皆さん、こんにちは!
富士通ラーニングメディア デジタル人材育成ソリューション事業本部の吉田です。
このコラムは、プロジェクトマネジメントや品質マネジメント、上流工程について執筆するシリーズの第13弾です。(前回までのコラムはこちら(注1))
いつもコラムを読んで下さる皆さま、日々の業務、お疲れ様です!
掲げた目標に対し、綿密に準備を重ね、いざ実行! しかし、なぜか思うように進まず、壁にぶつかってしまう・・・誰しもが一度はそんな経験をするのではないでしょうか。
業務の中にある様々なプロジェクト(大小関わらず、目標達成のあらゆる業務)は、計画が優れていれば成功が約束されるほど単純なものではありません。目標達成への道のりは、予期せぬ障害がつきものなのです。
では、いかにそれらを乗り越え、確実に目標へとたどり着くのか? その鍵となるのは、「実行」と、それを支える「監視・コントロール」です。これらが密接に連携し、有機的に連動することで、私たちは目標を達成できます。
どんなに完璧な計画をしても、実行力が無ければプロジェクトは成功しません。その逆もあります。計画が完璧でなくとも、優れた実行力と、計画とのズレを迅速に検知し修正する監視・コントロール能力によって目標を達成する優秀なプロジェクトマネージャーが存在します。
今回のコラムでは、プロジェクトを成功に導くために不可欠な「実行力」と「監視・コントロール」の具体的な役割と重要性について解説していきます。
プロジェクトマネジメントにおける「実行」は、目標に向かって具体的な作業を行う「Do(する)」を意味します。一方、「監視・コントロール」とは、現状を正確に把握し、計画との乖離や問題の兆候を早期に発見することです。さらに、それが許容範囲内であるかを継続的に確認(監視)し、目標達成に向けて行動を調整・方向付け、具体的な是正措置を実行(コントロール)する「Check & Adjust(確認し調整する)」を意味します。
では、なぜ「実行」と「監視・コントロール」が一体となって求められるのでしょうか?
まず、プロジェクトを成功に導くためには、計画されたタスクを確実に実行することが極めて重要です。計画段階で定義されたタスクを、期日までに、定められた品質で、予算内で完遂することは、それ自体が非常に価値のある優れた実行と言えます。計画されたタスクを確実に実行できなければ、どんなプロジェクトも成功しません。
しかし、現実には計画通りに進まないことがしばしば発生します。そのような状況において、現場での優れた「実行力」と、計画からのズレを察知し修正する「監視・コントロール」が密接に連携することで、プロジェクトは推進されるのです。
具体的には、発生したズレが計画の許容範囲内であれば、その場で俊敏に対応し、計画の範囲内で現状を監視・コントロールして解決を図ります(実行力で対処)。しかし、計画の範囲内でのコントロールが困難な、より大きなズレが生じた場合には、計画そのものを柔軟に見直し、調整します(計画変更)。そして、その新しい計画を確実に実行し、さらにその実行状況を監視・コントロールするというサイクルを繰り返すことで、目標達成に近づけます。

例えば、友人との旅行を計画する例で考えてみましょう。
「旅行のしおり」を作り、出発時間、集合場所、交通手段、宿泊先、観光ルート、食事の計画まで詳細に記したとします。「旅のしおり」の作成は、すなわち計画です。いよいよ旅行当日、つまり「実行フェーズ」に入った途端に、様々な課題が発生する可能性があります。
1.タスクの確実な実行を阻む壁
計画したタスク自体が思わぬ理由で実行できないケースです。
2.タスクの実行が計画通りにいかない壁
計画された行動はできているものの、予測とは異なる結果になるケースです。
3.計画できない「人」の部分に起因する壁
個人の状態や人間関係によって計画が頓挫するケースです。
このような状況において、優れた「実行力」を持つ旅行の幹事や参加者(プロジェクトマネージャーやチーム)は、計画されたタスクを実行するだけでなく、現状を監視し、必要に応じてコントロールすることで、旅行中の予期せぬ出来事を乗り越え、旅の目的達成に向けて推進します。
「監視」とは、プロジェクトの現状を常に正確に把握し、計画との乖離や問題の兆候を早期に発見すること、そして、その乖離や兆候が許容範囲内であるかを継続的に確認することです。さらに、「コントロール」とは、この監視によって把握した情報に基づき、目標達成に向けて行動を調整・方向付け、具体的な是正措置を実行することです。
引き続き、旅行の例で考えてみましょう。幹事は常に旅の状況を把握しながら(監視)、計画の範囲内での調整を行います。
このように、「優れた実行力」とは、計画したタスクを確実に実行するだけでなく、現場で発生する様々な課題に対し、現状を正確に把握し(監視)、臨機応変な対応力で代替案を検討・実行し、計画の枠内で調整する具体的なアクションを起こすこと(コントロール)を意味します。困難な状況でも目標達成に向けてチームを鼓舞する推進力、そして、自分の役割を超えてプロジェクト全体の成功に貢献しようとする当事者意識も含まれます。

旅行の中で起こる課題において、計画の範囲内で調整できるものは上記のように監視・コントロールします。しかし、計画の範囲内で調整できないものは、計画自体を変更しなければいけない場合もあります。
引き続き、旅行の例で考えてみましょう。
このような計画の範囲内では吸収しきれない問題が監視・コントロールの中から判明したとします。これは、計画そのものが成立しなくなるほどの大きなズレです。
この状況において、幹事は、状況を全員に説明し、新たな選択肢を提示します。
このように、計画を変更し、それを確実に実行し、その実行状況を監視・コントロールするというサイクルを繰り返すことで、当初とは異なる形であっても、旅行という目標達成へと近づいていくのです。
計画の前提が大きく崩れるほどの課題に直面した場合、プロジェクトマネージャーは、状況を冷静に把握し(監視)、関係者との密なコミュニケーションを通じて新たな合意を形成した上で、計画を抜本的に変更します。そして、変更後の計画を速やかに実行に移し、その実行状況も絶えず監視し、必要に応じてコントロールするというサイクルを回すことで、困難な状況を乗り越え、目標達成を目指すのです!
計画変更後に速やかに実行を行うためには、普段から臨機応変に対応できる「実行力」を身につけておくことも、とても大切です。計画を変更しても、変更した計画を実行できる力がなければ、結局絵に描いた餅に終わってしまいます。
すべてのプロジェクトにおいて、皆さん自身が計画の立案から携われるとは限りません。自分よりも経験豊富なリーダーが既に計画を作成し、皆さんは主にその計画に基づいた「実行」を任される場合もあります。そのような状況においても、計画を深く理解し、その上で現場での優れた実行力、そして刻々と変化する状況を正確に把握し、適切に軌道修正を行う監視・コントロールの能力は、目標達成に不可欠であることは言うまでもありません。
優れた実行力と、確実な監視・コントロールを繰り返し行う仕組みは、プロジェクトを成功に導く上で非常に強力なサイクルです。そのサイクルをいかに高速で回し、変化の波に乗り、柔軟に対応できるかが、成功の鍵となります。
さあ、実行と監視・コントロールを極めて、あなたのプロジェクトを次のステージへと導いていきましょう!

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今回ご紹介したプロジェクトにおける「実行」と「監視・コントロール」について深く学べる研修です。3パターンの受講スタイルから、ご自身にあった学習スタイルをお選びいただけます。
(注1)これまで私が執筆したプロジェクトマネジメントや品質マネジメント、上流工程(要件定義)におけるコラムも是非ご覧ください。
これからも皆さんにとって有益な情報をお届けできるよう尽力します。今後のコラムも是非楽しみにしてください。

デジタル人材育成ソリューション事業本部
プロマネ品質上流チーム所属
吉田 千鶴(よしだ ちづる)
COBOLやメインフレームの研修講師を経て、近年はアジャイル研修の講師やシステム開発のプロマネも経験しています。美味しいコーヒーを飲みながらまったりする時間が好きです。
(2025/11/11)