2018年11月27日

コラム

  • インタビュー

藝大生から学んだこと ~いつまでいい子?~(前編)

「こどもごころ」をメインコンセプトとしたCO☆PITが2018年8月1日にリニューアルオープンした。東京藝術大学の学生たち(以下、藝大生)と当社)城能は、ブランディングプロジェクトを行っていた。大人の発想では、創造できないものを創り上げたいとの思いから、藝大生を指名したそうだ。私は、出来上がった理解不能なブランドアイテムに込められた想いとともに、城能と彼女たちに迫るためインタビューを敢行した。

そこで見えてきたのは、自分自身の在り方だった。この記事を読んでいる“大人の”あなたは何を感じるだろうか。

 

いい子になってしまった私

 

いつからだろう、自分の考えや想いを口に出すことにブレーキがかかってしまうようになったのは…

私は小学校の頃、いわゆる優等生だった。いい子であろうとした。それが少し窮屈だったのかもしれない。このまま他の人と同じように地元の中学校に通い、みんなと同じように生きていくことに強く抵抗を感じた私は、別の場所に行ってみたいと中学受験をした。

私が新しく踏み込んだ空間は、とても居心地のいいもので、一人ひとりが「自分がどう思うか」「自分がどうしたいか」を発信し、真剣にぶつけ合える場所だった。制服もなく、何もかも自由で、だからこそ逆に全部自分たちで創っていかなければならない。授業だって、先生が1から10まで教えることはなく、自分たちで問い、答えていくような毎日だった。ずっと何かを考え続けていかなければならないのは大変だった。でも毎日がとても楽しかった。

のびのびとした3年間を過ごしたあと、私は高校に進学する。中学の仲間の多くが同じ高校に進学したが、入学したときから私たちは「変な学校出身の変な人たち」というレッテルを貼られていた。そんなことを気にせず、今まで通りに過ごしていた仲間たちは、白い目で見られていく。弱い私はマイノリティになるのが怖くて、「変じゃない人たち」に同化した。

 

好きなことを好きと言い続けてきた藝大生

「世間的に藝大生って変人でとんがってるイメージですよね。でも実は内気な人が多くて高校時代まで周りに馴染めなかった人ばかりなんですよ。」

藝大生の3人はこう口々にした。話を聞いているとその意味がわかってきた。彼女たちはずっと変わらず、彼女たちであり続けた。自分の気持ちに率直に生きている。「今好きなことを、今やっています」、ただそれだけ。だからそれが出来ない「周りに同化した人」に受け入れてもらえなかった。

「藝大は浮いた者同士の集まりです。それを変わってるとせず受け入れてくれます。というかそもそも受け入れようなんて思っていなくて。一つの考え方として、自分の考えを成長させるものとして組み込んでいく。みんな尊敬しあっています。」

好きなことを好きと言い、自分が決めたことをとことん追求できる人が「変な人」とされない場所。そもそも変か変じゃないかなんて考えない。自分が自分であり続けることが当たり前の場所、そこが藝大だった。

 

CO☆PITも似た境遇を歩んでいた

 

10年前、城能の考案から共創空間CO☆PITは生まれた。大人が「こどもごころ」を思い出してチャレンジできる、新しいものを生み出せる場にしたいと。空間を創り、自らファシリテーターを務めた。

しかし、そう簡単に受け入れてもらえるものではなかった。講師がいて、受講者がいて、一方的な教育スタイルが当たり前とされた中で、教育の形を変えようとしていたことで、社内外から「浮いた存在」として扱われ、思うように協力を得られなかったことがあったと言う。

ただ、城能は奮闘し続けた。自分がいいと思ったこと、やりたいと思ったことを決して諦めることはなかった。

だから今CO☆PITは新しい空間となって、ここに存在する。

 

似たもの同士のコラボレーション

「自分の決めたことをできずに死ぬのが嫌だ。自分が決めたことをやるときのリスクを恐れない。自分が変わっていくために自分で自分の責任を引き受ける。周りからは努力と言われるかもしれないけど、自分にとっては別に努力じゃない、普通のこと。」

そう語る藝大生たちと城能を見て、私は両者に似たものを感じた。もちろん彼女たち自身も感じていたことだった。また、彼女たちが選んだ東京藝大とCO☆PITに似たものを感じると彼女たちは語り始めた。

「はじめは『富士通ラーニングメディア』という名前から、堅い雰囲気の会社だと思っていて、コラボレーションをするうえで、すごく身構えていました」、と口を揃える。会社員とのコラボレーションは比較的多いそうだが、社名が与える印象がそうさせたのだろう。

「だけど、CO☆PITに来てから自分たちの普段いる感覚に近いものを感じ取ったことで、『ちゃんとやろう』から『好き勝手に自由にやろう』という気持ちになり、気楽に自分たちの感性の赴くままに手を動かして制作活動ができました。また、それを受け入れて下さりました」

 

取材協力・デザイン

  • 東京藝術大学美術学部 デザイン科 後藤由芽さん
  • 東京藝術大学美術学部 芸術学科 近藤銀河さん
  • 東京藝術大学美術学部 芸術学科 小山このかさん

後編に続く

執筆者プロフィール

取材・文:村山由希子、撮影:高橋里衣

富士通ラーニングメディア 2018年度新入社員
SE研修、営業実習を経て、講師になるため日々勉強中。