研修効果を向上させる個別評価とフォローアップ★なぜ、プロジェクトマネージャ研修に注目したのか?

  • 理論・研究

みなさん、こんにちは!富士通ラーニングメディアの五十嵐です。主に、研修の企画・設計を担当しています。

私は、2011年に半年間、インターンシップでイギリスのグローバル企業(Z社)に所属しました。
帰国後、私は、このインターンシップ経験で得たことを業務に活かしたいという想いから、当社の活動の1つである「プロジェクトマネージャの研修における評価とフィードバック」に取り組みました。
今月は、この取り組みから得た気づきについてお伝えしています(毎週木曜日掲載)。

前回は、研修の成果を評価するアセスメントについての考え方をお話ししました。
2回目の今回は、「なぜ、プロジェクトマネージャの研修にフォーカスをあてたのか」、そして、「フィードバックの手順」についてお話しします。

<プロジェクトマネージャという職種の特性は?>

前回お話ししたように、プロジェクトマネージャは「できる・できない」「理解した・理解していない」という指標で正確な評価ができない職種の1つです。
また、1人1人の経験や立場、状況によっても、業務内容や期待される役割が大きく異なります。
ですから研修そのものが難しい職種の1つと考えられます。

当社で開設している「プロジェクト運営をシミュレーター上で疑似体験しながら、プロジェクトマネージャの役割を学ぶコース」に対して、研修成果に満足される受講者や人材育成担当者もいらっしゃるなかで、次のような声も上がっていました。

個人の判断に対する良し悪しが分かりにくい

本コースはグループ形式の演習を多く行います。
プロジェクト運営におけるさまざまな場面での意思決定を、グループで討論のうえ決めていきます。
ですから、グループの意見と自分の意見が異なった場合に、「自分の意見で運営をしたら、そのプロジェクトは成功したのか、失敗したのかを知りたい」という意見がありました。

何がスキルとして身に付いたのかが分かりにくい

本コースは演習が主体です。
講義形式で講師から知識を修得するスタイルではないため、「自分に新たな知識が身に付いたのか、という観点からの成果が分かりにくい」と感じる受講者が見受けられました。

このような現状を踏まえ、個人の状況や理解度にあわせた評価やアドバイスができるような体制づくりに取り組みました。

<体制づくり:3つの実践>

体制づくりとして実践したことは、以下の3つです。

1)評価基準の作成

シミュレーター上で展開されるプロジェクトのマネジメントを、「計画段階」「実行段階」「終結段階」の3つの段階に分けて、それぞれに評価基準を設定しました。
以下に評価基準をいくつかご紹介します。

計画段階:

リスクマネジメント計画書を作成できたか?
リスク事象を識別できたか?

実行段階:

必要に応じて、予防措置も含めたリスク対策措置が実行できたか?
計画していないリスク事象に対して、迂回策を作成できたか?

終結段階:

リスクマネジメントプロセスと手続きの有効性を判断するために、プロジェクトの結果をレビューできたか?

2)「学びの記録」シートの作成

前項で設定した評価基準とそれに対する受講者の自己評価や、講師からのアドバイスを記入する欄を設けた「学びの記録」というシートを作成しました。
各評価項目に対して、「・・・ができた。・・・が課題だと感じた。だから、・・・という対策を立てた」というように、受講者自身が自己評価を記入します。

【学びの記録シート】
20121108__2.jpg

3)講師によるインタビューとフィードバック

講師によるインタビューとフィードバックは、今回の試みの中で、もっとも重要な部分です。
「学びの記録」シートの記入が終わった受講者は、シートを講師のところに持参し、その内容について講師とディスカッションをします。
そして、ディスカッション中の受講者の気づきや講師からのアドバイスを、講師が「学びの記録」シートに書き込みます。

講師は、プロジェクトマネジメントの経験が豊富で、実践に基づいたアドバイスができる人が担当しました。
講師に対しても、受講者の状況を効率的に引き出せるように、「リスクを予想できましたか?」「ゴールを決めることができましたか?」「予想できるリスクについて、対応策を立てられていますか?」といった、標準的な質問項目を定めました。

1人に対し、1回5~10分程度のインタビューを、「計画段階」「実行段階」「終結段階」の計3回行うことにしました。
本コースは3日間で行われます。
毎日、講師とインタビューをできるように設定しました。
次回はこの取り組みの結果と検証をお届けします。

※次回は11月15日にお届け予定です。
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(2012/11/08)