こんにちは!富士通ラーニングメディアの向井です。
「会話でつながるコミュニケーション」をテーマに4回連載でお届けしています。
前回は、会話とコミュニケーションの関係についてお話しし、会話における大事なスキルの1つである「傾聴(けいちょう)」を取り上げました。
2回目となる今回は、より建設的な会話につながる「アサーティブ・コミュニケーション」についてご紹介します。
みなさんの中にも、「仕事を急に依頼され、断れなかった」という経験を持つ人も多いでしょう。
たとえば、「上司から帰る間際に急な残業を依頼された」と想定しましょう。あなたなら、どのように対応しますか?
Aは、一方的に自己主張をしているため、相手にストレスを与え、関係が悪化します。
Bは、自分の主張や感情を押し殺して我慢するため、自分の中に欲求不満や怒りが溜まりがちです。
一見問題がないように見えますが、長期的には相手とのコミュニケーションに支障をきたします。
上記のような「攻撃的な自己主張」や「無理な我慢を伴う受け入れ」を回避する方法の1つが、アサーティブ・コミュニケーションです。
アサーティブとは、相手の主張を尊重しつつ、自分の主張も伝えるコミュニケーションのあり方です。
『I'm OK.』『You are OK.』という相互尊重の概念をベースにしており、相手に配慮した上で、主張を行います。
アサーティブ・コミュニケーションでは、どのように会話を進めていくのでしょうか。
今回は、1つの手法として、「DESC法」をご紹介しましょう。
「DESC法」とは、アサーティブに意思を伝え、交渉するための話法で、以下の4つの言葉に由来します。
D:Describe(状況の客観的描写)
E:Explain(主観的にDに対する自分の気持ちを表現、影響を説明)
S:Specify(解決案や妥協案の提案)
C:Choose(提案に対する肯定や否定、それぞれの結果に対する行動の選択肢を提示)
たとえば、「特定の人が延々と話し続けているために、会議の進行が遅れている。
誰も『話が長すぎて、時間が足りません』とストレートに言えない」。このような状況を想定してみましょう。
例)
D『●●さん、会議が始まってから15分間話し続けておられますね』
E『このままだと、あとの発表者の時間が足りなくなってしまいそうです』
S『来週、改めて会議の場を設けます。続きはその時にお伺いできませんか?』
C『そうすれば、会議を予定どおり進めることができます。もし来週が無理な場合、今日は要点だけにして、残りは個別にご説明いただけませんか?』
このように話すと、相手の立場を尊重しつつ、主張すべきことを相手に伝えることができます。
相手が目上の人であっても、相手の感情や勢いにのまれてしまうことなく、自信を持って発言できるのです。
組織において、相手とできるだけ良好な関係を保ち、より良い成果につなげるために、「相手のことを考え、尊重しながら主張する」という歩み寄る心と努力が大切なのではないでしょうか。
以前は、新人は、先輩や上司と一緒に商談に行く機会が豊富にあり、先輩の背中を見ながら実践を通してお客様とのコミュニケーションを学んでいきました。
最近は、先輩と一緒にお客様を訪問する機会が減り、実践で体得する余裕がなくなってきたため、新入社員であっても学べる場が少なくなりました。
短期間の研修のあとすぐに、実践の場に出されることもあり、コミュニケーションがうまくいかず、早々に自信を失ってしまうケースも少なくありません。
また、中堅やベテラン社員でも、異動などで未経験分野の担当になることがあります。
初めての仕事や新しい環境になじめなかったり、わからないことがあっても今さら聞けなかったりするため、ベテランでも自分のふるまいに自信を持てなくなることがあります。
あらゆる場面でコミュニケーションの難しさを実感している人が意外に多いと感じています。
アサーティブ・コミュニケーションは、職種や立場に関係なく、たとえば以下のような場面で活用できます。
人材育成において、アサーティブ・コミュニケーションが今注目されている理由は、「さまざまな立場の人に有効であること、また、世代や役職などの階層を越えてコミュニケーションを強化できること」にあると、私は思います。
■次回は、コミュニケーションとかかわりの深い「モチベーション」を取り上げます。バックナンバーもあわせてお読みください。
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富士通ラーニングメディアでは、アサーティブ・コミュニケーションの基礎や実践的なスキルを学べます。
ご自身のスキルアップに、スタッフのスキルアップに、ぜひ、ご活用ください。
(更新日 2019/05/23)