優秀な人材が流出しない会社とは?リテンションマネジメントについて解説します

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皆さまの会社にも新入社員が入社されると思います。その大切な人材である新卒採用者の3割が3年以内に辞めてしまう現状(厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」による)をご存知でしょうか。

今回のコラムでは、新入社員や若手社員をはじめとした優秀な人材が退職(流出、離職)しないように、企業としてどのような施策が必要なのか、人事の方にとって重要な課題である、リテンションマネジメントについて解説します。

リテンションマネジメントとは

「リテンション(retention)」という言葉をご存知ですか。リテンションは、直訳すると保持・維持という意味ですが、人事の世界では「人材を確保すること」を指します。このリテンションと「マネジメント(management)」を組み合わせた「リテンションマネジメント」は、「優秀な人材を確保する」ための具体的な施策を意味します。

リテンションマネジメントが必要な背景

なぜ近年、リテンションマネジメントが必要となってきたのでしょうか。

従来、労働市場の流動性が高いアメリカでは、特にリテンションマネジメントが人事の重要課題となっていました。人材が流出することにより、

  1. 再雇用の手間や、採用した人物が戦力になるまでコストがかかる
  2. マニュアルには残しきれない、属人的なノウハウや知識の流出が起こる
  3. 退職者についていく形で、顧客や、他の社員の流出が起こる

といった影響が出てきます。これは企業にとって大きな問題です。

日本の労働市場は、景気が長く停滞し、企業側は、業績が向上した分を従業員の給料に反映させることが難しくなってきています。それにより、モチベーションを維持できなくなり、より良い労働条件を求めて自主的な転退職、リストラによる離職も増えてきています。

また、インターネットの普及により、ヘッドハンターや、転職エージェントとのアクセスがしやすくなり、AIの導入により現在の仕事に将来性があるのか考える機会が増えていることも、背景として考えられます。

こうした時代に、優秀な人材流出に伴う業績リスクを最小限に抑えるためのリスクマネジメントとして、リテンションマネジメントが必要になっている、というわけです。

業種にもよりますが、売り手市場、求職者が有利と言われている中で、大切な人材を失うわけにはいきません。従業員が離職・転職する兆しを見逃さないポイントとして、以下が挙げられます。

  • 精神的、肉体的にストレスを抱えていないか。限界に達していないか。
  • 今の仕事に対する興味ややる気、継続して働く意向を示しているか。
  • 仕事への適性や、従来やりたかったこととのギャップなどに悩んでいないか。

これらを念頭に置き、管理職が日頃からよく観察し、コミュニケーションをとることが大切です。あわせて、アンケートやアセスメントといったツールを用いて、従業員のモチベーションを計測することも有効な方法です。

リテンションマネジメントの目的と具体的な施策

リテンションマネジメントの目的は「人材確保」ですが、なかでも優秀な人材が流出しないようにすることが最大の目的です。優秀な人材は、仕事に関する技能や知識だけでなく、貴重な経験や気づき、さらには、まだ周囲の人には見えていないアイデアや想像力をも、持ち合わせているものです。これらは企業にとって、大切な人的資産です。自社が育てた優秀な人材には、ぜひとも自社で能力を発揮してもらいたいものです。

では、人材流出はなぜ起こるのでしょうか。

  1. モチベーションの低下
  2. より魅力的な世界への挑戦

この二つが大きな要因と考えられます。

1.は、「頑張っても正当に業績が評価されない」「賞与などの見返りがない」、「キャリアアップの見通しが立たない」、「職場の雰囲気が悪い」、「周りの人が辞めていく」などの状況により、今の職場で頑張ろうという気持ちがなくなってしまっている場合です。2.は、「やりたかったことが他にあり、それに挑戦したい」、「自分の可能性を試したい」など、常にチャレンジし続けたいという、意欲や価値観が高い場合です。どちらかの要因だけではなく、どちらも同時に存在することも、多くあります。

優秀な人材であるほど、突発的な理由で簡単に辞めるのではなく、総合的に判断した深い理由があるものです。

こうした従業員の気持ちや状況に応える具体的な解決策としては、次のようなものがあります。

1.権限を与える

上司から仕事の権限を委譲することで、一段階上の仕事ができることになった部下は自発的に考え、仕事を進めていきます。最終責任は引き続き上司が追うものの、受け身の姿勢でなくなるだけで、モチベーションが大きく上がり、パフォーマンスが向上します。世代間の人数がアンバランスで、ポストが不足したり昇格が遅れたりする職場において、社員の閉塞感を打破するきっかけにもなります。

2.報酬を与える

人が、頑張りを認められている、と実感できるのはやはり何らかの報酬をもらったときです。基本給は変わらずとも、業績に連動した賞与体系にする、ストックオプションを付与する、福利厚生を手厚くする、昇格させる、永年勤続表彰する、などが報酬にあたります。企業ごとに、既存の制度に合わせて仕組みを変えていく必要があります。

3.異動の機会を与える

優秀な社員ほど現場は手放したくないものですが、何年も同じ部署にいると、多少の担当職務変更があったとしても、新鮮な気持ちを毎回保つことは難しいものです。職務内容は変えずに勤務地を変える、あるいはジョブローテーションの一環で異なる職務に挑戦してもらうのです。それにより、新しい顧客との関係を構築し、これまで得たことのない知識やノウハウを吸収して、従業員の気持ちが一新され、積極的になるかもしれません。職場の人間関係で行き詰っている社員に有効な施策です。

4.能力開発の機会を与える

外部の研修や出向、留学など、通常業務と離れた場所で勉強することも大きな刺激になります。今の仕事のさらに上を目指したい人、あるいは違ったスキルを身につけて別の部門への異動を希望している人などにとって、よいチャンスとなります。

最近では、本業に支障のない範囲での副業を認めることで、得意なことを更に伸ばす機会としている企業もあります。

この施策で併せて必要なのが、学習内容や本人の成長ぶりを、職場や自社全体に報告・フィードバックするシステムです。会社としては業務を中断して学びの機会を与えているわけですから、本人の中でのみ学習内容が蓄積されるのでは、かえって人材の流出につながるおそれがあります。

研修やOJTで習得した学習内容をどのような形で報告するのが効果的かを考える、などのフィードバックの過程は、現場の上司や人材開発担当者が本人の成長ぶりをチェックできる機会となります。

5.評価をフィードバックする

優秀な人材であればあるほど、自分がレベルアップしたと感じる自己実現欲求や、他者から認められたいという承認欲求が強くなる傾向があります。

その欲求を満たすためには、評価をしっかり伝えることが大切です。結果だけでなく、プロセスも丁寧に見ていること、今後に期待することを含め、直属の上司や、部長などからメッセージを送ります。他社や他部署との連携役となっている社員には、外部からの評価もヒアリングして伝えるとよいでしょう。

ある程度年次を重ねた優秀な社員は、自分のこれまでのキャリアを振り返り、次はこうしたいという希望を持ったり、次はこうなるのではないかと予測したりしています。人事部として、すべての希望を叶えるわけにはいきませんが、将来自社の経営を担う人材として期待していること、そのために何が必要で、こういう経験を積んでもらいたいと考えているという事もある程度伝えると、本人にもキャリアの見通しが立ち、やる気を保つことができます。

6.コミュニケーションを促進する

起業して間もないなどで、給料が高くないのに、社員が楽しそうに働いている企業があります。そこには、職場の風土として、風通しが良い、コミュニケーションがうまくとれているという共通点があります。従業員同士がのびのびと働くことで、アイデアや工夫が生まれ、各自が成長を実感し、この職場でもっと頑張りたいという気持ちが強くなっていきます。就職活動をしている学生の多くが、「職場の雰囲気」を志望する理由に挙げていますので、実は企業にとって、とても重要な労働環境整備のポイントです。

7.配属とのミスマッチを抑制する

新卒採用者のうち3割が3年以内に辞めてしまう現状(厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」による)において、新入社員をどこに配属するかは重要な課題です。就職活動時に会社説明会や先輩社員の話を聞いて描いたイメージと、実際の配属や業務内容が異なると、「こんなはずではなかった」「第二新卒として就職活動をやり直そうか」ということになりかねません。それを防ぐためには、本人の希望を完全に満たすことができないとしても、「会社としてはこう期待しているので今はこれを学んでもらいたい」というように、考慮した配属であることを一人ひとりに対して伝えることが大切です。

例えば、

  1. 入社前の適性把握
  2. 内定時からの、入社後のキャリアパスについての丁寧な説明
  3. 配属発表時の面談、人事部による定期的なフォローアップなど
  4. 自己申告や社内公募などのチャレンジ制度の整備

などの取り組みが有効です。

リテンションマネジメントを成功に導くポイント

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ここまで、「優秀な人材を逃さない」、という観点から述べてきました。人事の立場として、制度を整えるだけではなく、優秀な人材の上司である現場の管理者への指導などの運用指導面にも力を入れることが重要です。権限を与えられ、評価をし、そのフィードバックをするのは、ほかならぬ現場の管理者です。したがって、人事で制度を整えたら、第一線の管理者にその内容を徹底的に理解してもらい、部下指導や人事考課についてのスキルアップを求めていきましょう。

そのためには、わかりやすい制度の策定力や改善力、優秀な人材を見抜く目利き力が、人材開発を担う方々に必要となります。

それにより、辞めたいという人材を引き留めるだけではなく、そもそも辞めたいという気持ちが起こらない、働く意欲の高い職場風土を形成することができます。

タレントマネジメントシステムの活用

リテンションマネジメントを効率よく実行するために、タレントマネジメントシステムなどのツールを活用する方法もあります。 例えば、タレントマネジメントシステムで対象となる人材のアセスメント結果を分析し、ストレス、意欲傾向などを可視化します。その分析結果を活用し、人材育成やモチベーションの向上に役立てることができます。

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(参考)タレントマネジメントシステムを活用したリテンションマネジメント

まとめ

いかがでしたか。リテンションマネジメントとは、優秀な人材をいかに確保し続けるか、その具体的施策を指します。せっかく自社が育てた優秀な人材です。その能力を発揮してもらえるよう、制度と気持ちの両面から環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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更新日:2018年09月11日

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