ATD 2016 IC&E 参加レポート_その3 ~eラーニングと教育の科学~

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富士通ラーニングメディアでは、人材育成に関する最新動向の定点調査および当社社員の育成を目的に、毎年5月に米国で行われる世界最大規模の人材育成、組織開発カンファレンス「ATD International Conference and Expo(以下、ATD IC&E)」に参加しています。

今回、ATD IC&Eには当社若手講師2名と営業1名の計3名が参加しました。気づきや学びのあったセッションの一部を読者のみなさんにご紹介したいと思います。

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eラーニングと教育の科学

セッションについて

タイトル:「E-Learning and the Science of Instruction: 2016 Update」
講演者:Ruth Clark氏(Clark Training & Consulting)

セッション内容

トレーニング設計では「Evidence-Based Learning」がポイントになります。下記のような最新のトレーニング手法でも、学術的な論拠に基づいたトレーニング設計が重要です。

  1. ゲーム性を持たせたeラーニング:学習目的を達成することに重きを置くこと
  2. オンラインコラボレーション(SNS)eラーニング:グループ構成人数は最小限に
  3. ケーススタディ型eLearning:ケースを伝える資料について、視覚性を重視すべきか、情報量を重視すべきかは想定受講者によって変更すること

ゲーム性eラーニング

  • ルール、報酬、フィードバックがインストラクションの目的とあっていなければ、学習目的を達成できない
  • ゲーム性を持たせるだけでなく、自己説明やフィードバックをコンテンツに加えたほうが効果が高い
  • 研究の結果、以下の属性を持ったゲーム型コンテンツの効果が高いことがわかった
    1. 人称のストーリー
    2. 事前学習している
    3. 自己説明あり(選択肢を選んだ理由を自分で説明)
    4. 音や画像など、文字以外を含む
  • ゲーム型学習は良い点はあるが、目的によっては適応しても効果がないケースもある
  • 記憶力向上を求める
  • 学習効率を求めるならば、ゲーム型トレーニングは適切でない。学習時間がかかる上、学習効果は変わらない

オンラインコラボレーション(SNS)eラーニング

  • Social Loafing(社会的手抜き)の注意点がある。グループ構成人数が多くなると、サボる人が出てくる
  • 4人でコラボレーショントレーニングを行うのであれば、2人ずつに分けてディスカッションを行い、最後に結論をまとめるやり方のほうが、4人1グループにするよりも効果的

ケーススタディ型eラーニング

  • 工場作業員やアルバイトへのトレーニングなど、特定の条件化での行動をトレーニングしたい場合、VRなど、グラフィカルなeラーニングに注目が集まっている。
  • 作業初心者にとっては文字だけの資料よりも、視覚的な資料のほうが学習効率が高い
  • 作業中級者にとっては文字中心の資料のほうが学習効率が高い

所感(拝野)

学習者やゴール、学習手法などによって効果が違うことが学術的に論じられている点が印象的でした。

コンテンツを提供する際に効果を最大化するためには、学習目的を達成できるようなコンテンツを学術的に選択する必要があります。しかし、ビジネスという観点で考えると、必ずしも「学習効果が高いコンテンツ」が売れるコンテンツとはいえないところもあり、質を追求することは難しいです。いかにベストなコンテンツを作りつつ、収益を上げて教育ビジネスを成り立たせるかが研修ビジネスのキモであると感じました。

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拝野 第二ラーニングサービス部

翔泳社の「資格Zine」サイトの『もうExcelに戻れない! データを簡単に視覚化・分析できる「BIツール」体験はマストです』でも、講師として活躍。

主な担当コース
データ分析、UNIX/Linux関連コースを中心に担当

趣味:行きつけの居酒屋めぐり、阪神タイガース、某ジャンルのカラオケ

詳細は上記「関連リンク」内のページをご覧ください。

(2016/10/06)