プロジェクトは計画で決まる!(続編)~変化に対応する「生きた計画」でプロジェクト成功へ~

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皆さん、こんにちは!
富士通ラーニングメディア デジタル人材育成ソリューション事業本部の吉田です。

4月から新しい年度となり、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
新年度は、新たなスタートを切る絶好の機会です。これまで培ってきた経験を活かし、さらにスキルアップを目指しましょう。
皆さんの未来が輝かしいものになるよう、陰ながら応援しています。

さて、このコラムは、プロジェクトマネジメントや品質マネジメント、上流工程について執筆するシリーズの第7弾です。前回までのコラムはこちら(注1)

今回は、前回の第6弾で取り上げた、「計画」の重要性についてのコラム続編です。

まずは、第6弾の内容を振り返りましょう。

プロジェクト成功の鍵は「計画の質」です。
プロジェクト計画は「十分な計画=(生きた計画)」であることが重要です。
・十分な計画を行うには、プロジェクトの全体像を捉え、主要なマイルストーンとタスクを明確にし、潜在的なリスクや問題点を洗い出すこと。過去のプロジェクトで得られたノウハウ(知識・経験)やPMBOK(R)ガイドなどを参考に、スコープ、スケジュール、コスト、品質などを網羅的に計画するのが、プロジェクトマネージャーの役割!
・完璧な計画は不可能だが、「段階的詳細化」で柔軟性を確保し、変化に対応した計画を作成することで、関係者全員が共有・合意する「生きた計画」を目指し、具体的な行動指針、リスク対応策、進捗状況の可視化を盛り込むことが大事!

計画は単なる準備作業ではなく、プロジェクトを確実に成功へ導く道標となるものです。計画の重要性を軽視することは、プロジェクトの失敗リスクを高めることになる、という内容が前回の第6弾のポイントでした。
第6弾のコラムをじっくり振り返りたい方は、前回までのコラム(注1)をご確認ください。
 
では、第7弾も引き続き「計画」の重要性について語っていきます。
皆さんはGW(ゴールデンウイーク)のご予定はもう決まっていますか?
GWのように長期間でのお休みがあれば、旅行を考える方も多いのではないでしょうか。

今回は、「十分な計画(=生きた計画)」の仕方について、「GWの北海道旅行」を例に考えていきたいと思います。

GWの北海道旅行プロジェクトを成功させる計画

GWの北海道旅行は、まさに計画の質が非常に重要なプロジェクトと言えます。なぜなら、GW期間中の北海道は観光客が多く、交通機関や宿泊施設の予約が取りづらく、さらに観光地の混雑など、考慮すべき点が多岐にわたるからです。

GWの北海道旅行を成功させるための「十分な計画(=生きた計画)」を考えましょう。これは、旅行の計画段階で以下の点を明確にすることを意味します。

スコープ(旅行の範囲):
どこに行きたいのか、何をしたいのかを具体的に決定します。例えば、「富良野のラベンダー畑を見に行く」「小樽で海鮮を食べる」「旭山動物園に行く」「温泉でゆっくり過ごす」など、です。
スケジュール:
行きたい場所とそこでどのくらい過ごしたいか、移動手段と移動時間、宿泊先と滞在時間などを計画します。混雑を想定した余裕のあるスケジュールを組むことが大事です。また、北海道は思ったよりも広いです。観光地間の移動時間が6時間もかかることもあるので注意が必要です。
コスト:
交通費、宿泊費、食費、観光施設の入場料など、必要な費用を事前に見積もり、予算を立てます。
品質:
どのような旅行体験をしたいのかを明確にします。例えば、「快適なホテルに泊まりたい」「美味しい食事を楽しみたい」「思い出に残る写真をたくさん撮りたい」「北海道ならではの体験を楽しみたい」など、です。ただし、あれもこれも満喫したいと思うと、過密スケジュールになったり、費用が予算以上にかかることもあるので、よく考えましょう。
リスク:
GWの北海道旅行には観光地の混雑、寒暖差によって起こる体調不良など、様々なリスクが潜んでいます。これらのリスクを事前に洗い出し、対応策を検討しておくことが重要です。例えば、想定外の混雑により移動・入場が出来なかった場合のための代替プランの確保、日中の紫外線や昼夜の寒暖差対策など、です。

計画段階で「段階的詳細化」によって柔軟性を確保し、変化に対応した計画を作成しましょう。計画の段階では、詳細な内容まで詰めません。また、計画したことは「旅のしおり」に記載していきましょう。これが、いわゆる計画書です。
旅のしおりを作成して、下記を行います。

関係者全員が共有・合意する:
家族や友人など、一緒に旅行に行くメンバーと計画(旅のしおり)を共有し、意見を出し合い、合意を得ることが大切です。
具体的な行動指針:
各観光地のアクセス方法、予約方法、持ち物リストなど、具体的な行動指針を明確にします。また、実行するために必要な情報(いつ、誰が、何をする)かも明確にしておきましょう。例えば、ホテルの予約は誰がいつするかを決めておかないと、誰もホテル予約をしていないなんて大問題が発生しかねません。
予約の実行:
担当者が期日までに必要な予約作業を行います。
リスク対応策:
混雑時の代替プラン、体調不良時の対応など、リスク発生時の対応策を具体的に準備しておきます。
進捗状況の可視化:
旅のしおりを基に、旅行の行程がどこまで進んでいるか、進捗状況を常に把握できるようにします。
日々の振り返り:
その日の夜に、今日は満足だったかを確認します。例えば、「今日は行きたかったお店でランチをしたら、想像以上に美味しかった」など、です。満足の評価はとても重要です。多少問題があっても予定外のことがあっても、満足なら今日一日の旅行が良い思い出になることが多いからです。
もし、満足いかなかったのであれば、明日の予定を変更することも考えましょう。例えば、「ガイドブックのおすすめのお店は思ったより量が少なかったから、明日はジンギスカン食べ放題に変更しよう」など、です。変更によって、スケジュールとコストも見直す必要があります。
全体の振り返り:
旅行が終わった後、今回の旅行は満足いく旅行だったかを振り返ります。予算はオーバーしなかったか、次回に活かせる教訓は何かなどを振り返ります。例えば、旅行予算に対して、実績値がどうだったかを清算して青ざめるのもこの時点です。結果をしっかり振り返ることで次回の教訓になります。

上記のように、計画段階で日々の振り返りや全体の振り返りも計画しておきます。

何度も強調しますが、重要なのは「十分な計画(=生きた計画)」です。最初から詳細に計画はできないため、直近の情報をもとに計画は段階的に詳細化していきます。そのためには、日々の振り返りを実施することが大事です。

また、日々の振り返りを実施するためには、計画段階で振り返りをすることを盛り込んでおくことも大切なことなのです。

GWの北海道旅行は、計画の重要性を軽視すると、台無しになる可能性があります。

例えば、交通機関や宿泊施設の予約を怠ると、飛行機や新幹線、ホテルなどが一杯で利用できず、旅行自体が中止になる可能性があります。紫外線対策を怠ると、酷い日焼け(皮膚の炎症)、脱水症状、熱中症、疲労感など体調に影響が出て、旅行を楽しめなくなる可能性があります。

リスク対応策を準備しないと、交通機関が遅延した場合、途方に暮れてしまう可能性があります。

GWの北海道旅行を成功させるためには、十分な計画を立て、リスクを洗い出し、柔軟に対応できる体制を整えることが大事です。

日々の振り返りと全体の振り返りを行うことで、計画の精度を高めていき、より良い旅行体験を実現することができます。

旅行ひとつを取っても、計画は単なる準備作業ではなく、満足のいく旅行にするための確実な道標になることが分かります。

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さて、2回に渡り、計画の重要性を語ってきました。いかがだったでしょうか?

仕事もプライベートも、「計画」の重要性は変わりません。
私も初めてプロジェクトマネージャーになった時には、計画での失敗は数多くありました。いま振り返ると、「段階的詳細化」で行う「十分な計画(=生きた計画)」すら、まともにできていなかったのだと思います。

計画の可視化(計画書類の作成)からのプロジェクト関係者との合意も正しくできていたとは言えず、プロジェクトが動き出してから、コントロールすることは本当に大変なことでした。プロジェクト実行中に正しくコントロールができるのは、生きた計画が実現できているからこそ、なのです!

皆さんも計画を学び、プロジェクトを成功に導く力を身につけてください。皆さんのプロジェクトが成功するよう、祈っております!

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プロジェクトマネジメントのコース紹介

富士通ラーニングメディアでは、システム開発に関わる方に対する初心者向けのプロジェクトマネジメント基礎研修から、経験者向けの応用研修まで、幅広いニーズに対応した研修プログラムをご用意しています。また、初めてマネジメントを学ぶ方向けのコースも用意しています。

プロジェクトマネジメントの知識を持っている人材は、どの会社においても、どの立場においても、必要不可欠です。プロジェクトマネジメントの知識を身につけたい方は、ぜひ富士通ラーニングメディアの研修をご検討ください。

プロジェクトマネジメント研修コースのご紹介

また、今回ご紹介したコースは下記です。

PMBOK(R)ガイドに基づいたプロジェクトマネジメントの知識体系を解説しており、特にプロジェクト計画段階で重要となる各マネジメント計画の作成方法に重点が置かれている、計画の重要性を確認できる研修です。こちらも、ぜひご検討ください。

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執筆者紹介

デジタル人材育成ソリューション事業本部
プロマネ品質上流チーム所属

吉田 千鶴(よしだ ちづる)

COBOLやメインフレームの研修講師を経て、近年はアジャイル研修の講師やシステム開発のプロマネも経験しています。美味しいコーヒーを飲みながらまったりする時間が好きです。

(2025/04/24)

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