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企業の教育研修プログラムやeラーニングなど、人材育成や人材開発を目的としたソリューションを紹介する「ラーニングイノベーション2019」が5月29日~31日、東京国際フォーラムで開かれました(主催:日本経済新聞社、日経BP)。会期中は、人材育成に関する技術やサービスなどの展示や、100を超えるセミナーが実施されました。
富士通ラーニングメディアでは、「タレントマネジメント」にフォーカスしたセミナーを開催し、多くの方にご参加いただきました。
従業員のポテンシャルを可視化、適材適所の人員配置で“働きがい”を作る
働き方改革の推進やライフワークバランスの重視など、近年、従業員の労働環境とその意識は変わりつつあります。従業員に短時間で効率よく働いてもらうために、企業は従業員一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮できる職場環境を提供する必要があります。では、そのためには何が必要なのでしょうか。5月31日、富士通ラーニングメディア ナレッジサービス事業本部 シニアディレクターの宮田 奈穂美が「エンゲージメントを高める、働き方改革と人材育成」と題して講演。「タレントマネジメント」の仕組みを活用した組織活性化の方法を紹介しました。
富士通ラーニングメディア ナレッジサービス事業本部 シニアディレクター 宮田 奈穂美
従業員の“ポテンシャル”を可視化するメリット
「タレントマネジメント」とは米国で誕生した人材戦略の考え方であり、従業員一人ひとりが持つ能力や才能、資質(=タレント)を把握し、それに基づいて最適な人事配置や人材開発を実施するというものです。日本と比べて人材流動性の高い米国では、自社に所属する従業員のタレントを把握し、それを効果的に活用することで、企業の競争力を強化しています。
富士通ラーニングメディアが提供する「人材育成コンサルティングサービス」では、タレントマネジメントの考え方をコアとして、人材戦略の立案から人材育成支援、現場での運用やプロジェクトの実践支援、人材力診断までを包括的に実施します。宮田は、「人材戦略は個々の企業によって異なります。われわれは人材の成長が組織の力になるような、計画的な人材育成サイクルの構築と運用を支援しています」と説明します。
宮田は、いま日本の人材育成スタイルが変化していることを指摘します。以前は「業務スキルと経験をベースに育成対象となる人材を集め、画一的な教育をする」手法が一般的でしたが、近年では「個人が有する能力や資質を見極めたうえで、育成/配置する」ようになってきています。
「個人の資質や才能といったタレントを正確に把握するためには、その可視化が必要です。業務を介して接するだけの上司による主観的な評価だけでは見えないものもあります。業務範囲外も含めた従業員のタレントを把握するには、人材アセスメントを実施して客観的な結果を得なければなりません。これによって、潜在的な能力が明らかになることもあります」(宮田)
人材アセスメントとは、アンケートや面接などを通じて従業員個々人のタレントを客観的に評価する作業で、人材ごとに業務スキルとタレントの関係性を分析するのに役立ちます。また、個々の職務に適した資質・特性を分析してロールモデルを定義したり、将来のリーダーになりうる候補者を選出して育成/配置したりするのに役立ちます。
富士通ラーニングメディアではストレス・資質アセスメントサービスに、株式会社サイダス(以下、サイダス)が提供するサービスを利用しています。
これは個人が内面に持っている資質を、客観的な評価によって可視化するものです。Webアンケート形式のアセスメントを行い、「性格・パーソナリティ(変動しづらい資質因子)」「基本的な職場場面での社会性(中長期で変動する社会性因子)」「意欲・やる気(短期で変動するモチベーション因子)」という3つのカテゴリで個人の特性を分析します。これにより職務適性が分析できると、宮田は説明します。
例えば、ある職種で将来必要となる人材育成・研修を計画しているとします。その場合にはまず、「業務スキル」と「職務スキル」の2軸で人材を可視化する人材ポートフォリオ分析に基づいて “ポテンシャル人材”を絞り込むことが有効です。すると、「業務力はまだ足りないが、ポテンシャルは期待できる」人材が明らかになります。こうした人材を重点的に教育することで、効果的な人材育成・研修が展開できるのです。
「もちろん、職種や役割が異なれば、必要となる資質は変化します。ですから、資質スキルともに適合していないと思われる人材は、再教育や再配置などで“ポテンシャル人材”になる職種や領域を見つけ、そこで活躍してもらうのです」(宮田)
「働きがいのある組織」は経営側が作るべきもの
セミナーではサイダスで代表取締役を務める松田晋氏も登壇し、従業員のエンゲージメント(会社に対する貢献意欲)を高める組織の作り方などを紹介しました。
株式会社サイダス 代表取締役 松田晋氏
2011年設立のサイダスは、クラウドベースの人材プラットフォーム「CYDAS HR」を提供するベンチャー企業です。松田氏は、「従業員のエンゲージメントを高めることは、企業が積極的に取り組むべき重要課題です」と力説します。
「従業員が『自分のパフォーマンスを正当に評価されていない』と感じたり、『仕事をやらされている』といった低いモチベーションを持っていたりすると、離職率がアップしたり、メンタル不調になったりしてしまいます。こうした事態を避けるためには、従業員の現状を把握し、組織が一体となれる目標を設定して『働きがいのある組織』を構築する必要があります」(松田氏)
サイダスでは人材育成や組織作りに関するさまざまなソリューションを提供しています。具体的には、社員のプロファイル(人材情報)を一元的に集約して可視化し、効率的なマネジメントを実現する「Profile Manager」、適材適所の人材配置を実現するための人材分析を行う「Performance Cloud」、社員の目標達成支援と人事考課を実施する「MBO Cloud」、外部のクラウドサービスともAPI連携する全社員参加型の人事プラットフォーム「CYDAS PEOPLE」(※2019年12月提供予定)などです。
「従業員の働きがいを生み出すのは、経営側の役目です」と松田氏は指摘します。どの企業や組織にも、現在の業務に合っていない「ミスマッチ人材」や「要改善人材」は一定数存在します。そうした人材を切り捨てるのではなく、配置を改善したり、あらためて会社の目指す方向性と理念を共有したり、コミュニケーションを密にしたりして、「コア人材」や「優秀人材」に引き上げていくことが大切です。「そのためにも、タレントの可視化と客観的な評価によるマネジメントが必要なのです」(松田氏)。
日本国内においても人材の流動性は加速しつつある中で、これからの企業にとってタレントマネジメントは必須になることは間違いありません。宮田は「従業員のタレントを把握することは、将来、経営や事業戦略を担う人材の可視化と選出にもつながるのです」と訴えました。
5月30日(木)には、「業務マニュアル作成」にフォーカスしたセミナーも開催いたしました。こちらもセミナーレポートを公開しています。関心のある方はぜひご覧ください。