階層別研修のあり方・考え方★企画側と現場の意識のギャップは、どう埋める?

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みなさん、こんにちは!富士通ラーニングメディアの佐藤です。主にビジネス・ヒューマンスキル分野の講師を担当しています。

今月は、当社が考える「階層別研修のあり方・考え方」について、私がこれまで携わった階層別研修の事例なども踏まえながら、4回にわたりお届けしています(毎週木曜日掲載)。

2回目となる今回は「階層別研修に対する人材育成部門のかかわり方」についてお伝えします。

さて前回は「階層別研修に対する上司のかかわり方」について、部下に期待や役割を認識させること、また上司自身が研修内容を熟知したうえで、研修後の育成方針を踏まえて送り出すことの必要性をお伝えしました。
ただしこれらは、階層別研修(または関連施策)の内容や仕組みを、現場が納得できる形で確立され、また伝わっていることが前提となっています。

ところが実際は、階層別研修を企画・運営する人材育成部門においては、以下のような課題を抱えており、現場とのギャップが生じているケースもあるようです。

  • 各階層にふさわしい人材像が定義されているものの、現場に浸透していない
  • ここ数年、階層別研修の内容が変わっておらず、陳腐化しているとの認識はあるが、どこからリニューアルをしたらよいのか分からない
  • 研修実施時に受講者のモチベーションが上がらず、受講者が研修内容を本当に理解できているのかよく分からない

<階層別研修の目的は、スキル修得ではない?>

B社の山田部長と小林課長は来年度の階層別研修について話し合っています。
次の会話を読んで、みなさんはどのように思いますか?
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~階層別研修を企画・運営している人事部の、山田部長と小林課長との会話 その1 ~

山田部長:
先日の部長会で、来年度の階層別研修を、今年の内容を踏襲する方向で実施するという説明をしたのだが、現場の部長から若年層の研修に対して批判や要望が相次いでね。
「この忙しい最中、3日間も研修には割けない」「どうせやるなら、論理思考を強化してほしい。最近の若手はロジカルに考えられない」「受け身の体質が蔓延しているので、払拭したほうがよい」といった具合なんだ。そこで、研修内容を見直すことになったのだよ。
小林課長:
これまでの研修が、現場の実態に合っていないということでしょうか。確かに3日間は長いですね。
これは運営で何とかカバーすれば2日間に短縮することができそうです。論理思考は新たな研修のテーマにするとしても、受け身の体質を払拭する、というのは、なかなか難しい課題ですね。
山田部長:
そうなんだよ。受け身の体質は研修というより、OJTを通して現場で徐々に改善させていく話だからね。
小林課長:
そういえば先日、研修会社のロジカルシンキングセミナーに行ったときに、よい研修だと思いました。
期間も2日間ですし、演習が中心なので、受講者は主体的に取り組めます。研修の冒頭で、部長から若年層の役割を伝える時間を確保できれば、Win-Winになるのではないでしょうか。
山田部長:
内容はともかく、一度、話を聞いてみるか。

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能力とは一般的に「スキル」「行動特性/思考特性」「動機」の総体です。
組織においては、各々の特徴を効果的にうながしていくことを狙いとした施策を立て、人材育成を行っていく必要があります(下図参照)。

【能力と育成方針の関係】
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育成対象者は、期待や役割が変わる節目において、まず自分の行動の源泉となる「動機」や「行動特性/思考特性」にフォーカスします。

そして、どのようにすれば新たな期待に応えられ、役割を果たせるかを考え、自分なりの解を見出していくことが必要です。
その中で、「自分自身に不足している知識やスキルを把握し、どのように能力開発をしていくのか」を認識させるところまでを階層別研修で実施します。

論理思考などの固有のスキルは各自の判断で必要に応じて身に付けていけばよいのです。
したがって、階層別研修において、ある固有のスキルをテーマとするのは得策ではありません

少し大げさかもしれませんが、「みなさんにはこのスキルが必要だから学習しなさい」という与えられた研修では、受講者のモチベーションは上がりません。
また、既にそのスキルを修得している受講者にとっては、残念ながらあまり意味のない研修になりかねません。

<階層別研修、成功のカギは?>

研修会社のロジカルシンキングセミナーについての話を聞いた山田部長。来年の階層別研修に取り入れるべきではないと判断したようです。
いったい、なぜでしょうか?
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~階層別研修を企画・運営している人事部の、山田部長と小林課長との会話 その2 ~

山田部長:
確かに研修の内容はよさそうだが、これではロジカルシンキング研修そのものになってしまうね。
若年層研修では、やはり彼らに求められる役割をしっかり認識してもらったうえで、当社の若手としてどう振る舞うかを学んでほしいよね。
小林課長:
そうですね。カリキュラムについては、もう一度、若年層の人材像定義書に立ち返って検討しましょう。
それはそうと、研修の運営についても考えなければなりませんね。前回の研修では、アンケートに「上司からとりあえず行けと言われたから来た」「人材像定義書の内容について上司と会話していない」「研修内容を業務でどう活かせばよいか分からない」という意見が多く挙がっていました。
山田部長:
部長会でも、研修が活かされていないということが話題に出ていたよ。
小林課長:
企画側と現場の意識のギャップは、どの研修でも課題ですね。特に階層別研修では、現場を巻き込む工夫が必要だと思います。

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「現場の協力が得られない」という企画側の話をよく耳にします。
ほとんどの場合、研修に対して、現場が期待するものと企画側が意図するもののギャップが大きい、あるいは現場に対して十分な説明をしていないことが原因です。
研修を効果的に進めるうえで、次の3点は欠かすことができません。

  1. 研修実施前に企画側から、上司に対して研修の意図と内容をしっかり説明すること
  2. 現場において、対象者への期待や役割について十分に議論をしたうえで、研修へ送り出してもらうように上司に依頼すること
  3. 研修内容と受講成果(アウトプット)をもとに、研修後の育成支援を行ってもらうように上司に依頼すること(現場実践のきっかけを受講者本人に委ねないこと)

説明・依頼の方法は問いません。
重要なことは、階層別研修は現場の協力が欠かせないということを現場と企画側の双方が認識し、対象者本人を組織として育成していく風土を醸成することです。

次回は「階層別研修の設計のポイント(コンセプトとプログラム)」についてお伝えします。

※次回は9月20日にお届け予定です。
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(2012/09/13)