プロジェクト現場の悩ましい問題にどう対応する?!~熟練プロマネに聞く"PMにとっての次の一手"とは~

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みなさん、こんにちは。
富士通ラーニングメディアで、プロジェクトマネジメントなどのコースを担当している海老原です。

今回のブログでは、富士通グループの約4500名のプロジェクトマネージャー(以下「PM」)にメルマガ「PM次の一手」を発行する島田さんと、当社ヒューマン・ビジネス分野の講師部門マネージャー平井と、プロジェクトの現場で日々発生している悩ましい問題にどう対応していくか、また、PMの人材育成などを語り合いました。その際の模様をお届けします。

まず、メルマガ「PM次の一手」とはどういうもの?

海老原:
今回、新しく提供するプロジェクトマネジメントのコース「PM次の一手」(UAR24L)は、グループディスカッションを主体としたコースです。(コース概要はこちら)
そのコースのディスカッションの題材に、富士通グループ内のプロジェクトマネージャーを対象に毎月発行されている同名のメルマガ「PM次の一手」で出題している問題を使用しています。
サンプルがこちら。

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問題サンプル

海老原:
このメルマガ「PM次の一手」は、富士通のPMコミュニティの「実践的PM力向上のための問題集検討WG」の皆さんが発行しています。本日は、このWGの副主査を務めていらっしゃる島田さんにお越しいただきました。当社の平井とともに対談いたします。島田さん、平井さん、よろしくお願いします。

一同:
よろしくお願いします。

海老原:
さっそく島田さんにお尋ねします。富士通のPMの皆さんにメルマガ「PM次の一手」はたいへん好評だと伺っています。プロジェクトの現場で日々発生している悩ましい問題に直面しているPMやPMを目指す人に、現実の題材に基づいた4択問題を提供しているそうですが、このメルマガ、そもそもどのような経緯で発行に至ったのですか?

島田:
元々は別の方がPMの4択問題を作りだしました。私はそれを面白いと感じてWGに参加し、メルマガに育てました。当初、PMの意思決定は4択問題として成立しないのではという意見もありましたが、読者の反応はとても良好でした。

海老原:
継続して毎月問題を作成する作業は、人材育成に対する熱い思いがなければできないんでしょうね。

島田:
いや、実は思いとか全くありません。自分が面白いと思うので続けています。

平井&海老原:
ええっ??(汗)

島田:
メルマガは毎月、約4500名宛てに発信し、毎回200名前後から答案や感想が寄せられます。非常に熱い思いをメールに綴って返信される方も少なくありません。PMとして色々な思いを抱きつつもそれをぶつける場所はなかなかありませんからね。
掲載した問題の解答はその翌月のメルマガに掲載します。解答比率や解説を披露すると反論もウワーっとやってきます。そういう意見はさらに翌月のメルマガに掲載し、意見に対するWGからのコメントも掲載します。このようにメルマガを通してコミュニケーションしているのがヒットしている理由じゃないかなぁ。 読み手からの反応があるから私も面白い。だから私も続けられるんです。

平井:
いま、読者から寄せられた反応を拝見していますが、ピュアで真剣な人が多いと感じますね。
読者の意見がメルマガに掲載されるから、また投稿しようと思うのかもしれませんね。これはラジオ番組に投稿する感覚に近いのかも。

島田:
そういう世界かもしれない。だから面白がって読んでくれているのかも。
それと、寄せられた回答を分類すると面白いですよ。なかには常連さんもいるのですが、回答パターンから思考の癖が感じ取れますね。ときには自分の意見を曲げない人もいますが、私は、ある程度芯を持ちながら人の意見を柔軟に採りいれて、その芯をうまく修正していける人がPMに向いていると感じます。ここがゴールと思っていたけど、こっちがゴールでいいやと修正し、そのことを周囲に理解させる力が大事です。

海老原:
なるほど。ほかにはどのような方がいらっしゃいますか。

島田:
回答者には、消去法で回答を導き出す人、論理的な判断を優先しすぎる人、問題のアラを探して突っ込んでくる人なんかがいます。
思考のクセって案外人によって偏っていますね。

海老原:
どのように回答を導き出すべきだとお考えですか。

島田:
直感でまず考え、選択後の状態を頭の中でシミュレーションすることですね。あと、私の場合は過去の経験をうまく活用しています。新しい種類の問題やトラブルはさほど多くないと考えます。ただ、難しい決断をする場合は周囲に遺恨を残さないようにコミュニケーションしながら進める必要がありますよね。

海老原:
ちなみにWGでは、どのような手順で問題を作成されているのですか。

島田:
問題はまずノウハウから検討します。この問題を通じて何を伝えたいか。それから問題を作り選択肢を作ります。選択肢の作成は非常に難しいんですよ。それを毎月締め切りに追われながらやってます。(苦笑)
誤答を含む選択肢を作ったあとWG内で議論します。どれを正解にすべきか、結構意見が割れます。議論が収束したらシニアスタッフなどの超ベテランに第三者レビューをお願いします。すると全く違う意見が出てきたりするからもう大変。(苦笑)
まぁ最終的にはWGの意見を通しますが。(笑)
これだけ議論を尽くしているので質的には担保されていると思っています。

でも、問題作成も結構キツいんだよなぁ、ネタ切れで。メルマガそろそろやめようかと・・・。

平井&海老原:
いやいや、ぜひ続けてください。

海老原:
話を元に戻しましょう(汗)。このブログにサンプルとして使わせていただいた問題は、どのように作成されましたか。

島田:
これは、読者からの提案がきっかけで、小惑星探査機「はやぶさ」をお題にした問題です。「はやぶさ」にはPMの知らない隠し回路があり、それが奏功して無事帰還したことが美談として報道されていたことをヒントにしています。

平井:
ところで正解は・・・・。

海老原:
それは、本コースで紹介しますので、関心のある方はぜひご受講して確認してください。ということで、ここでは勘弁してください。(汗)

平井:
メルマガ「PM次の一手」は、回答者の意見が割れるところに価値があると感じますね。違う意見に耳を傾けないと成長できないし、脳も活性化しませんよね。

島田:
私も読者に、正解を導き出すことが目的ではないと伝えているのですが、それでもなかにはご自分の回答が不正解であることに納得できないと噛み付く人がいますね。(苦笑)

PM人材を育成するには・・・

海老原:
少し話題を変えて。今度はPM人材育成について平井さんのご意見をお聞かせください。

平井:
当社は受講者の皆様にお越しいただいている「場」の価値を向上させたいと考えています。例えば「あえて教えない」「プロジェクトの課題を受講者に持ち込んでいただく」「知識の部分はeラーニングで事前学習いただき、水準を合わせていただたうえで意見交換に臨んでいただく」など、様々な形態の人材育成に取り組んでいます。他流試合という、同業だけど色々な背景を持った他社の方同士でのディスカッションなども開催しています。 今回の「PM次の一手」は、このような場の価値を高められる素材として本当に良いものを提供していただけたと感謝しています。

島田:
実は「PM次の一手」は、PMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)でもPM育成を意図したディスカッションの素材として活用したことがあります。そのときは2時間で、採り上げたケースも3つほどでした。参加者は色々な業界から集まるため考え方が全然違う。同じPMでも私たちのようにプログラムを書くようなプロジェクトばかりではありません。例えば機械を作るようなプロジェクトを担当している人たちだと意見が全然違うんです。そういう人たちを集めて議論されるととても面白いんですよね。で、議論していくとだんだん意見が集約され正解に近くなっていきます。

平井:
PMBOKのような整理された知識を獲得しているが故に意見が集約されていくのでしょうね。経験との両面が必要なのだろうと思います。

島田:
ディスカッションの場面では、何人かで話し合って正解に近づくというミッションと、多様な意見を抽出するというバランスが難しいと感じました。個人単位で検討するほうがより多様な意見が出てきますから。そこがちょっと難しい。
若手や新入社員に解かせても面白いかもしれませんね。ほかにもグループごとに問題を作らせるのも面白いかも。アイスブレークとして採りいれたり。

海老原:
講師としては、参加者のレベル把握にもなりますしね。参考になります。

平井:
このコースは、PMの悲喜交々(ひきこもごも)、触れたくても触れられない嫌なことも話しあえるというのがひとつの価値だと感じています。
「PM次の一手」は、PMのプロである皆さんの経験に基づく素材であり、それをオープンにしていただけたことを嬉しく思います。

平井:
島田さん、ひとつ質問していいですか。PMの皆さんはどういう時に「ああ、プロマネになれたな」と実感されますか。修羅場を乗り越えたときですか。

島田:
人によって違うと思います。私は入社後ほどなくしてサブリーダ的な役割を任されました。プロジェクトは生ものでありメンバも関係者も毎回変わります。同じことも発生しない。なので常に悩んでいるし私はPMとして一人前だとは思っていません。例えば1000人のメンバをマネジメントしなければならないような案件は経験したことがないし私には想像もつかないです。

海老原:
ところで日焼けして健康そうですね。お休みの日は何をされていますか。

島田:
ゴルフが趣味。あとランニング。方向だけ決めて20kmほど走り、そこで飲み食いして電車で帰ってくるとか(笑)
楽しいよ。時速8~9kmのゆっくりした速さなら苦になりませんよ。

平井:
その経験はPMとして役立っていますか。

島田:
役立たないよ(笑)

平井&海老原:
(笑)

海老原:
ところで、今の職場に外国人はいますか。

島田:
中国人が大勢いますよ。

海老原:
実は次のステップとしてこのコース「PM次の一手」を英語化して外国人にも展開できないかと画策しています。国別の回答傾向の違いなどが出ると思うので、それが多様性を学ぶ素材になるのではないかと思いまして。

海老原:
それでは最後に、島田さん、平井さんから若いPMに熱いメッセージをお願いします。

島田:
う~ん、あまりないんだけどなぁ・・・。
「やりたいことがあればやらなきゃ損だよ」ってことかな。WGのような活動も自分でやるべきだと思わなければ降ってこないよと。
色んなところに首を突っ込んでほしいなぁ。そうやって経験を積むことで厚みができていくんですよね。厚みがないとつまらないし、面白くないんじゃないの。

平井:
一回しかない人生、自分で色々なことにトライできるようになるには主体性が必要です。皆様が主体的なPMとして成長される場が当社にはありますので、ぜひご利用ください。

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コース紹介

☆コラムでご紹介した富士通PMコミュニティの経験と実績がつまったメルマガ「PM次の一手」の問題をディスカッションの題材にする、グループディスカッション主体のコースです。

2015年8月26日からご受講いただけます。ご興味のある方は、ぜひコース概要をご覧ください。

PM次の一手 ~富士通SEの『定跡』に学ぶ~ (UAR24L)

☆そのほかのプロジェクトマネジメント関連コースもご参考にしてください。

プロジェクトマネジメント関連コースマップ

みなさまと講習会でお会いできるのを楽しみにしています!!

対談者紹介

島田 明門(しまだ あきと)

(株)富士通ミッションクリティカルシステムズ 基盤ビジネス本部 SI事業部
PMコミュニティ 実践的PM力向上のための問題集検討WG 副主査

ゴルフとランニングが趣味。

平井 亜紀(ひらい あき)

富士通ラーニングメディア ナレッジサービス事業本部 第一ラーニングサービス部長

PM系やヒューマン系などの研修サービスや新しい形態の人材育成サービス開発を担当。

海老原 孝徳(えびはら たかのり)

富士通ラーニングメディア ナレッジサービス事業本部 第一ラーニングサービス部

PM系や上流(要件定義)系の講師を担当、「PM次の一手」の講師も担当する。

(2015/07/30)