「熊大通信」は、2010年8月~10月に掲載した記事を、再度お届けするものです。
こんにちは、佐藤です。
つい1週間ほど前までは半袖で過ごしていたのが嘘のように涼しくなってしまいましたね。
暑さ寒さも彼岸までと言いますが、こんなにいきなり気候が変わるとは思ってもいなかっため・・・実は衣替えがまだ終わっていません。
ブログを読んでくださっている皆様は、もう秋・冬の支度を済まされたでしょうか?
さて、『熊大通信』も今回で7回目です。
今回はID(インストラクショナル・デザイン)の中でも重要なポイントの1つである学習目標について、目標の立て方や分類方法、評価方法などをご紹介いたします。
「予定していた研修は一通り問題なく終わったのに、期待していた目標はなぜか達成されない・・・」といった悩みを一度でもお持ちになった方は、必読の内容となっています。
『熊大通信』の第3回、第5回でも書いてきましたが、IDで最も重要と言えるのが学習目標を何に定めるのかということです。
代表的なIDプロセスモデルであるADDIEモデルでも、学習対象の分析と目標の設計をプロセスの起点としていました。
この学習目標について、とても分かりやすく体系的にまとめられたものがID研究の第一人者とも言えるR・ガニエによって発表されているのでご紹介します。
学習目標をどのようなものに設定したのか、その目標の分類によって、学習成果がどのように表され、どのように測ればよいか、分類ごとに以下のような表でまとめています。
学習成果 | 言語情報 | 知的技能 | 認知的方略 | 運動技能 | 態度 |
---|---|---|---|---|---|
学習の性質 | 指定されたものを覚える 宣言的知識 再生的学習 |
規則を未知の事例に適用する力 手続き的知識 |
自分の学習過程を効果的にする力 学習技能 |
筋肉を使って体を動かす/コントロールする力 | ある物事や状況を選ぼう/避けようとする気持ち |
学習成果の分類を示す行為動詞 | 記述する | 区別する 確認する 分類する 例証する 生成する |
採用する | 実行する | 選択する |
成果の評価 | あらかじめ提示された情報の再認または再生 全項目を対象とするか項目の無作為抽出を行う |
未知の例に適用させる:規則自体の再生ではない 課題の全タイプから出題し適用できる範囲を確認する |
学習の結果より過程に適用される 学習過程の観察や自己描写レポートなどを用いる |
実演させる:やり方の知識と実現する力は違う リストを活用し正確さ、速さ、スムーズさをチェック |
行動の観察または行動意図の表明 場を設定する 一般論でなく個人的な選択行動を扱う |
出典:鈴木克明(1995)「放送利用からの授業デザイナー入門」日本放送教育協会 より一部抜粋
上記のように、学習成果を5つのパターンに分けて整理したものを「ガニエの学習成果の5分類」と呼びます。
少し専門的な用語も含まれていますので、簡単にまとめると、目標を以下のような分類に分けて整理することができるということです。
このように、ガニエの学習成果の5分類を用いて教育や研修の目標を整理することで、研修を行う際にどのような目標を設定するべきか、目標が達成されたかをどうやって測定するべきかをまとめることができます。
例えば電話応対の研修において、「率先して電話応対できる」という目標は態度の学習成果と考えることができますが、肝心のテストでの設問が「電話応対における正しい敬語選択しなさい」(敬語というルールの応用なので、知的技能の学習成果)では、態度の学習目標が達成できたかどうかを確認することができません。
また、意外とやってしまいがちな間違いとして、「~~ができるようになる」という目標に対して、研修の中ではできるようになるかまでは確認してないということがあります。
どうでしょう。このような間違いの経験はありませんでしょうか?
ガニエの学習成果の5分類は、目標の立て方や測定方法だけでなく、目標に対してどのようなアプローチで教えていくのがよいのか(=指導方略)や練習とフィードバックの方法についても体系的にまとめられており、学習設計を行う際には非常に強力なツールといえます。
学習成果の分類に対する指導方略などにご興味を持たれた方は、こちらのページに詳しく載っていますのでよろしければご参照ください。
次回は、eLをはじめとした自己管理学習を支援するための足がかりとして、成人学習学の考え方を幾つかご紹介したいと思います。
どうぞお楽しみに!
(2010/09/28)