復習(2)
今回は「わかりやすく書く」復習(2)です
このコラムでは、わかりやすい文章の書き方についていろいろなポイントをお伝えしてきました。
今回は振り返りの2回目。わかりにくい表現や誤解を招きやすい表現、まちがったかなづかいを修正していきましょう。
- 翻訳プロジェクトの報告書、読みやすくなるように書き換えてみたよ。
でも、まだわかりにくい表現やまちがったかなづかいなどが残っているみたい。
関係各位様
2023年3月吉日実施期間:2022年10月より2023年2月の5ヵ月間「ねこボット」取扱説明書 翻訳プロジェクト実施報告書
実施内容:取扱説明書の英訳(おおむね1,000ページ)
作業方針:
幅広い世代向けの使い易い製品のマニュアルという方針を踏襲する為、以下の工夫を しました。
・翻訳前にテクニカルライターよりわかりやすい表現を提案する。
・翻訳後にネイティブスタッフが洗練された自然な英文に書き換える。
実施結果:
・開発スケジュールの変更にもとずき、翻訳のスケジュールも1ヵ月延伸した。
・工程途中の仕様変更で必要な情報が不足したとき、開発担当者に問い合わせられる場合は直接確認することで、従来からの課題であった待機時間の短縮を実現した。
(後略)
- どこをどうやって直したら良いと思う?
- 気になるところを挙げてみたよ。これでどうかな?
1行目 関係各位様 「各位」と「様」は敬称が重複しているので、「様」は不要。
【復習】連載コラム「重複した表現をなくす」3行目 2022年10月より 比較ではなく始点を表しているので、「2022年10月から」のほうがわかりやすい。
【復習】連載コラム「「で」と「より」の適切な使いかた」4行目 おおむね まちがいではないが、できるだけ自然な文章にするために文語調の表現は避け、「約」などにした方がよい。
【復習】連載コラム「文語調の表現を避ける」6行目 使い易い 一般的に、「易い」は「やすい」とひらがなで表記する。
【復習】連載コラム「漢字の使い方」6行目 幅広い世代向けの
使い易い製品のマニュアル「使い易い」は「製品」に掛かるのか、「マニュアル」に掛かるのかあいまい。
「製品」が使いやすい場合は、現状でよい。
「マニュアル」が使いやすい場合は、「幅広い世代向けの製品の、使いやすいマニュアル」のほうが良い。
【復習】連載コラム「修飾語と被修飾語を近づける」6行目 為 一般的に、「ため」とひらがなで表記する。
【復習】連載コラム「漢字の使い方」6行目 以下の工夫をしました。 「だ・である」調の文章に、1文だけ「です・ます」調があり、文体が不統一。
【復習】連載コラム「表現の一貫性」7行目 より 比較ではなく始点を表しているので、「テクニカルライターから」または「テクニカルライターが」のほうが誤解を与えない。
【復習】連載コラム「「で」と「より」の適切な使いかた」10行目 もとずき 「もとづき」が正しい。
【復習】連載コラム「間違いやすい表記」11行目 仕様変更で 「仕様変更のため」のほうがわかりやすい。
【復習】連載コラム「「で」と「より」の適切な使いかた」11行目 必要な情報が不足したとき、
開発担当者に問い合わせられる
場合は~前者が大きい条件、後者が小さい条件なので、
「必要な情報が不足した場合、開発担当者に問い合わせられるときは~」が正しい。
【復習】連載コラム「条件を示す用語」12行目 従来からの課題 「従来」と「から」は意味が重複しているので、「から」は不要。
【復習】連載コラム「重複した表現をなくす」
- ついやってしまいがちな表現もあるけど、きちんと指摘できているよ。
- 反映すると……こんなかんじ?!
関係各位様
2023年3月吉日実施期間:2022年10月から2023年2月の5ヵ月間「ねこボット」取扱説明書 翻訳プロジェクト実施報告書
実施内容:取扱説明書の英訳(約1,000ページ)
作業方針:
幅広い世代向けの製品の、使いやすいマニュアルという方針を踏襲するため、以下の工夫をした。
・翻訳前にテクニカルライターからわかりやすい表現を提案する。
・翻訳後にネイティブスタッフが洗練された自然な英文に書き換える。
実施結果:
・開発スケジュールの変更にもとづき、翻訳のスケジュールも1ヵ月延伸した。
・工程途中の仕様変更のため必要な情報が不足した場合、開発担当者に問い合わせられるときは直接確認することで、従来の課題であった待機時間の短縮を実現した。
(後略)
- うん、読みやすい、わかりやすい報告書になったと思うよ。
1年間学んできたことが、きちんと身についたみたいだね。
- わーい! りっぱなライターに一歩近づいたかな?!
わかりやすい表現で書くためのいろんなコツ、もっともっと学んでいきたいな!
ミケさん、これからもよろしくね。
予告
次回は、新入社員編(1)をお伝えします。