みなさん、こんにちは。
富士通ラーニングメディアの宮川です。 ITサービスマネジメント関連の教材開発や講師を担当しています。
システム運用の現場では、「品質」「改善」「稼働削減」というキーワードが絶えず飛び交っています。
提供しているサービスに不具合が発生すると、品質保証部署が品質向上を要求してきますし、作業内容が変わらないのに運用費用の削減を求められたりしますよね。
このような現場で作業を行う場合、いかに効果的かつ効率的に活動するかが重要となります。
今回のブログでは、システム運用現場における改善活動にスポットを当てて、あるべき姿(目標)に向けて効果的に作業遂行するためのポイントをご紹介したいと思います。
「先ず隗(かい)より始めよ」とは、大事を始めるときには、まずは手近なところ(小事)から着手するのが良いというたとえです。
※「まず、率先してあなたがやりなさい」という意味に使うこともあります。
システム運用現場において改善を行う場合、どこから着手するか途方に暮れることがあります。
運用現場では、組織上層から改善要求を受けることがありますが、その指示内容は、「品質向上」や「費用削減」など作業結果だけを求めており、どうやって実現するかの過程は現場任せとなることが多いこと、改善作業は通常の運用作業遂行と並行して行う前提であることなど、悩ましい問題があるためです。
一般的に、組織をあげて改善活動を行う場合は、まず現状を評価し問題点を抽出した後に、改善策を立案、実施し、その後効果を判断するという流れとなります。
ただし、実際は、費用や要員稼働に制約があるため、大々的に改善活動を展開できないことが多く、結果として「目の前にある問題事象」に対する必要最低限の処置にてその場をしのぐことが多くなります。
これは、運用トラブル対応においても同じで、問題の原因追求など状況把握が不足し、結果として 再発や別トラブルを発生させる負のスパイラルを引き起こします。
皆さんは、ITサービスマネジメントのデファクトスタンダードとされるITIL®を勉強したことがありますか?
ITIL®の基礎レベルの認定であるfoundationの資格保有者は、国内累計で15万人規模となっており、近年着実に浸透しています。
ITIL®では、発生したインシデント(運用トラブル)は、主としてインシデント管理プロセスと問題管理プロセスが連携して対応します。
この運用トラブル対応の際にITIL®が求めることは、迅速にサービス提供状態を通常時に戻すことです。これは、復旧に時間がかかればかかるほど、お客様や事業にマイナスの影響を与えるためです。お客様への影響はサービス満足度低下に直結するから、注意が必要ですよね。
また、ITIL®の考え方の特徴に、作業実施優先度の考慮があります。
ITIL®は、時系列によるFIFO(ファーストイン・ファーストアウト)対応ではなく、事前に個々の案件ごとの優先度を評価して、効果的かつ効率的な順番で対応することを徹底しています。
トラブル対応は、サービス満足度を左右する最優先事項となります。
ITサービスマネジメントの考え方に基づきITIL®が求めているように、ITサービスを提供しているシステム運用現場としては、運用トラブルへ備えておくことが重要となります。
当然、運用トラブルが発生する前に予防するプロアクティブ対応を行うことが望ましいわけですが、事前にリスクなどを想定して対応策を展開し、運用トラブルが発生しないように備えるのには限界があります。
※この場合の限界とは、想定リスクへの対応にかかる費用問題などです。
そのため、運用トラブル発生から復旧までの一連の対応活動が、円滑かつ効率的に実施できる状況を本来の「あるべき姿(目標)」として、実際に行ったトラブル対応はどのようであったかの実績を判断し、ギャップに対する現場の改善整備を推進していくことが重要です。
システム運用現場には、様々な改善の余地があります。
たとえば、以下の事例をご覧ください。
この事例でも、以下のような課題群が読み取れますが、 皆さんのシステム運用現場でも、
このような状況になってはいませんか?
Aさんは、「現場では少ない人数で一生懸命頑張っているのに」と納得できないようですが、皆さんの現場でもこのような感じになっていませんか?
私の現場経験においても、このように考えている運用担当者が結構多かったように思います。
「自分はちゃんとやることをやっている」という認識が根底にあるのだと思いますが、この考え方はお客様には全く通用しません。
サービスを利用するお客様の立場では、サービスを提供する側がどのように作業しているか、ましてや苦労していようがいまいが、関係ありません。
ちゃんとサービスを利用できるか否かが全てであり、そこでサービスの満足度を評価します。
「ちゃんと」の判断は、お客様がするべきであり、この事例ではむしろサービス提供側がちゃんとできていないためにトラブルが発生していると捉えてください。
これは、サービス提供者の基本姿勢とされるものであり、判断基準をお客様に置き換えて発想することが肝要なのです。
以上のように、システム運用現場の改善を考える際に、運用トラブル対応をきっかけにすると、即効的な改善効果が期待できます。
運用トラブルに適切に対応できるように現場主導で改善する活動、すなわち「ボトムアップアプローチ」を展開することは、お客様中心のITIL®の考え方にも沿っています。
インシデント管理や問題管理の仕組みを現場に展開/実装する場合、運用トラブル対応の流れは、まず整備すべき重要なポイントとなります。
作業精査・改善により、システム運用現場においては、「効率化」「作業軽減」という効果がありますし、事業や組織においては、提供サービスの「サービスレベル(品質)向上」による顧客満足度アップが期待できるため、それぞれの立場でWin-Winの関係につながります。
本コースでは、システム運用現場を改善する際の流れとして、運用トラブル対応を適切に行えるようにすることから着手する現場主導の改善アプローチをご紹介しています。
運用トラブル対応を重要視する考え方の根底には、ITサービスマネジメントやITIL®のポリシーや捉え方が関わっています。
ITIL®の考え方を現場に展開する際の具体的な流れとして、本コースをご活用ください。
富士通グループの関係会社に入社し、以降、業務開発/運用保守に始まり、インフラ設計/構築、構成管理などの様々なシステム開発/運用現場を20数年ほど経験しました。その後、講師に転身し、現在はITサービスマネジメント関連のコースに登壇しています。
見た目はどこぞのお寺の住職ですが、美味しいものやお酒が大好きなど、まだまだ俗念を振り払うことができず修行の毎日です・・・。
(2016/02/25)