取扱説明書を電子化するメリット・デメリットは?電子化を検討すべき背景と具体的な電子化方法についても解説
2023/10/27
ものづくりの国際基準であるISO/IECのガイドラインでは、かつて取扱説明書は紙媒体が前提となっていました。2012年にWeb媒体についても触れられたことで、取扱説明書のスタイルは紙版・電子版へと広がりを見せています。近年ではWebサイトで取扱い説明を行うWeb版への動きもあります。
デジタル化が進み、インターネット環境が社会に普及した今、自社製品の取扱説明書はどのようなスタイルがユーザーに最適なのかを検討する時期にあります。
この記事では、取扱説明書の電子化の背景やメリット・デメリット、電子化の方法、ツールを活用して取扱説明書の電子化・内製化に成功した事例をご紹介します。取扱説明書の電子化を検討されている製造業の方に、参考にしていただければ幸いです。
取扱説明書の電子化の背景
取扱説明書の電子化とは、PDFファイルに変換し、パソコンやスマートフォンで閲覧できる形式にすることを指しています。
冒頭でご紹介したように、製造業において品質の基準とされるISO/IECのガイドラインで、2012年の「ISO/IEC Guide37:2012」「IEC82079-1」において、製品の使用説明の媒体としてWeb媒体についても明記されました。これにより、紙版のみだった取扱説明書を電子化する動きが始まりました。
さらに近年では、コロナ禍によりオンライン化・ペーパーレス化への取り組みが進み、紙の文書への意識が変わりつつあります。検索エンジンに製品の型式を入力すればすぐ取扱説明書が閲覧できることから、ユーザーの中には、紙の取扱説明書を保管するよりもアプリやサイトを介して電子化された取扱説明書を閲覧するニーズが高まってきました。
これらの動きに後押しされ、自社のWebサイトに取扱説明書ページを設置し、直接文章や動画による取扱説明を掲載する「Web化」を実施する企業も出てきました。ただ、製品によっては型式や製造年により取扱説明書が数多く存在するため、Web化する内容は全製品共通の説明(使用上の注意やお手入れ方法など)にとどまり、紙版や電子版と併用するといった傾向が見られます。
取扱説明書は、製品の販売期間や保証期間中など、長期にわたって保管しユーザーが閲覧できる状態に保つ必要があります。Webサイトでの閲覧を維持するには、Web技術の変更や進化に遅滞なく対応し続けることが求められます。一方で、これまで紙版・電子版では表現しづらかった音や色などについて、動画を用いた説明を展開した方がよい製品であれば、Webサイトに動画があればユーザーの助けになるでしょう。
このような背景により、取扱説明書は、製品ジャンルやターゲットユーザーに応じて最適なスタイルを見極めていく時代だといえます。PL法(製造物責任法)や景品表示法なども遵守しながら、紙版のみなのか、電子版・Web版も取り入れていくのか検討が求められます。
この記事では、紙版・Web版どちらとも併用され普及している電子版について、ご説明していきます。
取扱説明書の電子化のメリット
取扱説明書を電子化し、PDFファイルで閲覧できるようにすることで、次のようなメリットがあります。
- 製品リリース直前まで更新可能
- 検索性に優れる
- 保管スペースが不要になる
- 紛失しても大丈夫
一つずつご説明します。
製品リリース直前まで更新可能
メーカーにとっては、製品リリースの直前まで、取扱説明書を更新できるメリットがあります。
紙版の取扱説明書では、取扱説明書完成後に印刷して運搬し、製品と同梱する時間が必要ですが、電子版であればこれらの時間やコストを省くことができます。
製品のリリース直前も取扱説明書作成の時間をとることができ、修正や改善が必要となればリリースに間に合わせることが可能になります。
検索性に優れる
ユーザーにとって、検索性に優れ、目的の箇所を見つけやすいメリットがあります。
紙版では、製品によってはページ数の多い取扱説明書となり、見たい箇所を探すのに時間がかかります。電子版であれば、キーワードを入力すれば見たい箇所がすぐ表示されます。複数箇所に記述が分かれていたとしても、漏れなく探し出すことができます。
メーカーにとっても、ユーザーや取引先からの問合せに際して取扱説明書を閲覧するとき、目的の箇所を見つけやすくなりますし、一覧化されて製品ラインナップの全容をつかみやすくもなります。
保管スペースが不要になる
ユーザーにとって、取扱説明書保管のスペースや手間が不要になるメリットがあります。
取扱説明書は、特殊な機器だけでなく、家具や備品などあらゆる製品に付いています。家や職場で紙版の取扱説明書を取り出しやすいように保管すると、それなりの保管スペースをとられてしまいます。電子版であれば、これらの保管スペースが不要となります。
また、製品自体を廃棄した場合は取扱説明書の保管も不要となり破棄することになりますが、そういった取扱説明書を取り出して廃棄する手間も減らすことができます。
紛失しても大丈夫
ユーザーにとって、取扱説明書を紛失してもすぐに再度閲覧できるメリットもあります。
紙版では、取扱説明書を紛失した場合、再度確認するためにはメーカーに問い合わせなくてはなりませんが、電子版であればインターネットで検索すれば閲覧できる状況となります。
たとえ紛失していなくても、インターネット環境さえあれば見たいときにいつでもどこにいても取扱説明書を見られるため、ユーザーは安心感が得られます。
取扱説明書の電子化のデメリット
取扱説明書を電子化することで、次のようなデメリットがあります。
- データ保存先の確保
- 見やすさに課題がある
- 端末がなく閲覧できない人もいる
どのようなデメリットなのか見ていきましょう。
データ保存先の確保
電子化されたデータの保存先をメーカーが新たに確保しなくてはいけないデメリットがあります。
Wordなどのデータと比較するとPDFファイルのデータ量は大きくなります。データの圧縮という方法もありますが、取扱説明書内の図や写真に影響が出る可能性があるため難しいでしょう。
大きな容量を確保できるデータ保存先確保や、さらにユーザーが常に閲覧できるよう、セキュリティ対策を講じる必要があります。
見やすさに課題がある
取扱説明書を紙版で見ていたユーザーの中には「パソコンやスマートフォンでは見にくい」と感じる人もいる、というデメリットがあります。
電子版取扱説明書は、パソコンやスマートフォンなど端末の画面から閲覧することになります。紙版であればテーブルに広げて閲覧できますが、端末では画面サイズによって見開き1ページを一覧するのは難しく、全体を一目で見たい人には適さない場合があります。また、「設定準備編」「操作編」などと複数に分かれた取扱説明書を並べて閲覧したい場合も、目の前に端末が複数ない限り難しいでしょう。
また、画面からだと内容に集中しづらい、頭に入りにくいといった人もいるかもしれません。こういった意見も配慮し、取扱説明書をできる限り見やすいレイアウトにするなどの工夫が求められます。
端末がなく閲覧できない人もいる
パソコンやスマートフォンなどの端末を持っていないユーザーが多く利用する製品の取扱説明書は、紙版を廃止し電子版のみにするのは難しい、というデメリットがあります。
閲覧できる端末を所有していないユーザーは、もし紙版がなくなり電子版のみ・Web版のみになってしまうと、取扱説明書を閲覧できなくなってしまいます。
そういったユーザーが多く利用している製品であれば、電子版に限定せず紙版の取扱説明書を用意しておく必要があります。
取扱説明書の電子化を効率的に行う方法
取扱説明書を効率的に電子化する方法について、3つご紹介します。
- アウトソーシング
- 自社でのPDFファイル化
- マニュアル作成ツール
メリットやデメリット、どのような企業に向いているかについても触れながら、わかりやすくご説明します。
アウトソーシング
外部の制作会社に電子化を委託する方法です。
マニュアル制作会社や、紙書類の電子化を専門的に行っている企業に電子化を依頼します。専門性の高いプロに依頼することで、自社の従業員の手間なく短期間で完了を見込めるでしょう。
外部に委託することで、製品リリース直前まで修正を行うのは難しい点と、自社内で作業するよりもコストが大きくかかる点があります。取扱説明書数が膨大で自社の従業員では手間がかかりそうな場合に向いている方法といえます。
自社でのPDFファイル化
自社の取扱説明書作成ソフトで、作成後にPDFファイルで出力し、電子版を作成する方法です。
PDFファイルで保存できないソフトを使用している場合は、複合機やスキャン機能のあるプリンターなどでスキャンを行い、PDF化します。
もともと紙版のために印刷会社へPDF形式で入稿していた場合は、作業負荷も変わりません。社内で行うため追加のコストをかけなくて済みますし、作成から保管までの流れがスムーズです。
ページ数が膨大な場合は時間と手間がかかるため、製品数や取扱説明書の種類がそれほど多くなく、シンプルな内容であれば向いている方法です。
マニュアル作成ツール
自社内でマニュアル作成ツールを使って電子化する方法です。
マニュアル作成ツールとは、取扱説明書や業務マニュアル、手順書などの文書を作成・公開・更新するソフトウェアです。このツールを使って取扱説明書を作成し、もしくは既存の取扱説明書をデータ取り込みして、PDFファイルで出力します。
取扱説明書のデータはセキュリティに保護されたクラウド上で管理されますので、データ保存先が確保できますし、自社で作業するため製品リリース直前まで修正を行うことが可能になります。
ツール導入の費用がかかりますから、さまざまなマニュアル作成ツールの中から機能面やコスト面で自社に最適なツールを選定できた場合に活用できる方法です。
マニュアル作成ツールを取扱説明書の電子化に活用した成功事例|i-PRO株式会社
マニュアル作成ツールを活用した例として、i-PRO株式会社の事例をご紹介します。
画像センシング事業を展開しているi-PRO株式会社では、富士通ラーニングメディアのマニュアル作成ツール「KnowledgeSh@re」を導入し、取扱説明書の電子化・内製化に成功しました。
こちらの事例について、詳しくは次の記事をご覧ください。
関連記事:『「直感的なツール」の導入で取扱説明書の内製力強化を実現!~トリセツ作成リードタイムの大幅短縮で、最新情報の提供が可能に!~【導入事例】i-PRO株式会社様』
ご参考:『i-PRO株式会社取扱説明書ダウンロードページ』
お役立ち資料:『業務マニュアルをクラウド化するメリットとは?~業務マニュアルクラウドツールをお悩みの方は必見!~』
まとめ
今回は、取扱説明書の電子化について、電子化の背景、メリットやデメリット、電子化の方法、成功事例をご説明しました。
取扱説明書の電子化によってユーザーの利便性が高まり、検索しやすく、紙版の取扱説明書を紛失してもいつでも製品情報を見ることができるようになります。また、取扱説明書はいわば製品の詳細情報ですから、例えば製品購入前のユーザーも電子版によって製品情報を得られ、細かなスペックを確認した上で購入することも可能になります。
電子化の方法について、アウトソーシング・自社でのPDFファイル化・マニュアル作成ツールの3つをご紹介しました。アウトソーシングは専門性の高いプロに依頼できる点、自社でのPDFファイル化はコストを抑えられる点がメリットです。マニュアル作成ツールは、セキュリティの整ったクラウド環境で取扱説明書を一括管理でき、修正や更新がしやすいといったメリットがあります。
ぜひ電子化に取り組み、自社に適した方法を検討してみてください。
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