人材育成を支援する新たな枠組 『CCSF』とは

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みなさん、こんにちは!
コンサル部の伊藤です。
日ごろは、人材育成制度の企画・運用設計・定着支援などを担当しています。

クラウドコンピューティングの普及や新たな技術開発によりIT環境は大きく変化し、企業のビジネスモデルも、受託開発から、サービス開発やWeb開発、ビジネスモデル提案やビッグデータ分析などへ変化し、IT技術者に必要とされるスキルも変化してきています。

今回のコラムでは、このような状況をふまえた企業における人材育成のポイントと、人材育成を支援する新たな枠組である、『CCSF』をご紹介します。

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<人材育成を行うポイント>

みなさんの会社では、人材育成は計画的に進められていますか?

セミナーなどで人材育成担当者の方とお話すると、次のような悩みを耳にします。

  • 研修を実施しているが、場当たり的で内容に偏りがある
  • 人材育成上の課題や問題点が整理できていない
  • 人材育成の施策と経営戦略が合致していない

企業競争力を高めるためにも、経営戦略を実現できる人材の育成は非常に重要です。
そのためには、成長するための「戦略的」、「計画的」な『人材育成施策』を策定することが必要です。
施策は、自社の特性にあわせて設計された成長に向けたPDCAと施策を適切に実行できる風土作り(意識やマインド醸成)とが一体のものである必要があります。

その、成長に向けたPDCAと、施策検討のポイントとしては、以下のような点があります。

<成長に向けたPDCA>

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<施策検討のポイント>

組織として

  • 経営戦略/事業戦略と人材育成方針の結びつきが明らかになっている
  • 人材育成上の課題、問題点が整理されており、それらの解決に向けた施策が打たれている
  • 評価と改善が適切に行われている

個人として

  • 教育が場当たり的でなく、年間などの計画を立てて実施できる状態が整っている
  • スキルの保有状況や、強み・弱みが明らかになっている
  • 上司と部下との間で、キャリアアップやスキルアップに関する計画や思いが共有されている

そして、人材育成施策を策定し、運用していく上で、非常に有効なツールとなるのが「スキル標準」です。

<スキル標準とは>

IT業界において利用される主なスキル標準としては、「ITスキル標準(ITSS)」、「情報システムユーザースキル標準(UISS)」、「組込み技術者スキル標準(ETSS)」の3種類があります。
これらは、IT国際競争力を強化するために、ITサービスの提供や利用に必要とされる能力を明確化、体系化した指標でIPA(情報処理推進機構)が維持管理しています。

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当社でも、それぞれのスキル標準に対応した研修コース体系をご用意しています。

ITSS / UISS / ETSS 対応コースから探す

しかし、これらのスキル標準も、企業のビジネスモデルや従業員規模により、「自社向けにカスタマイズするのが難しい」「技術者のスキルが軸になっているので、経営目標や事業計画に結び付けて活用することが難しい」など、スキル標準活用の必要性は感じているものの、実際に、導入・活用できていないという一面もあります。

<「CCSF」とは>

このようなスキル標準活用の課題を解決し、ビジネスモデルの多様化に伴うスキルの変化や、求められる人材像の多様化に柔軟に対応していくために登場したのが、共通キャリア・スキルフレームワーク(略称CCSF):Common Career Skill Frameworkです。

CCSFは、ITスキル標準(ITSS)、組込みスキル標準(ETSS)、情報システムユーザースキル標準(UISS)の各スキル標準の参照モデルとして位置付けられており、各スキル標準が相互にキャリア及びスキルを参照することが可能です。

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下図のように、CCSFでは、3つのスキル標準の「タスク(業務)」「職種/人材像」「スキル/知識」を整理し、「タスクモデル」「人材モデル」「スキルモデル」として体系化しています。
また、時代の変化やニーズに対応し、「タスクモデル」、「人材モデル」、「スキルモデル」は、追加、整備していく事が予定されています。

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<「CCSF」の特長>

CCSFは、3つのスキル標準が持つコンテンツを横串で見ることができ、それぞれのスキル標準の違いを意識することなく、複数のスキル標準の活用が可能です。

今まで、複数のスキル標準を利用する場合、別管理を余儀なくされていましたが、CCSFを利用することで、複数のスキル標準を組み合わせても、複雑な管理が不要になります。

また、自社のビジネスに合わせた人材像の作成やタスクの追加・削除・変更などのカスタマイズが容易に行えるのもCCSFの魅力の一つです。
たとえば、「タスクを定めると、その実施に必要なスキル、および知識が定まる」「タスクの組合せによって、その役割を果たす職種、又は人材像が定まる」といった事が可能になり、自社のビジネス戦略に沿った、人材育成施策の検討や、見直し等に柔軟に活用することができるようになりました。

さらに、IPA(情報処理推進機構)も、テンプレートなどを用意し、カスタマイズを支援しています。

このように、CCSFはビジネスモデルや求められる人材像の多様化に対して柔軟に対応できるため、今後、利用企業の増加が予想されます。

当社でも、近々、CCSFに対応したスキル診断サービスや研修コース体系をご紹介する予定です。
また、スキル標準やCCSFを活用した、計画的な人材育成の支援も実施していますので、興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(2013/05/30)