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EdTechについてeラーニングの専門企業が徹底解説

EdTech(エドテック)とはEducation(教育)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。既存の教育に対してテクノロジーを活用し、革新的なサービスに挑戦するスタートアップが数々生まれてきており、今、大きく盛り上がっている分野です。

今回の記事では、EdTechについて解説します。

目次

EdTechとは

EdTech(エドテック)とはどのようなものなのでしょうか。

経済産業省が推進する「未来の教室」におけるEdTechとは

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「未来の教室」とEdTech研究会は、経済産業省によって設置された教育改革に関する有識者会議です。

AIやVRをはじめとしたさまざまなデジタルIT技術を活用した革新的な教育技法のEdTechにより、一人ひとりに最適化された新しい教育をいかに実現すべきか、について議論されました。

文部科学省中央教育審議会で始まった、新しい時代の初等中等教育に関する審議も踏まえ、EdTech研究会からの提言が「未来の教室」ビジョン(第2次提言)という形でまとめられました。

全国各地の教育現場で実施した23の実証事業の成果を考慮し、様々な個性を持つ子ども達が、未来を創る当事者(チェンジ・メイカー)になるための教育環境づくりを、「未来の教室」ビジョンとして提言しています。

具体的には、「学びのSTEAM化」(※STEAM :Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせた造語)、「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤の整備」の3つの柱でまとめられました。それぞれの柱が標榜しているビジョンは次のような内容です。

1. 学びのSTEAM化 一人ひとり違うワクワクを核に、「知る」と「創る」が循環する、文理融合の学びに
2. 学びの自立化・個別最適化 一人ひとり違う認知特性や学習達成度等をもとに、学び方を選べる学びに
3. 新しい学習基盤づくり 学習者中心、デジタルファースト、社会とシームレスな学校へ

国をあげてEdTech(エドテック)を推進する、新しい時代の初等中等教育の在り方をまとめた提言となっています。

文部科学省が公表するSociety5.0におけるEdTechとは

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Society5.0とは、「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く、5番目の新しい社会を「超スマート社会」とし、内閣府を中心に標榜している言葉です。

文部科学省では、Society5.0におけるEdTechの役割を「教育におけるAI、ビッグデータなどの様々な新しいテクノロジーを活用したあらゆる取組」と定義しています。

その上で文部科学省は、EdTechは、児童生徒と教師の両社が使いやすく、教育の質の向上につながるものでなければならない、と考えています。

EdTechを活用し、児童生徒の人間関係や学習面など学校生活上の悩みなどを見逃さずに発見でき、必要に応じてきめ細やかな支援が受けられる環境を構築、提供することなどを構想しています。

EdTechの市場規模

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EdTechの市場規模は急速に拡大しており、野村総合研究所は2016年度におけるEdTechの市場規模を約1,700億円と推計しており、2023年には約3,000億円に拡大すると予測しています。

2018年1月に経済産業省が「未来の教室とEdTech研究会」を立ち上げ、文部科学省が2020年までにすべての小・中学校で一人一台のタブレット端末の導入を目指すという指針を発表したことで、国内でEdTechが注目されるきっかけとなりました。

海外に目を向けると、アメリカと中国におけるEdTechが盛り上がりを見せています。特に中国のEdTechスタートアップへの投資額はアメリカを抜き、近い将来、20.3億ドル(約2,030億円)に達すると言われています。

ここまでは、EdTechがどういうものなのか、ご説明いたしました。ここからは、EdTechでどのような変化が起きるのかをご紹介します。

EdTechによって教育にどういう変化が起きるのか

EdTechが広がる中で、教育にどのような変化が起きていくのか、以下の5つの論点から解説します。

EdTechによって教育に起きる変化
  1. オンライン講義による学習
  2. アダプティブラーニングの実施
  3. AIやVR・ARなどによる学習方法の進化
  4. 学習管理の効率化
  5. 講師や受講者のコミュニケーション促進

1.オンライン講義による学習

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スマートフォンが普及し、一人一台インターネットに接続できる環境が生まれています。

その中で、インターネット環境さえあれば場所や時間を問わず学習可能なeラーニングは、今まで以上にその裾野を広げて進化しています

たとえば、オンラインで講義を受けて学習できるサービスの代表格として、世界中の一流大学の講義をオンラインで受けられるMOOC(Massive Open Online Course)があります。

オンラインで一流大学の講義を無料で受講できること、一定の水準に達すれば修了証をもらえることなどが人気の理由です。

学費を納めることで得られた世界最高峰の大学の講義を、インターネット環境さえあれば誰でも受講できる、という革新的なシステムです。

2.アダプティブラーニングの実施

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アダプティブラーニングとは、学習者一人ひとりに合わせて最適化された学習内容を提供するという考え方です。

個々の学習者の過去の回答や学習履歴などのビッグデータを蓄積して分析することで、思考パターンや弱点に応じた一人ひとりに最適化された学習内容を提供していくのです。

このような考え方自体は以前からありましたが、これまでは学力に基づいて成績別にクラス分けをするなど限定的な取り組みしかできませんでした。

しかし、ビッグデータを活用するテクノロジーの発展により、各人に最適な学習内容を提示することができるようになってきました。

大量の学習データに対してAI(人工知能)による解析を行い、学習者それぞれの学習効果を最大限に高めるための学習内容を導き出すことができるようになってきています。

3.AIやVR・ARなどによる学習方法の進化

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アダプティブラーニングで活用されるAIだけではなく、VRやARも新しい学習方法を可能にするテクノロジーとして期待されています。

VRとはVirtual Reality(バーチャル・リアリティ)の略で仮想現実を指し、ARは、Augmented Reality(オーグメンデッド・リアリティ)の略で拡張現実のことです。

VR技術は、臨場感のある体験や、現実世界では危険なため体験しにくいことを、仮想空間の中で疑似体験できます。近年このVR技術を様々な人材育成や学校教育に活用しようという動きが出てきています。

VRを活用した研修の例を挙げると、一部の大手建設会社では墜落・転落事故を防ぐため身の安全を確保するための研修をVRを使って実施しています。

AR技術では、カメラで写すと本来その場にない仮想物体が、まるでその場にあるかのようにディスプレイに表示できます。

建築業界では、AR技術を活用した研修も実施されており、実際にはその場にいないベテラン作業者が遠隔で経験の浅い作業者に作業方法を教える、といったことが行われています。

4.学習管理の効率化

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教育の効果を向上させるためには、従来の教育プログラムやカリキュラムをデジタル化しただけでは不十分です。

個々の学習者の学習状況を把握し、効率よく管理し運営するためには、それを可能にする仕組みやシステムが求められ、EdTechにおいても注目されています。

これらを実現できるのが、LMS(Learning Management System)と呼ばれる学習管理システムです。

LMSは、eラーニングの要となる教材の配信や成績などを統合して管理するシステムで、オンラインで教材を配信したり、学習履歴を管理したりするためのプラットフォームです。LMSを活用することで、効率的に学習を進めることができるようになります。

5.講師や受講者のコミュニケーション促進

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最近では、講師や受講者のコミュニケーションを促進するためにSNSなどが活用されています。

学校教育向けのSNSが提供されており、授業内容の質問やディスカッションが可能になっています。また、宿題の配信や提出が簡単にでき、インタラクティブに連絡ができる機能もあります。

アカウントが先生・生徒・保護者と別々になっていることからプライバシーを考えたクローズドな運用ができ、例えば生徒の状況を閲覧権限のある先生と保護者だけが見ることができるなど、安心して利用できます。

教える側の先生のコミュニケーションの場として、先生同士がつながるSNSも活用されるようになってきました。先生同士の交流によって、個々人に蓄積された経験や知識を共有することが期待されています。

EdTechとeラーニングの違い

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EdTechが話題になる前から教育分野でITを活用していたのが、eラーニングです。

eラーニングは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを活用し、インターネットを介してオンラインで学習する方法です。いつでも、どこでも、何度でも、時間や場所にとらわれずに教育を受けることを可能にした学習スタイルと言えます。

そして、スマートフォンやタブレットが普及した今、より多くの人が学びやすい環境になったと言えます。

つまり、EdTechとeラーニングは全く違う領域の概念です。EdTechは教育領域におけるテクノロジーの概念を表し、eラーニングは学習システムのことを指しています。

次からは、EdTechが社会にどのような影響を与えるのかをみていきます。

EdTechによって社会にどういう影響を与えられるか

EdTechが社会に与える影響として、以下の3つがあります。

EdTechが社会に与える影響

  1. 教育格差の解消
  2. グローバルで活躍できる人材の育成
  3. 教育現場の改善

それでは、詳細をみていきましょう。

1.教育格差の解消

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生まれ育った環境によって受けられる教育機会が異なることがあります。例えば、経済的に豊かな人ほど良い教育を受けることができ、良い仕事に就くことができるという状況です。

しかし、EdTechが広まることで、インターネットに繋がる環境があれば、生まれた場所や経済条件に関わらず、今以上に高い教育を受けられるようになっていきます。

2012年にアメリカで始まった「MOOC(ムーク)」は、EdTechの代表格と言っても過言ではありません。

オンラインで一流大学の講義を無料で受講できること、一定の水準に達すれば修了証をもらえることなどから一気に世界的ブームとなりました。

MOOCの有名なところでは、スタンフォード大学が始めたCoursera(コーセラ)やハーバード大学・MITが始めたedX(エデックス)などがあり、これらを活用して世界中の人々が学習しています。

edXで優秀な成績を修めたモンゴルの15歳の少年が、学費免除で米マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学したという事例もあります。

世界的な一流大学の講義を無料で受講できることは、世界中の人々が高い水準の学びを得ることにつながります。

オンライン学習は、今後も教育格差の是正に貢献していくのではないかと考えられています。

2.グローバルで活躍できる人材の育成

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EdTechが社会に与える影響の2つ目は、グローバルで活躍できる人材の育成です。

EdTechの広がりが加速することで、今まで以上に学習コンテンツが流通するようになります。MOOCの例にもあるように、良いコンテンツは世界中で閲覧されます。

また、世界中の人に学習コンテンツを提供したいという場合には、画像や動画を使い言語にとらわれない表現をしたり、多言語で制作されたコンテンツを提供することが重要です。

さらに、海外の良質なコンテンツを学習し続けることが、グローバルに活躍できる人材の育成につながるかもしれません。

学習プラットフォーム上での国を超えた受講者同士のコミュニケーションも、グローバルな経験を得る大切な学習機会となります。

3.教育現場の改善

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最後に、EdTechによる教育現場の改善が期待されていることが挙げられます。

教える側の先生達がコミュニケーションの場として専用のSNSを活用して、意見交換したり教材や資料を共有したり、教育の質の向上に役立てられています。

またLMS(Learning Management System)を使えばオンライン上で教材を配布できるため、教材のアップデートも簡単に行えます。多くのLMSは受講者が学習するための機能と運営者が管理を行うための機能を備えています。

EdTechによって、運営者は、学習者それぞれの進捗状況を把握し一人ひとりに適切な指導を行うことができるため、より効率よく学習効果を高めることができるのです。

まとめ

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教育を進化させる可能性があるテクノロジー、EdTechについてご紹介しました。

EdTech(エドテック)とはEducation(教育)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、主にIT分野のテクノロジーを活用して教育をより良くしていこうという取り組みです。

EdTech関連の市場は国内外でますます拡大していくと考えられています。教育に変化が起こり、オンラインによる学習が容易になってきています。

また、アダプティブラーニングが可能となり、AIやVRなどのテクノロジーによる新しい学習方法も登場しています。

さらに、学習管理の効率化と講師や受講者のコミュニケーション促進が図られ、教育格差が解消していき、教育現場の改善も実現されていきます。

EdTechは、これからの社会をより素晴らしい未来へと導いてくれると期待されています。

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