これからのプロジェクトマネジメントとは?(6)「モノづくりの匠」から「経営的な視点」へ

  • ビジネススキル

こんにちは!富士通ラーニングメディアの福山です。

「これからのプロジェクトマネジメントとは?」というテーマでお話ししています。

6回目は、「これからのプロジェクトマネージャに必要なこと」がテーマです。

20年以上にわたって、富士通でプロジェクトマネジメントを担当してきた私から、特に、プロジェクトマネージャとして活躍している方や、これからプロジェクトマネージャになろうとしている方へのメッセージをお届けします。

もちろん、異なる立場の方にも、お読みいただきたいことです。

経営の一翼を担える人物になろう

ITが社会に浸透するにつれて、IT技術に詳しい人物が経営の一翼を担う時代がやってきています。

私は、プロジェクトマネージャこそが、「IT技術に詳しく、経営の一翼を担う人物」になるべきと考えています。

そして、多くの経営者がそれを望んでいることを知っています。

では、そのようなプロジェクトマネージャになるにはどうしたらよいのでしょうか。

答えの1つとして、「モノづくりの匠」、すなわち、技術者として技術を極めるだけでなく、「経営的な視点」を持つことを挙げます。

なぜなら、プロジェクトの決裁権を持つ、お客様の「プロジェクトオーナー」は、経営的な視点でシステムを導入するか、否かを決めているからです。

ベンダー企業が、お客様に最適なITベンダーとして採用していただくには、プロジェクトオーナーと対等に話ができる必要があるのです。

経営的な視点での会話ができてこそ

たとえば、プロジェクトオーナーから、「半年以内に、ROI(※)をなんとかしないといけないのだけど」と言われた時に、「ROIって何ですか?」と尋ねてしまったら、プロジェクトマネージャとして、プロジェクトオーナーと対等に話ができるには「まだ遠い」、と私は思います。

プロジェクトマネージャが、ROIを理解しているのは当然のこと。

さらに「ROIを半年以内に高めるために、どのような技術やシステムを提供できるか」、という提案ができることが求められるのです。

また、プロジェクトマネージャは、お客様の業界によって、金銭感覚が異なることを知っておくことも大切です。

たとえば、「プロジェクト費用の中で、10万円をお客様に負担いただきたい」とプロジェクトオーナーに伝えたいとしましょう。

同じ10万円でも、主力商品の単価が数百円のお客様と、数百万円のお客様では、金額のとらえ方が異なります。

プロジェクトマネージャはその点に配慮した会話をする必要があるのです。

経営的な視点とは上記のようなコスト面での知識や配慮だけではありません。

プロジェクトオーナーが望む「価値」を見極める視点を持つこと、つまり「企業価値」をしっかりと把握する姿勢を身に付けることが重要なのです。

企業は経営目標を達成し、企業価値を確保するために、顧客満足度や売り上げの向上、原価や棚卸資産の低減などの活動を行っており、その成果はEVAやFCFに集約されます。

EVAは「その企業が生み出した付加価値」、FCFは「企業の現時点での資金獲得能力や債務返済能力」。

どちらも投資家から見た企業価値の判断材料です。

つまり、プロジェクトマネージャは常にプロジェクトオーナーと同じ視点(=企業価値)を持って行動することが求められています。

このような、経営的な視点を持ち、プロジェクトオーナーと会話ができてこそ、「IT技術に詳しく、経営の一翼を担えるプロジェクトマネージャ」と言えるでしょう。

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※ROI(return on investment):
投資回収率。投下した資本がどれだけの利益を生んでいるのかを測る際に使われる指標。
利益/投資額(%)で算出する。
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■福山によると、プロジェクトマネージャに必要なのは、「経営的な視点を持つこと」だけではないそうです。
それは一体何でしょうか。次回をお楽しみに。

■第1回「これからのプロジェクトマネジメントとは?(1)マネジメントを、経験知から形式知へ ~PMBOK® Guideについて考える~

■第2回「これからのプロジェクトマネジメントとは?(2)プロジェクトを成功に導くために ~PMBOK® Guideについて考える~

■第3回「これからのプロジェクトマネジメントとは?(3) PMBOK® GuideとKKDの融合が成功のコツ

■第4回「これからのプロジェクトマネジメントとは?(4)KKDを短期間で身に付けるために

■第5回「これからのプロジェクトマネジメントとは?(5)ビジネス環境の変化に対応するために

■第7回「これからのプロジェクトマネジメントとは?(7) 後進を育てるコーチングのすすめ

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(更新日 2019/03/28)