テレワーク時のペーパーレス化を徹底解説!課題・実現方法・メリット・注意点まで詳しく紹介
2022/09/02
JILPT(労働政策研究・研修機構)の調査では、2020年4月には54.4%の企業がテレワークを導入したと回答しています。
テレワーク自体は導入されつつあるものの、テレワークにおけるペーパーレス化は進みにくい現状があります。例えば次のような声があります。
「マニュアルや資料を持ち帰ってテレワークしている」
「過去の事例など、会社にしかない資料が必要なときはテレワークできない」
「上司への書類の回付や請求書の捺印があるから、出社せざるを得ない」
そこでこの記事では、テレワークでのペーパーレス化を阻害する要因や課題、ペーパーレス化を実現する方法やメリット・注意点など、徹底的に解説します。ご参考になれば幸いです。
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テレワークでペーパーレス化を阻害する要因・課題とは
テレワークは、企業にとってはコロナ禍などの状況における従業員の安全確保や、オフィス光熱費・通勤コストの削減といったメリットがあり、従業員にも働きやすさのメリットがあるため、双方にとって継続していきたい働き方です。
しかし、先ほどご紹介した声のように、実際にはテレワークしたくてもできない場合がある、といった実態があります。テレワークにおいてペーパーレス化を阻害する要因とその解消に必要な課題を、4つご説明します。
紙への信頼感
1つ目の要因は、紙への信頼感です。
例えば、マニュアルや、報告書作成に必要なデータが記載された資料など、手元で紙をめくりながら仕事をしたいと考える人がいます。
また、万が一テレワーク環境でインターネット接続が不通だったり、パソコンの調子が悪かったりすると仕事にならないので、そういう時にもせめて別のことができるように、と安心のために多めに書類を持ち帰る人もいます。
これらのケースに共通するのは「結局は紙が一番安心」という紙への信頼感です。
この要因に対する課題は、従業員の意識改革です。紙を使う習慣を見直してもらい、仕事のスタイルを変える必要があります。
紙帳票業務の浸透
2つ目の要因は、紙帳票業務の浸透です。
例えば、顧客や取引先に送る発注書や請求書、領収書など、紙に印鑑を押すような業務であれば、紙をパソコンで作成したとしても印鑑を押す必要があるので、テレワークで完結しない業務となります。
もしくは、社内の稟議書や起案書など、上司に回付して決裁を求める書類があり、作成した後出社して印刷・回付する体制になっていると、やはりテレワークでは業務が完結しません。
コロナ禍でテレワークが普及しましたが、紙帳票での業務スタイルになっている職場ではなかなかテレワークが実現しない状況となりました。
この要因に対する課題は、紙の帳票がベースとなっている体制の見直しです。ツールやシステムを活用し、紙でなくても業務が回る体制にする必要があります。
コスト増
3つ目の要因は、コスト増です。
テレワークでのペーパーレス化を実現するには、システム予算を組んで、業務や体制の大がかりな改革をしないといけないためコストが大幅にかかると考えてしまいがちです。
ペーパーレス化をきっかけに、社内の全システムの見直しを図るなら、確かにコストが大きくなるかもしれませんが、テレワークにおけるペーパーレス化を優先して取り組むのであれば、まずは部分的にツールを利用してみる、といった方法もあります。
また、ステップを見直すだけでもペーパーレス化を実現できる場合があります。例えば「人事面談の際、面談相手の資料を全て印刷していたが、面談終了後シュレッダー作業が必要となっていた。パソコンで資料を閲覧しながら面談する体制にしたら、紙不要で面談が完結した」といった事例もあります。
この要因に対する課題は、業務の見直しとスモールスタートです。無料で使用できるツールもありますし、無料トライアルの期間で効果を確認できるツールもあります。それらで導入の効果を確認するとよいでしょう。
スキル不足
4つ目の要因は、スキル不足です。
業務に必要なパソコンやタブレットは支給されており、ペーパーレスなテレワークを実践できる環境にあるにも関わらず、それらを使いこなせていない従業員側の要因です。
例えば、チャットツールや電子契約システム、ワークフローなどツールが何種類もあり、最低限の使い方はわかるけれども応用的な使い方が覚えきれず、必要なときは別の人にやってもらっている、といった場合です。
この要因に対する課題は、ツールを整理してシンプルにすることや、ツールの使い方をしっかりとレクチャーしたりマニュアル化したりすることです。若者がSNSを使いこなすように、従業員がみなレクチャーもなくツールを使いこなせるわけではありません。
テレワークでペーパーレス化を実現する方法・8ステップ
前の章で、テレワークにおいて、ペーパーレス化を阻害する要因と、その解消のために解決すべき課題を4つご紹介しました。
それらの課題をクリアしてペーパーレス化を実現する方法を、8つのステップでご説明します。
【ステップ1】組織全体の意識改革
まず、組織全体の意識改革を行います。
ポイントは3つです。
- 目的を説明する
- 達成する方法を示す
- 目的達成によるメリットを説明する
例えば「全てのテレワークをペーパーレス化する」という目的を説明します。紙に慣れているスタイルに一定の理解を示した上で、ペーパーレス化を目指すことに意識を向けてもらいます。そして、達成するために検討している方法や、ペーパーレス化によるメリットについて丁寧に説明します。
そして、従業員だけが意識を変えても、経営層が変えていないと徹底しません。経営層から従業員まで、全社的に意識を改革していきましょう。ペーパーレス化によるメリットは、後半で7つ紹介しますので、参考にしてみてください。
【ステップ2】業務の洗い出しと整理
次に、ペーパーレス化が進まないことでテレワークが滞っている業務や紙の帳票名を洗い出します。
例えば、紙の帳票には以下のようなものがあります。
- 業務マニュアル
- 報告書作成に必要なデータが記載された資料
- 過去の事例やデータ
- 顧客や取引先に送る発注書や請求書、領収書など、印鑑を押す帳票
- 社内の稟議書や起案書など、印刷の上、上司に回付して決裁を求める書類
- 勤怠のタイムカード
顧客や取引先も、同じようにテレワークにおけるペーパーレス化を実現したい課題を持っている可能性があります。自社のお客様にアプローチしてみましょう。
そして、洗い出した業務や帳票を整理します。紙をなくすことは、情報の一覧性を重視するタイプの人にとっては全体像を把握しにくくなることにもつながるため、単に紙をスキャンしてデータ化するのではなく、情報を取捨選択し、業務を整理することも行います。
検討の結果、ペーパーレス化が難しかったり、かえってコストや手間がかかったりするものは無理せず次回への検討課題としましょう。
【ステップ3】ツールやシステムの選定
ペーパーレス化を実現するためのツールやシステムに何があるか、自社でどのようなものを採用すればよいのかを検討し、選定します。
例えば、以下のようなものがあります。
- マニュアル作成ツール
- ストレージツール
- 文書管理システム
- 電子契約システム
- 電子決裁ツール
- 営業支援ツール
- チャットツール
- ワークフローシステム
- 勤怠管理ツール
ツールやシステムを選定する際は、コストや契約期間、業者との取引関係などのほかに、以下のようなポイントを考えてみましょう。
- 自社で既に使用しているツールやシステムに機能を追加できないか
- 自社システムと親和性のあるシステムか
- 無料トライアルの期間があるか
- 自社の従業員が使いこなせそうなものか
【ステップ4】環境整備
ツールやシステムを決定したら、それらに必要となる通信環境や機器を準備し、テレワーク場所の環境整備をします。具体的には、従業員がテレワークを行う自宅などのネットワーク環境を確認したり、パソコン・タブレット・スマホなどを用意したりします。
業務内容によってはPCモニターやヘッドセット、マウスやキーボードなど、さらに周辺機器が必要となる場合もあります。
ネットワーク環境は、セキュリティの保持が重要となります。テレワークにおけるセキュリティについては、総務省のガイドラインがありますので、参考にしてください。(記事の終わりにURLを掲載しています。)
【ステップ5】スモールスタート
ペーパーレス化のためのツールやシステムを採用する場合は、まず業務を本格的に移行する前に、スモールスタートします。
全社的にスタートするのではなく、トライアルとして一部の部署に協力してもらいます。1週間、1ヵ月などとトライアル期間を決めてツールを使用したテレワークを実施します。
その後振り返りを行い、以下のポイントを確認します。
- ペーパーレス化できたか
- 業務のスタイルが変わることで、問題はあったか
- 手間やストレスなど、従業員にとって変化はあったか
ささいなことでも、全員が感じており今後業務に支障をきたす場合がありますので、遠慮なく感想を出してもらいましょう。
【ステップ6】マニュアル策定と研修
ペーパーレス化のためのツールやシステムの使い方が定まったら、マニュアルを策定し、研修を行います。
新しいツールや機能を導入する際は、これまでのツールと似た使い方であったとしても全従業員にしっかり理解してもらうために、マニュアルと研修を用意しましょう。道具は、使いこなさないと意味がありません。
マニュアルは、更新する担当部署など運用方法を決め、ツール使用中に困った場合の連絡部署も決めておきます。
研修は、例えばテレワーク時に時間を決めてオンラインで行うなどして、従業員が操作方法を理解したか確認し、わからないことをそのままにしないようにしましょう。
【ステップ7】本稼働
ペーパーレスなテレワークを本格稼働します。
最初にトライアルを行った部署から、徐々に範囲を広げていきます。ペーパーレス化は、仕事のスタイルを変える取り組みですから、従業員のポテンシャルによっては想定外の利便性が生まれるかもしれません。
そういった声や改善点を収集し、さらなる業務効率化へつなげていきましょう。
【ステップ8】マニュアルの改善
最後のステップは、マニュアルの改善です。
新しく導入したツールやシステムのマニュアルに、本稼働後に見えてきた改善点などを加えます。
また、テレワークのペーパーレス化に伴って、業務全体のマニュアルも見直しを行い、変更点を入れるなどして内容を更新します。
ちなみに、テレワークでも出社でも共通したマニュアルを使えているのであれば、テレワークのみならず職場においてもペーパーレス化が実現できたことになります。この調子で職場全体のペーパーレス化を推進していきましょう。
テレワークでのペーパーレス化を実現する7つのメリット
テレワークにおけるペーパーレス化を実現するメリットを7つご紹介します。
テレワークのペーパーレス化を推進すると、職場のペーパーレス化も進みます。この点からも、テレワークでのペーパーレス化を第一に取り組むのがおすすめなのです。
一つずつ見ていきましょう。
【メリット1】業務効率アップ
テレワークをペーパーレス化してデータ化・電子化すると、業務効率がアップするメリットがあります。
キーワードやタグなどさまざまな手段での検索性に優れ、いつでもどこからでも必要なデータにアクセスできます。会議の前に、書類を印刷して配布する手間もなくなり、膨大なデータであってもリンク先を示すだけで情報共有できます。
紙の良さ、電子情報の良さはそれぞれありますから、その比重を変えていく、と考えるとよいでしょう。
関連記事:『テレワークでも業務効率化していくコツは?効率化が難しい3つの要因と対策を解説』
【メリット2】セキュリティ強化
テレワークをペーパーレス化すると、セキュリティが強化されるメリットがあります。
紙の紛失や誤って裁断・廃棄するリスク、盗難リスクがなくなりますし、データへのアクセスを制御することで、情報流出リスクを抑えることができます。
守るべきものが1枚1枚の紙ではなく、データ保管場所となり、セキュリティを強化すべき場所が絞り込めるとさらに強力なセキュリティ対策を講じることができるようになります。
【メリット3】コスト削減
テレワークのペーパーレス化に取り組むことで、職場全体のペーパーレス化が実現し、コスト削減になるメリットがあります。
紙のある体制ですと、紙代、印刷機器代、インク・トナーなどの消耗品代、印刷機器メンテナンス費用、紙を保管するための運搬や廃棄期日管理などの人件費、保存スペースに係る費用、廃棄費用などがかかります。いつでも情報を取ることができるとわかれば「念のためコピーして持っておこう」という人も減るでしょう。
クラウドなどの、データ保存に係る費用は以前よりも下がってきていますし、何年間保存といった制限もないためより多くのデータを保存できることになりますから、総合的にみてコスト削減になります。
【メリット4】オフィススペースの有効活用
テレワークをペーパーレス化すると、オフィススペースの有効活用につながるメリットがあります。
ペーパーレス化でテレワークできる従業員が増えれば、その分座席を減らすことができますし、ペーパーレス化により書類を保管していたスペースを減らすことができます。
空いた場所は、出社した際に使えるリフレッシュのためのコーナーにして従業員の福利厚生に役立てるなど、有効活用ができます。
【メリット5】災害対策
テレワークをペーパーレス化することが災害対策につながる、というメリットがあります。
近年、世界情勢の変化や災害の頻発に備えるために事業継続計画(Business continuity planning)を策定する、という動きがあります。緊急事態に備え、事業を継続できるよう準備しておく企業は、顧客の信頼や市場からの評価をより得やすくなっています。
ペーパーレス化により社内のデータが電子化されれば、データのバックアップ体制を確立することとなります。紙の書類は火災や水害などで消失するおそれがあるものの、全ての紙のバックアップを保存するのは難しいため、ペーパーレス化は、より災害に強い体制といえます。
地震や事故で従業員が出社できない事態になることに備えるためにも、ペーパーレス化によってテレワーク可能な従業員を増やすのは効果的な施策です。
【メリット6】テレワークの加速
テレワークをペーパーレス化することでテレワークが可能な従業員が増えていき、テレワークの利用が加速するメリットがあります。
「この業務はテレワークでは無理だ」と考えていたものが「やってみたらできた」となれば、テレワークの範囲を他の部署や業務にも広げていくことができます。
テレワークに取り組む従業員が増えれば、企業のコスト削減も推進できます。前述した紙の印刷・保存・廃棄のコストの他に、大きな固定費となるオフィスの家賃や、出社する従業員が多ければ多いほどかかる光熱費や通勤費など、さまざまなコストを削減することができます。
【メリット7】場所を問わない働き方の実現
テレワークをペーパーレス化すると、テレワークを行う場所の選択肢が増え、場所を問わない働き方を実現できるメリットがあります。
書類があると、カフェなど他人の目があるような場所では社外秘の書類を見られたり置き忘れたりするおそれがあり、テレワークできなくなります。集中できる場所を選べることで、従業員がより生産性の高い時間を持てるようになります。
また、全社員をテレワーク化し、出社する際の費用を出張費とするなど、雇用の地域を拡げて人材を確保し人手不足を解消する企業も出てきています。
テレワークでのペーパーレス化の際に注意すべきこと
テレワークでペーパーレス化を実現する際に、注意すべきことは3点あります。
- ツールやシステムをよく見極める
- 必要なスキル教育を怠らない
- 一斉にスタートしない
それぞれについてご説明します。
ツールやシステムをよく見極める
ペーパーレス化のためのツールやシステムをよく見極めることです。
さまざまなツールやシステムがありますが、自社の業務に合っているものか、コストは適正か、費用対効果はどのくらいか、セキュリティやバックアップ体制はどうか、といった内容も検討します。
自社にあるシステムと似たものだったり、多機能で良さそうに見えても実際は使わない機能がほとんどだったり、といったムダがないようにしましょう。
必要なスキル教育を怠らない
ツールやシステムを導入する場合や新しい業務フローに変更する場合、新たに必要となるスキルの従業員への教育を怠らないようにします。
テレワークで多く発生する問題点が、従業員の孤立感や情報格差の発生です。ペーパーレス化によって不便が生じているのに報告しにくかったり、必要な情報が探し出せず業務に支障が出てきたりすることで、ペーパーレス化の業務体制に不信感がつのり、ひいては仕事へのモチベーションにも影響しかねません。
これまでの業務スタイルを変更するだけでも、従業員には負荷がかかります。負担感を取り除き、安心して執務してもらうために、マニュアルの整備や研修の実施をきちんと行いましょう。
一斉にスタートしない
ペーパーレス化による業務フローは、全社一斉にスタートせず、スモールスタートする方がよいでしょう。
これは、ペーパーレス化による効果があるかを確認するとともに、ツールやシステムの使い勝手を確認するためでもあります。
イレギュラーなケースではどう対応するか、想定外のトラブルはないか、導入後の業者のサポートが十分かなど確認しましょう。
まとめ
テレワークでのペーパーレス化について、妨げとなる要因や実現のための課題、実現方法やメリット、注意点などをご紹介しました。
テレワークでペーパーレス化できると、職場でのペーパーレス化も推進できます。ペーパーレスはコスト削減や情報管理の堅確化につながりますから、ぜひとも取り組みたい課題です。
ペーパーレス化は単に紙を電子データに置き換えるだけではなく、仕事のスタイルを変える取り組みですから、期待以上の効果があるかもしれません。ご自身の職場で、テレワークでのペーパーレスをどう実現するか、検討してみてください。
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関連記事:『マニュアル電子化の手順・メリット・デメリット・注意事項を詳しく解説』
(ご参考: )
総務省「テレワークセキュリティガイドライン」