Microsoft MVP受賞者座談会を開催しました その5

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みなさん、こんにちは。
富士通ラーニングメディアの広報を担当している東&伊藤です。

今回のブログでは、長年にわたりコミュニティ活動や講演等を通じてMicrosoft製品サービスに関わる技術スキルの普及啓蒙を行っている富士通グループのMicrosoft MVP受賞者たちで、最新技術動向との向き合い方やこれからの学びについて語り合いました。その模様をお届けします。(その5)

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アジェンダ

<子ども向けの学び事情>

柏木:
若手には子どももいますよね。福岡さんは子ども向けにも色々活動されていますが、子どもはいきなりコードを書けないですよね。

福岡:
いくつかの年齢層があります。小学校1、2年生向けに教えると、目の前の技術を人が作ったものだと知らないことも多いです。例えばゲーム機。あれは人が作ったと想像していないです。

伊藤:
新しい発見ですね。

福岡:
ここにいるお兄さんお姉さんが作ったんだよと言うと一番驚きます。そうなのって。でもみんなも作れるようになるよと言うと、えーっと驚きます。学校でもなぜ勉強をするのかということを思う日がやってくるけれど、学校で学んだことがこういうプログラムやゲーム機を作ることに役立つ。これを作るためにやっているんです、という話にもなってくる。

冨田:
ずいぶんいい話をされていますね。何か良い部分全部持っていかれた感があります(笑)

柏木:
モチベーションはゲームがきっかけでしょうか。

福岡:
子どもたちにとっては、ゲームというよりは、身近なものを人が作っているということです。それが自分たちでも作れるというようにという視点に変わっていくのがすごく衝撃的みたいですね。小学校1、2年生の子どもたちって、自分たちで絵を描いたり工作したりしていたことの延長のような感じで学校が始まります。ゲーム機を作るということと全然結びつかない状態です。そこに気づきを与えます。
ある学校では、iPadやWindowsタブレットを導入していますが、道具でしかなかったものが、ある日突然モノ作りに変わります。中身はどうなっているのか、何でこうなるのかといった疑問が次々に出てくる。モノづくりの技術を覚える、わかるきっかけって、これってどうやって出来ているのだろうというところからだと思います。自分たちが作ったもの以外に眼を向けるようになります。
米国ではSTEM教育が導入され、科学、技術、工学、数学の分野に力を入れようとしています。そっちにいかないと将来的に職がなくなるのではないかとも言われています。給与面でもそうです。
私個人としてはもう少し軽い気持ちでブレークダウンし、この仕組みを知っていた方が、生活が楽しくなるじゃないのかと。技術者云々抜きにして。もっと使えるようになるじゃないのと。その方が仕組みを知るために理科の勉強をする、国語の勉強をするといったことにもつながると思います。勉強のモチベーションとしては、何かを知るため、にした方が良いと思います。

伊藤:
良いところを持っていかれた感がありますね。ピコハン触っていますし(笑)

東:
子ども向けの活動というのは、会社として行っているのでしょうか。

福岡:
私の場合はコミュニティ活動の一環として行っています。センサー等が好きなコミュニティつながりで、教育することになりました。出会いはMS社のビルでした。

<余談:ゲームとプログラマー>

冨田:
ゲームが作りたくてプログラマー目指した人は相当数いると思います。

伊藤:
私もそうです。学生の頃Basic言語で作っていました。昔I/Oという雑誌を買って読んでいました。

冨田:
ありますね。というか、ありましたね(笑)

伊藤:
確か1,000円くらいの分厚い雑誌でした。1,000円札握り締めて買いに行っていました。コードを書いて実行すると必ずエラーが何十行も出ました。

冨田:
カセットテープに憧れていたあの頃ですね(笑)

伊藤:
何でここエラーが出るのか。英語も覚えなきゃ、となっていたと思います。

<余談:危機感>

冨田:
個人的な危機感として、今の小学生はそうなるのかなと思います。もっと言うと、5年もするとキーボードを触ったことがない新入社員がたくさん入社してくると思います。今でもスマホで本の原稿をずっと書いている人もいたりします。
IT系の企業に優秀な人材は入社しないんじゃないかなと思います。

伊藤:
今では景気も良くなってきていて、商社や金融系に人材がたくさん流れていますね。

冨田:
金融の正体もITじゃないですか。今やITの世界は広がり、SIがITそのものの時代は終わっています。金融も一皮向くと9割がITとも言えます。他もそうです。若い人は、特にITという世界、富士通が、富士通だけがITとは思ってはいないかもしれないです。そういう世界感でどうしようかなと。

柏木:
でもそれってバブルの頃も、マニアな人しかパソコンを触っていなかった時代があったのと似ています。全くパソコン触ったことのない人もSEになっていきました。そこに戻るだけの気もします。触ったことはないけれど、IT機器が周囲にあふれているような環境。

冨田:
それが今では、デバイスを作るという発想にはならないと思います。

伊藤:
そこにある、というイメージでしょうか。

冨田:
触っていて気になるところはあるにせよ、じゃあ作ろうという気にはならないかもしれません。他にもさまざまなデバイスがあふれています。自分でアプリを作れるとも思っていないんじゃないだろうか。

柏木:
そうは言ってもこうあるべきだ、みたいな想いはあると思う。作れる人に話して作ってもらうという立場になってもらう。上流SEのようなイメージ。

冨田:
アイデアソンのイメージですね。

福岡:
もっと言うと高校生や大学生。コピペは好きだけど模倣はすきじゃないというのもあるかもしれません。プログラムって最初は模倣から学ぶはずです。まずはそのままやってみて理解していくという流れです。それが高校生ともなると、模倣はしない。コピペしたら動いたという考えになるかもしれません。
最近実感するのは、もっと最初の段階。模倣することで覚えていくことがシームレスな年代に教えてあげないといけないんじゃないかなということです。昔はやっていたと思う。鉛筆で数字書いたりしていました。世の中の活字を自分たちでも作れるという模倣から入っています。ペンすら使わなくなった今の世界でも、自分で作れるんだよと教えてあげる。それを知らずに使っているのとでは違います。作れることを知っていて、でも作るのは大変だし時間がないという状態にいる人たちは、作るチャンスがあれば行くんじゃないかと思います。
そういう意味では、高校生、大学生は、ITは使うものであって作るものではない、作るという発想すらないかもしれません。作ろうと思って入ってくる学生は少ないかもしれない。入れば作るんでしょうけど。そこで初めてカルチャーショックが起こると思います。実は作る側だったと。そこで感動を覚える人もいるかもしれないですね。

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(2015/09/10)