こんにちは!富士通ラーニングメディアの福山です。
今回より8回にわたり、「これからのプロジェクトマネジメントとは?」というテーマでお話をしていきます。
私は、20年以上にわたって、富士通でプロジェクマネジメントを担当してきました。
かかわったプロジェクトは100以上ありますが、もちろん成功したものもありますし、残念ながら失敗したものもあります。
そんな私の経験を交えて、お話をしていきますので、どうぞよろしくお願いします。
では、第1回目は「PMBOK® Guide(ピンボック)」(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)についてお話しします。
このブログをお読みの方の多くは、PMBOK® Guideを聞いたことがあると思いますが、まずは、少しご紹介しておきましょう。
PMBOK® Guideは、A Guide to the Project Management Body of Knowledgeの略で、アメリカのPMI(プロジェクトマネジメント協会:Project Management Institute)が作った、プロジェクトマネジメントの知識を体系化した、グローバルスタンダードです。
建設、製造、ソフトウエア開発などを含む幅広い業界において、プロジェクトが成功するための道筋を42のプロセスで標準化しています。
PMBOK® Guideが提唱される前は、スーパーマンみたいに優秀な人がマネジメントするとうまくいき、プロジェクトマネジメントの経験が乏しい人だとうまくいかないというように、プロジェクトの成果は人によって大きく異なっていました。
つまり、プロジェクトマネジメントは属人的な経験知にとどまっていたわけです。
ところが、PMBOK® Guideというフレームワークが登場したことで、プロジェクトマネジメントが、経験知から形式知となり、プロジェクトは、誰がやっても、同じ手順で推進できるようになったのです。
「PMBOK® Guideはとても素晴らしいツールのようだ」ということは、誰しもが認めるところでしょう。
ところが、当社のプロジェクトマネジメント系講座を受講された方からよく聞くのが、『PMBOK® Guideという素晴らしいツールがあるのは分かる。でも、どうやって使いこなしたらいいのか分からない』という声です。
実は、PMBOK® Guideに対する私の最初の印象は、アメリカ発祥であり、建設業界に端を発したものだと聞いていたので、「きっと我々日本のITプロジェクトにはフィットしないだろう」でした。
そして、「PMBOK® Guideを使わなくても、プロジェクトは成功に導ける」と思っていました。
ところが次第に、「PMBOK® Guideは、実に素晴らしく有益だ」と感じるようになったのです。
なぜ、そう感じるようになったのかを、次に説明しましょう。
当時私は富士通のシステムエンジニアでした。
すでに他ベンダーのシステムを導入されているお客様のところに、富士通のシステムを追加導入するという商談の席でのこと。
システム導入の進め方について説明をしていたところ、お客様から『その進め方(開発標準)は富士通だからですよね。従来我が社で使っていたA社の開発標準だと、どの箇所でどの作業にあたるのか説明をしてもらいたいのですが・・・』というご要望をいただきました。
その時に思い出したのが、PMBOK® Guideです。
PMBOK® Guideをにわかに勉強してみたところ、そこには、今まで自分がいくつものプロジェクトを運営し、実践してきた手順が書いてあり、手順1つ1つに対し、タスクとしての名称がつけられ、非常に分かりやすく、体系立ててまとめられていました。
さらには、プロジェクトマネジメントの観点を9つの知識エリアに分類・整理するアプローチを推奨してあったので、「PMBOK® Guideはものすごく整理されたテンプレートなのだ」ということを実感するに至ったわけです。
そして、次にお客様にお会いした時に、富士通でもなく、A社でもなく、『世界標準であるPMBOK® Guideに基づいて説明をさせていただきます』と言ったところ、お客様にすんなりと受け入れていただいたのです。
プロジェクトのスタート時に、プロジェクトのプロセスが漏れなく体系化されているPMBOK® Guideの全体像を説明すると、お客様にも全体の流れが分かりやすくなりました。
その結果、お客様が自発的に次にやるべきことを考えることが多くなり、分からないことがあると『これってどういうことですか?何をすればよいでしょうか?』と聞いてくださるようになったのです。
それまでは、手順をその都度、1つ1つ説明していたのですが、PMBOK® Guide導入後は、お客様からの質問に対して『PMBOK® Guideをベースに、富士通ではこうやっています』とお答えすればよくなり、プロジェクトの進行が劇的にスムーズになりました。
PMBOK® Guideに基づくことで、新規システムの導入や、違うシステムへの乗り換え・追加を検討している企業にとって、利便性が上がります。
また、世界進出を考えている企業にとっては、PMBOK® Guideという世界のどの国でも通用するフレームワークにのっとった仕様にすることは、大きな意味があります。
このようなメリットを実感していくにつれ、私自身も心から、「PMBOK® Guideは素晴らしい。私の食わず嫌いだった」と思うに至ったわけです。
■次回は、PMBOK® Guideをプロジェクトに導入した時に感じた効果についてお話しします。
■第2回「これからのプロジェクトマネジメントとは?(2)プロジェクトを成功に導くために ~PMBOK® Guideについて考える~」
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富士通ラーニングメディアでは、プロジェクトマネジメントのスキルを体系的に学べます。
ご自分のスキルアップに、スタッフのスキルアップに、ぜひ、ご活用ください。
PMBOK、PMPは、プロジェクトマネジメント協会(Project Management institute,inc.)の登録商標です。
(更新日 2018/12/20)