ブログをご覧の皆様、こんにちは。
富士通ラーニングメディアの萬(よろず)と申します。
VMwareの認定講師として、仮想化研修を担当しています。
サーバ仮想化研修は、当社の研修のなかでも人気のコースです。
仮想化というと、以前は仮想化を導入するかどうかが検討の対象となっていましたが、現在は仮想化ありき、仮想化の導入は前提という状況が多く見られます。また、以前は既存サーバの集約や延命を目的とすることが多かったのですが、現在では仮想化環境上で新規に基幹システムを構築することも増えています。 そういった状況の中、サーバ仮想化は一時的なトレンドではなく、定番の技術となってきています。
とはいえ、サーバ仮想化の導入はなかなか難しいです。仮想化のスキルを修得しようとして、何から始めればいいのか困ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。 私自身、VMwareの認定講師になって3年たち、今年は日本のVMwareのイベントでは最大規模のvForumにスピーカーとして参加させてもらうことができましたが、仮想化の勉強を始めたばかりのころのことは思い出したくありません・・・ 仮想化はわからないし、VMwareの講師資格を取得する準備も大変だしで、苦痛な日々でした・・・
では、いったい仮想化の何がわからなかったのでしょう? 考えるうえで参考になる文章がありましたので、引用します。Linuxディストリビューションの1つであるFedoraの仮想化入門ガイドの一節です。
「仮想化は習得が難しいという噂があります。実際は、仮想化はもはや難しくありません。もしくは、あらゆる他のプロセスよりも習得が簡単です。物理環境を管理および維持するために必要なスキルは仮想環境に簡単に応用できます。学習曲線を確実にする物理の対応するものとほとんど同じような仮想環境の機能はわずかなものだけが残ります。」
( 出典:Fedora仮想化入門ガイド3.2仮想化学習曲線(原著作者:Red Hat) <2013年12月11日現在>)
適用するライセンス:Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported license
私はこの文章を「物理環境のスペシャリストであれば仮想化環境のスペシャリストになれる」と解釈しています。逆に言うと「物理環境がわからない限り、仮想化環境もわからない」ということです。 仮想化がわからないという場合、「物理環境のことがわからない」のか「物理環境はわかるけれども仮想化特有の発想になじめない」のかを区別する必要があります。
ネットワークやストレージについてよくわからないという場合などが当てはまります。 これは時間をかけてでも地道に修得するしかありません。特にネットワークとストレージについては、物理環境で複数台のサーバを接続させ管理するために必要なスキルを修得しておかなくてはなりません。 とはいえ、いきなりネットワークやストレージに取り組んでしまうとつらいです。ゴールである仮想化への道のりが長すぎます。モチベーションが維持できません。まずは修得したい仮想化ソフトウェアについて、マニュアルや市販本を見ながら構築の流れを追ってください。
その中でネットワークやストレージでわからないことがあったら調べればよいと思います。仮想化ソフトウェアの機能を理解しようとすればするほど、物理的なハードウェアや構成について調べることが増えていくはずです。 私はこういったスキルの修得に時間がかかりました。たまたま当社で研修用にブレードサーバを購入することになり、サーバやストレージの構成を行ったのでスキルが得られましたが、独学ではつらいこともあります。スマートに身につけたい場合は、実機実習ありのネットワークやストレージの研修を探すとよいと思います。やはり実機を操作したほうが理解できたという実感が得られます。
ライブマイグレーションを使用することが受け入れられないという場合などがあてはまります。 サーバ仮想化環境では、仮想マシンをパワーオン状態のまま別の物理サーバ上に移動させる機能が使用できます。一般的にこの機能をライブマイグレーションと呼んでいます。さらに現在では運用管理サーバと連携し、負荷の高い物理サーバから負荷の低い物理サーバへとライブマイグレーションを自動で行う、物理ホストの自動負荷分散の機能も用意されています。
こういった機能は仮想化ソフトウェアの目玉機能であり、使用をおススメしたいのですが、使うことに対して拒否感を感じる方がいらっしゃいます。仮想マシンがどこの物理サーバで稼動しているのか、自分で管理できなければならないという立場です。物理環境をきっちりと管理されてきた方ほど、この傾向が強いと感じます。
ここはぜひ頭を仮想化脳に切り替えてください。データセンター全体を1つのコンピュータとしてとらえるイメージです。 従来の物理環境で業務アプリケーションを稼働させる場合、アプリケーションをどのCPUで動かすかとか、メモリ上のどこの物理的な領域にデータを格納するかなどは、普通考えません。CPUやメモリの管理はOSに任せてしまいます。 サーバ仮想化環境の場合は、データセンター全体を見回して、余裕のあるCPUやメモリを仮想化ソフトウェアが選んでくれます。負荷が集中した場合はCPUとメモリを選びなおしてくれますが、その選択肢に別筐体内のCPUやメモリも含まれている状態です。
もういっそのこと、物理サーバの部品をサーバのケースから全て取り出して、サーバルームに並べてしまえばよいのではないかと想像したりします。 部品が1台1台個別にケースに収められていると、物理サーバ単位での管理をしたくなってしまうのかもしれません。サーバの部品をケースから取り出してしまえば、どこまでが1台の物理サーバの部品なのか区別がつかなくなります。物理サーバ単位での管理なんてどうでもよくなるのではないでしょうか。
これはあくまでも想像の世界です。現実的には並べることができませんが、物理サーバの筐体にとらわれずCPUやメモリが全体でどのくらいあるのかという発想に慣れると、新しい世界が開かれた気分になります。 一人で考えていてもうまく発想が切り替えられない場合、研修を受講して新しい考え方に触れるもの悪くないかもしれません。
当社仮想化研修で用いるブレードサーバーの図
ではブログ名物のおススメの書籍を紹介します。
ストレージがよくわからないという方には!
『IT技術者なら知っておきたいストレージの原則と技術(インプレスジャパン)』(ISBN:978-4-8443-3351-7)
仮想化とは直接関係ないですが、私がデータセンター全体を1つのコンピュータとしてとらえる考え方に目覚めたきっかけはこの本です。
『Googleクラウドの核心 巨大データセンターの変貌と運用の経済学(日経BP社)』(ISBN:978-4-8222-8431-2)
最後に、私たち、仮想化担当の講師がご提供しているコースたちをご紹介します。
受講者の皆さんとお会いできる日を楽しみにしております。
(2013/12/12)