ユーザーの期待に応える秘策!システム開発における品質計画の重要性を解説!

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皆さん、こんにちは!
富士通ラーニングメディア ナレッジサービス事業本部の吉田です。
私は現在、プロマネ品質チームに所属し、日々プロジェクトマネジメントの知識習得に励んでおります。そして、機会があれば、少しずつ経験も積んでいます!

これまでに私が執筆したプロジェクトマネジメントのコラムも是非ご覧ください。
第1弾は、業種業務によらないプロジェクトマネジメントについて身近な引っ越しを例に解説しています。
第2弾は、プロジェクトマネジメントを学ぶ上で必須知識であるPMBOKガイド第7版の一部を、こちらも身近な引っ越しを例に解説しています。
第3弾は、変化の激しい時代に大注目のチェンジマネジメントについて解説しています。

■第1弾:プロジェクトマネジメントの知識が必要なのは、システム開発の時だけじゃない!?引越にも役立つプロマネ共通知識を解説

■第2弾:プロジェクトマネジメントを学ぶ人は何故PMBOK(R)を学ぶのか?身近な例でPMBOK(R) 第7版を最短解説!

■第3弾:変化の時代に取り残されないために!変化を成功に導くチェンジマネジメントを解説!

さて、今回は「品質」の話をしていきましょう。

皆さんは、システム開発における「品質」はどうお考えですか?
「システム開発って、結局は機能さえ揃っていれば大丈夫でしょ?」
そう思っていませんか?

それは、家を建てることに例えると、
「家は、間取りさえ合っていれば、どんな家でも住めるんでしょ?」
と言っているのと同じです。

確かに、システムが期待通りの機能を果たすことは、家の間取りが揃っていることと同じくらい重要です。でも、家を建てる時、間取りだけじゃダメですよね?
【冬でも部屋が暖かい家】や【楽しく料理ができるキッチン】など、住む人が快適に過ごせるように、様々な要素を考慮する必要があります。

システム開発でも同じです。
システム開発では機能面だけでなく、性能、使い勝手、セキュリティ、保守性など、様々な側面に対するユーザーの期待が存在します。これらの期待を満たさなければ、せっかく開発したシステムも、ユーザーにとって使い物にならない、あるいは、運用後に大きな問題を抱えることになりかねません。

そこで重要となるのが、開発の初期段階から「品質計画」をしっかりと立てることです。

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システム開発における品質計画のポイントとは?

品質計画とは、開発するシステムがユーザーの期待に応えられるよう、品質目標、品質指標、品質管理活動、品質保証活動などを具体的に定めた計画書のことです。家を建てる前に設計図を描くように、システム開発においても、事前に品質に関する計画を立てておくことが成功への道筋を拓くのです。
では、品質計画のポイントを「家を建てること」で分かりやすく説明します。

  1. ユーザーの期待を明確に把握する
    ユーザーの期待を明確に把握することはとても重要です。ユーザーインタビューやアンケートなどを実施し、ユーザーが本当に求めているものは何かを理解しましょう。例えば、「システムの処理速度が速いこと」、「操作が簡単であること」、「セキュリティ対策が万全であること」など、ユーザーの潜在的なニーズを掘り下げることが重要なのです。
    家を建てることに例えるなら「住む人の希望をしっかり聞くこと」に相当します。「広くて明るいリビングがほしい」「キッチンは使いやすく、収納スペースもたっぷりほしい」「防犯対策もしっかりしてほしい」など、住む人がどんな家に住みたいか、どんな要望があるのかをしっかり聞き取ることが大切ですね。

  2. 品質目標を設定する
    品質目標とは、開発するシステムが達成すべき品質レベルを定めたもので、具体的な目標を設定することで、開発チーム全体で目指すべき方向を共有できます。
    例えば、「システムの稼働率を99.9%にする」、「バグ発生率を10件/Ks以下にする」など、具体的な数値目標を設定することで品質管理の指標となります。
    家を建てることに例えるなら「どんな家にしたいか(品質方針)、具体的に目標(品質目標)を設定すること」に相当します。
    「冬でも暖かい部屋の家」が品質方針だとすると、品質目標は「1月下旬の早朝の室温が15℃以上」というような具体的な目標を決めます。品質目標が曖昧だと、完成した家がイメージと違い、住み心地が悪くなってしまう可能性がありますね。

  3. 品質指標を設定する
    品質目標達成状況を測定するための品質指標を設定します。バグ発生率、テストケース数、レビュー指摘件数など、様々な指標を設定することで、開発プロセスにおける品質の進捗状況を可視化し、問題点を早期に発見することができます。
    例えば、家を建てる過程で「断熱材は計画通りに設置されているか?」「サッシは2重になっているか?」といったように工程ごとの進捗状況をチェックリストでチェックします。チェックすることで、品質目標(1月下旬の早朝の室温が15℃以上)を達成することに対する問題点を早期に発見することができます。

  4. 品質管理活動を実施する
    品質目標達成のために実施する品質管理活動も重要です。設計レビュー、コードレビュー、テストなど、様々な品質管理活動を実施することで、開発プロセスにおける品質を向上させることができます。
    家を建てることに例えるなら「定期的に、点検と修正を行うこと」に相当します。
    「【断熱材をすべての壁に設置する】という設計になっているか」は、「設計図に誤りがないか(きちんとすべての壁に断熱材が取り入れられているか)」さらには、「断熱材の材料に欠陥がないか」と点検をします。
    これらの活動を通して「設計図に誤りがあれば修正する」「材料を交換する」などの修正・改善を行うことで、安全で快適な家を建てることができます。

  5. 品質保証活動を確実に行う
    品質目標達成を保証するための「品質保証活動」も欠かせません。品質管理活動の計画、品質管理体制の構築、品質教育の実施など、様々な品質保証活動を実施することで、開発チーム全体の品質意識を高め、品質目標達成を確実なものにします。
    自分の求める理想の家を建てるときに、品質目標(1月下旬の早朝の室温が15℃以上)を達成するための知識を「モデルルームで断熱材の効果を体感する」「新築の見学会に参加する」などで習得するイメージですね。

システム開発の品質は、機能だけでなく、性能、使い勝手、セキュリティなど多岐に渡ります。ISO25000や非機能要求グレードを活用することで、ユーザーの期待に応える、高品質なシステムを開発できます。
それは、家を建てる際に、間取りだけでなく、耐震性や断熱性も考慮することと同じです。

プロジェクトもいろいろ、品質計画もいろいろ

ここまで説明してきた通り、品質計画はプロジェクト成果物の品質に関するステークホルダーの期待にどのように応えるかを表現したものです。プロジェクトはそれぞれ異なる特性を持っているため、品質計画もそれぞれ異なるものになります。

また、品質管理活動には、コストも時間もかかります。しかし、品質管理を怠ると、後になって大きな問題が発生する可能性があります。そのため、品質管理活動はプロジェクト全体の計画に反映させることが重要なのです。

ユーザーの期待に応えられる高品質なシステムを開発するためには、開発の初期段階から品質計画をしっかりと立て、開発プロセス全体で品質を意識することが重要です。

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執筆者紹介

ナレッジサービス事業本部 プロマネ品質チーム所属
吉田 千鶴(よしだ ちづる)

COBOLや汎用機の研修講師を経て、近年はアジャイル研修の講師やシステム開発のプロマネも経験しています。美味しいコーヒーを飲みながらまったりする時間が好きです。

(2024/10/24)

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