いま、求められるテストとは?~研修効果を可視化するテスト品質向上~★人材育成の課題解決に、テストを活用しよう

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みなさん、こんにちは!
富士通ラーニングメディアの五十嵐です。
今月は、「テスト問題の品質」というテーマでお話をしています。
第3回まで、レビューと統計手法による分析、という異なる視点でのテスト問題改善の取り組みなどをご紹介しました。

最終回である今回は、当社で実施している、お客様の課題やご要望に合わせて提供しているテストの事例をご紹介します。

<A社様の事例:
受講者の前提知識に応じた研修を提供するため、事前の診断テストを実施!>

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A社様は、システムエンジニア全体のセキュリティ能力を底上げし、セキュリティ意識や知識をしっかりと身につけさせたいというご要望をお持ちで、そのために教育の必要性を感じていらっしゃいました。
ただし、対象者によっては、すでに深いセキュリティ知識を持って業務に対応している方もおり、前提知識がさまざまな状況でした。
さらに、A社様独自の業務に応じたセキュリティ知識や、その対応が身についていることも確認したかったため、一般化されたIT試験では対応できないという課題がありました。

そこで当社は、A社様の要件に応じたセキュリティ知識を測るための診断テストを作成し、レベルに応じて、必要となる研修を受講いただくことにしました。

実施した内容:

【ステップ1】
A社様にヒアリングし、セキュリティ知識レベルとそのレベル保有者の能力を整理し、定義しました。
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【ステップ2】
A社様のセキュリティ要件や事例を確認しながら、出題範囲(項目)を定義しました。
例)工程(要件定義、設計、実装)ごとに必要となる技術カテゴリ(アクセス制御、攻撃、ログ管理など)
【ステップ3】
出題範囲に対応させ、難易度(高難度・中難度・低難度)ごとにテスト問題を作成しました。
この際、識別力の高い問題(能力を満たしているかいないかを明確に判断できる問題)を含めることを意識しました。
【ステップ4】
セキュリティ知識レベルと問題の正答数を対応づけ、難易度ごとに配点の重みづけを定義しました。(低難度は、2点、中難度は5点、高難度は10点など)
【ステップ5】
テストを実施し、対象者をステップ1で定義したレベルに分けました。

上記により、レベルに応じた研修を受講させることができるため、研修効果が高まるだけでなく、全員一律で同じ研修を受講させなくてもすむため、コスト面でも効果があります。

このようにテストを活用することで、受講者やレベルごとの強み・弱みを分析し、弱みは補い、強みはよりパワーアップさせる、といった戦略(方向性)に応じた研修を組み立てることも可能となります。

<B社様の事例:管理職候補を養成する重要な研修!
  分析力や考察力を適切に把握するために論述テストを活用!>

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当社は、B社様のリーダークラスに対し、IT戦略に関する研修を提供していましたが、管理職候補を養成する重要な研修でもあるため、修了を認定するための論理的な思考力をみる試験を実施したい、というご要望をいただきました。
本研修は、受講者自身で自社の経営課題を分析し、IT戦略を導きだし、施策を検討できる能力を身につけることを目的としているため、この結果を測るためにはどのような手段を利用すべきかを、当社で検討しました。
重視すべきは、テストで正しい選択肢を選べたかではなく、「なぜ、それを選択したのか」という根拠が述べられているか、深く幅広い観点で分析しているか、それが論理的に説明されているか、といった観点です。
また、リーダーとして、自分の部下に納得感を与える説明ができるか、といった点も重要です。

そこで当社は、分析力・考察力を測るために、論述試験を作成・提供しました。

実施した内容:

  • 論述試験における、採点の基準と観点(具体性・論理性・妥当性など)を定め、多段階評価し、その評価に基づき配点しました。
  • 客観性を重んじるため、複数名の当社のIT戦略スペシャリストとB社様とで協議し、各人の論述試験を採点しました。

このように、ご要望に応じてテストの形態を適切に選択することで、分析力や考察力などの可視化も可能となります。

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今回は2社の事例をご紹介しましたが、私たちは、人材育成や研修をより効果的・効率的に進めるためや、研修効果を適切に可視化するために、テストを活用しています。
また、プレゼンテーション研修やプロジェクトマネジメント研修では、インタビューや行動評価なども活用しています。

当社では、テストの可能性を引き出し、お客様の組織・従業員のみなさまがパワーアップできるよう、人材育成に役立つ、価値あるテストを提供するために取り組んでいますが、最重視しているのは「お客様要件とのフィット感」です。
どんなに考え抜かれた問題であっても、お客様要件とギャップがあっては意味がありませんので、「お客様要件をお聞きすること」を第一義に考えています。

今後も「テスト品質向上プロジェクト」メンバー一同、お客様にとって、人材育成の支援となるテストを提供してまいります!

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4回にわたって「テスト問題の品質」についてお届けしてまいりましたが、いかがだったでしょうか。
みなさまが、人材育成や研修効果をより高めることをお考えの際に、ご参考にしていただけますと幸いです。

※本シリーズは、今回が最終回です。ご愛読どうもありがとうございました。

(2013/03/28)