーが直面する様々な問題の中でも、特に「人」にまつわる問題について焦点を当てて考えていきたいと思います。
プロジェクトで問題が発生した状況下で、皆さんがプロジェクトマネージャーなら、どのような次の一手を打ち、どのような決断を下しますか? 一緒に考えていきましょう!
こんな問題、皆さんのプロジェクトにもありませんか?
皆さんは、新商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーです。チームには、あなたとは異なる部門から派遣されてきたベテランがいます。その人はまさに「超一流」です。成果物を他のメンバーの約3分の1の時間で仕上げ、品質も申し分ない、それほど超一流のベテランなのです。彼がいなければ、プロジェクトの進行は立ち行かないくらいです。
しかし、そんな彼には唯一にして最大の問題がありました。それは、プロジェクトの共通認識やルールを厳守しないことです。彼は、自身の成果物に対するチェックは「個人で十分に確認している」とし、他のメンバーとの相互確認プロセスには参加しようとしません。あなたが丁寧に指摘しても、「次回は配慮します」と返答しながら、現実は何も変わらない。どこか他人事のような態度を取ります。
さらに深刻なのは、その影響がチーム全体に波及していることです。彼の類まれなる能力を目の当たりにした若手は、「あのベテランのやり方でも許されるなら、自分たちも・・・」と、ルール順守に対する意識が薄くなっているように感じられます。
そんな時、彼が担当した新商品デザインや仕様で、問題が発生!!
後工程で実現不可能だと分かり、大幅な変更が必要になってしまいました。
さて、今回の問題を整理しましょう。問題は、下記のようなものが考えられます。
このような「人」にまつわる問題は、実に多くのプロジェクトで直面するものではないでしょうか。
プロジェクトでは、特定の目標達成に向けて多様な人材が結集して動きます。リモートワークで場所を問わず、また外部の専門家が加わることも珍しくない現代において、チームメンバーのバックグラウンドや働き方は多様です。そうした中で、全員が全く同じルールを完全に順守することは容易ではありません。特に、他部門からの派遣者や期間契約のスペシャリストなど、組織内の既存ルールや文化へのコミットメントが薄い場合、この傾向は顕著になります。
個人の卓越した成果は、プロジェクトにとって計り知れない価値があります。しかし、その突出した能力ゆえに、個人の判断や手法(いわゆる「独自ルール」)が優先され、チーム全体の協調や共通認識が置き去りになることがあります。その結果、特定の個人に依存しすぎたプロセスが生まれ、予期せぬトラブルや後続作業の滞りを引き起こすリスクが高まるのです。
そして、この状況が最も深刻な影響をもたらすのは、同じプロジェクトのメンバーです。能力の高い個人の存在が、チーム全体の健全な成長や、オープンな議論を阻害する「壁」となってしまうことも、残念ながら現実には存在します。
今回のケースでは、ベテランの絶対的信頼と権威、そして、プロジェクトのルールを軽んじた行動によって「壁」が築かれました。彼の超一流の能力と過去の実績が、自身の判断への異論や相互確認の必要性を否定する根拠となり、周囲に「反論しづらい」という心理的な圧力を生み出しています。また、指摘に対する「次回は配慮します」という返答は、建設的な対話を封じ込めることになり、結果としてデザインや仕様の問題点について、誰も早期に深く議論できない状況を生み出していると言えます。
技術やツールの進化が速く、ルールやプロセスが頻繁に更新される現代において、プロジェクトマネージャーは、自分より経験が豊富で、かつ所属も異なる優秀な個人に対し、どのようにリーダーシップを発揮し、チームとして最高のパフォーマンスを引き出すべきなのでしょうか。
この問題は、単なる能力や経験の有無を超え、多様な才能が集まる現代のプロジェクトにおいて、いかにして「人」という最も複雑な要素をマネジメントし、プロジェクトを成功に導くか、というプロジェクトマネージャーの根源的な問いなのです。

プロジェクトの規律を乱す超一流なベテランという難しい課題に対し、プロジェクトマネージャーとしては様々なアプローチが考えられます。
皆さんのプロジェクトにも、独自ルールで動く人、プロジェクトマネージャーの指示を聞かない人がいませんか?
皆さんがプロジェクトマネージャーなら、どう判断し、どのように対応しますか?
今回のコラムでは、皆さんに問いを示して、終わりにしたいと思います。皆さんの経験をもとに、皆さんなりの解答を是非考えてみてください。
次回コラムで、解決編を掲載します。お楽しみに。
富士通ラーニングメディアでは、システム開発に関わる方に対する初心者向けのプロジェクトマネジメント基礎研修から、経験者向けの応用研修まで、幅広いニーズに対応した研修プログラムを取り揃えています。また、初めてマネジメントを学ぶ方向けのコースも用意しています。
プロジェクトマネジメントの知識を持っている人材は、どの会社においても、どの立場においても、必要不可欠です。プロジェクトマネジメントの知識を身につけたい方は、ぜひ富士通ラーニングメディアの研修をご検討ください。
今回のコラムで取り上げた研修は、こちらのコースです。
技術的な知識だけでは解決できない、具体的なプロジェクトの場面を想定し、あなた自身が主体的に考え、判断を下す実践的な討議が中心のコースです。各ケースにおいて、提示された選択肢の中から最も適切と思われる行動を選び、その理由を深く考察することで、プロジェクトマネージャーとしての意思決定能力とリーダーシップを飛躍的に向上させることができます。実践経験豊富なFLM講師のアドバイスも必見です!
(注1)これまで私が執筆したプロジェクトマネジメントや品質マネジメント、上流工程(要件定義)におけるコラムも是非ご覧ください。
これからも皆さんにとって有益な情報をお届けできるよう尽力します。今後のコラムも是非楽しみにしてください。

デジタル人材育成ソリューション事業本部
プロマネ品質上流チーム所属
吉田 千鶴(よしだ ちづる)
COBOLやメインフレームの研修講師を経て、近年はアジャイル研修の講師やシステム開発のプロマネも経験しています。美味しいコーヒーを飲みながらまったりする時間が好きです。
(2025/12/18)