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製造業のコスト削減とは?目的・コスト削減の種類・注意点について徹底解説!

製造業のコスト削減とは?目的・コスト削減の種類・注意点について徹底解説!

2023/07/10

製造業は、有形のものづくりを行っていることから、他業種と比較すると原価率が高く、経済産業省による2021年企業活動基本調査(2020年度実績)では製造業の原価率は80.8%となっています。そのためコスト意識を高く持ち、継続的にコスト削減に取り組んでいる製造業の企業は数多くあります。

この記事では、製造業におけるコスト削減について、削減の対象となるコストの種類や削減手順、具体的な削減策や削減策を行う際の注意点などを詳しく解説します。

今後コスト削減に取り組むことを考えている方や、削減しやすいコストや注意すべきポイントについて知りたい方に、参考にしていただけたら幸いです。

製造業におけるコスト削減とは?

製造業では、原材料の仕入れや仕掛品の保管、製品の運搬、機器や設備、工場の土地など、製品の製造において多くの種類のコストがかかっています。さらに、販売のためのコストや事業存続のためのコストが加わりますから、コストに対して常に意識を向けることが必要です。

また、コスト削減は、コストを減らすと同時に、ムダな業務や単純作業の低減など従業員のモチベーション向上にもつながる前向きな取り組みでもあります。ムダなものは減らしつつ、必要な投資を守り、バランスをとりながら継続的にコスト削減に取り組むのが製造業におけるコスト削減です。

製造業におけるコスト削減の目的

コスト削減の目的には、主に生産性の向上や経営の安定化が挙げられます。

一番の目的は生産性の向上です。少ないコストで大きな利益を挙げるためには、コストを削減しつつ生産物が増やせたり品質が高まったりするような取り組みがあればベストといえます。

二番目の目的は経営の安定化です。製造業はサプライチェーンの中にあり、原材料調達の工程は世界情勢や環境問題など、他からの影響を受けやすい状況にあります。また製造には何らかのエネルギーが不可欠であり、エネルギーコストが今後も上昇傾向にある場合は、たとえ業績が好調であっても継続的なコスト削減に取り組むことが求められます。

他の目的としては、「研究開発を強化する」「DXに取り組み企業体質を変革する」などの目的でコスト削減に取り組んでいる企業もあります。

製造業におけるコストの種類

製造業におけるコストは、大きく分けて製造原価販売費及び一般管理費(以下、販管費)の2種類です。おおまかにいうと、製造原価が製品を作るためのコストであり、販管費が会社を存続させ、製品を売るためのコストといえます。

<製造原価>
以下の3種類であり、製品との関連性によって直接・間接の別があります。

  • 材料費(製品製造に関わる材料や部品)
  • 労務費(製品製造に関わる従業員の賃金)
  • 経費(工場の賃貸料、減価償却費、水道光熱費、外注加工費など)

<販管費>
製品の製造工程に直接関わらない分野の費用です。
役員報酬、賃金、福利厚生費、広告宣伝費、旅費交通費、通信費、研究開発費、賃貸料、水道光熱費、減価償却費、事務用品費、消耗品費、租税公課など

製造業において削減しやすいコスト・しづらいコスト

先ほどご紹介した製造業のコストの中で、削減しやすいコスト・削減しづらいコストにはどのようなものがあるか、ご説明します。

削減しやすいコスト

製造業において削減しやすいコスト・しづらいコスト

すぐ削減しやすいコストは、利益を生み出す活動に大きく影響しないコストです。製造原価よりは、どちらかといえば販管費の項目が挙げられます。

販管費の中で、節約を呼びかけやすいのは事務用品費や消耗品費、事務所の水道光熱費です。広告宣伝費や旅費交通費など、営業や販売促進ための費用は重要ですが、広告出稿先の変更や営業手法の工夫によって削減を目指せます。

また、製造原価・販管費にまたがる部分では、従業員の福利厚生費の中で、モチベーションの維持に大きく関わらないものや活用されていない制度などを見直すことですぐ削減できるものがあるかもしれません。

製造原価の外注加工費は、費用対効果を見直します。効果があるならば存続し、効果が薄いようであれば外注先の変更や内製化を検討するなど、見直しが可能な部分です。

削減しづらいコスト

製造業において削減しやすいコスト・しづらいコスト

すぐには削減しにくいコストは製品の品質に大きく影響するコストであり、製造原価の項目が挙げられます。

材料費だけ・労務費だけの見直しよりも、例えば新製法を試すことで材料費と労務費が同時に削減でき、かつ顧客の需要にもマッチするといった、範囲の広いコスト削減に取り組むと削減効果が大きい場合があります。

また、従業員賃金の見直しや従業員数の削減は、人手が不要な体制を構築したり業容を縮小したりした場合など、よほどのことがない限り難しいものです。

もし労務費や販管費の従業員にかかるコストを削減対象とするならば、例えばマニュアルを整備して新人がマニュアルを見ながら作業できるようにしたり、従業員の異動や退職時の業務の引き継ぎに活用したりして、教育にかかる人件費を減らします。また、マニュアル作成ツールを活用して、マニュアルやシステム操作手順書、標準作業手順書(SOP)などの作成や更新、バージョン管理作業を時間短縮し、そのための残業代などの追加的コストを抑える、といった工夫を検討しましょう。

ここに挙げたコストについては、短期的なコスト削減は難しくとも、製造現場にマイナスの影響が出ないようやり方を工夫し、長期的なコスト削減を目指すとよいでしょう。

製造業のコスト削減を行う手順

製造業において、どのような手順でコスト削減を行うとよいのでしょうか。

  1. 既存コストの把握・目的の共有
  2. 改善対象の洗い出しとコスト削減策の検討
  3. 削減策の実施とマニュアル整備

3つのステップでご紹介します。

1.既存コストの把握・目的の共有

既存コストの把握・目的の共有

まず全社的な、もしくは部門横断的なプロジェクトチームを作ります。削減の範囲をこれから策定する段階では、経営層の任命によるチームを作ると望ましいでしょう。

そして、財務データや生産データなど、既存のコストを把握し、どのような目的でコスト削減に取り組み、どのような効果を得たいのかを決めていきます。

目的や方針が明確になったら、全社に向けてわかりやすく説明を行い共有します。コスト削減は少なからず現状に影響がある取り組みですから、コスト削減によって浮いた資金をどうするのかなど、取り組みの目的を従業員に理解してもらわないと、コスト削減へのモチベーションを維持しにくくなります。

コスト削減に取り組む範囲によっては、例えば「事務の担当だけが節約しなくてはいけないのか」「工場ばかり手間や負担が増えるのか」といった不公平感を持たれる可能性もありますから、一人ひとりに説明が行き届くよう心がけましょう。

2.改善対象の洗い出しとコスト削減策の検討

第二段階では、コスト削減の目的や方針に沿って、具体的な改善対象の洗い出しを行います。

いくつかの切り口をご紹介します。

<業務フローを可視化して確認する>
フローチャート図で、工程を書き出します。重複している部分があれば一つの担当にまとめられるかを検討したり、他と比べてチャート図が長い部分があれば負担が偏っていないか精査したりできます。

<7つのムダ>
トヨタ自動車の「トヨタの生産方式」における考え方の一つ、「7つのムダ」に沿ってムダの発生している部分を洗い出します。
(1)加工のムダ (2)在庫のムダ (3)不良・手直しのムダ (4)手待ちのムダ (5)造りすぎのムダ (6)動作のムダ (7)運搬のムダ

<製品の生産における16大ロス>
製造原価における材料費・労務費・経費コストの項目ごとに、以下のロスが発生しているかをチェックする方法です。
(機器・設備について)故障ロス、段取りロス、刃具交換ロス、立ち上がりロス、計画停止ロス、チョコ停空転ロス、速度低下ロス、不良手直しロス
(従業員について)管理ロス、動作ロス、編成ロス、自動化置換ロス、測定調整ロス
(原単位について)歩留まりロス、エネルギーロス、型・冶工具ロス

<システムやツールの調査>
DXにつながるシステムやツールを検索し、自社で活かせそうなツールやサービスがあるか、ツールの側から検討します。ツールによっては自社のシステムと接続できたりカスタマイズできたりしますから、今あるパッケージサービスから検討するのも一法です。

<過去10年間の費用の異動を分析>
販管費の異動を分析し、変動幅が大きければ少ない費用の年と多い年の原因を調査します。ずっと一定であればその費用による効果の有無を調査します。

改善すべき対象を洗い出せたら、それに対する削減策を検討します。削減策によって数値化できる影響と、数値化しづらい影響の両面を書き出すと、削減策による効果と負担感がつかめます。

3.削減策の実施とマニュアル整備

削減策の実施とマニュアル整備

第三段階では、削減策の実行に移ります。

以下の例のようなさまざまな削減策があります。

<例>
製造工程の見直し
サプライチェーン(仕入れ先、輸送方法など)の見直し
設備・機器の入れ替え
廃棄物の削減
整理整頓・衛生面の強化
節電・節水
水資源再利用
歩留まり改善
再生可能エネルギーへの転換
通信費の契約内容見直し
事務所の統合や移転
DXツール導入
マニュアル整備
業務のアウトソーシング

さまざまな削減策の中でも、マニュアル整備は取り組んだ方がよい削減策です。従業員教育にかかる人件費を抑える効果があるとともに、マニュアルでやるべきことを示すことで作業を標準化し、ムダな作業や属人化を防ぐ効果が得られます。また、作業品質が均一化されることで不良在庫を抑制し、業務効率化や生産性の向上につながります。

今後再びコスト削減に取り組む際に役立つ、業務についての記録ともなりますから、マニュアルは常に最新の状態に整えておきましょう。

製造業のコスト削減における3つの注意点

製造業のコスト削減における3つの注意点

製造業においてコスト削減策を検討・推進する際に気をつけたい注意点を3つご紹介します。

  • 必要な経費は削減しない
  • 長期的な目線でコスト削減を実行する
  • 厳しすぎるルール・高すぎる目標設定は控える

必要な経費は削減しない

コスト削減を意識しすぎて必要な経費を削減しないよう心がけましょう。

必要な経費は企業の状況によってさまざまですが、例えば製品の品質や生産効率、販売に直接影響するような費用が挙げられます。製品の品質を落としたりサービスが悪くなったりすると、次第に評判が下がり、製品や企業のファンが離れるおそれがあります。また、仕入れ先を急に変えたり、将来性のある事業を中断したりすると、取引先との信頼関係が二度と取り戻せなくなるケースもあります。

製品の品質や販売に直接影響するような費用を削減対象とする場合は影響を十分精査し、質の維持向上を確保しつつ部分的に変更するなど、慎重な取り組みをおすすめします。

長期的な目線でコスト削減を実行する

半年後、1年後といった短期的な目線ではなく、5年後など長期的な目線で効果を確認した上で、コスト削減を実行するとよいでしょう。

例えば、採用を控えることで一時的には人件費を減らしたように見えても、従業員の残業が増えるだけだったり、ベテラン従業員の技術を承継する相手がいなくなったりと、後から影響が出てくることもあります。

また、「初期導入費用が高い」「契約している限り月額料金がかかる」などの理由でDXにつながるツールの導入を控えてしまうケースもありますが、今後5年間で、導入した場合と導入しなかった場合のコストや効果の違いを冷静に試算するなど、長期的な目線で考えましょう。

厳しすぎるルール・高すぎる目標設定は控える

コスト削減を達成したいがための、厳しすぎるルールや高すぎる目標設定は控えましょう。

例えば、「消耗品費の申請時は使用目的を併記する」と手間のかかるルールを作ったり、「今年度は水道光熱費を半分削減する」などとノルマのような目標を立てたりすると、従業員は行動を制限されたように感じます。「経営層は厳しく取り締まるだけで、現場の状況を理解しようとしていない」といった気持ちになり、思いきった工夫やアイデアを出すなどの改善につながる行動をしなくなるおそれがあります。

また、コスト削減の手段自体が目的になってしまい、何としてでも今期中に目標を達成しようと、予定になかったコストまで手あたり次第に削減してしまうこともありえます。

納得感のある削減策であれば、従業員も賛同し、必ず好循環に向かうはずです。コスト削減が達成できたら社内の好事例として紹介し、効果を目に見える形で発信するなど、従業員のモチベーションが上がるような方法を行いましょう。

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まとめ

今回は、製造業におけるコスト削減について解説しました。

コスト削減の目的には、生産性の向上や経営の安定化などが挙げられます。コストの種類には製造原価と販管費の2種類があり、その中で削減しやすいコスト・しづらいコストをご紹介しました。

コスト削減の手順としては、コストの現状把握をして、何のためにコスト削減するのか目的を全社で共有します。そして、改善対象のコストを洗い出し、削減策を実施し、マニュアルを整備する。これが一連の流れです。

注意点としては、やみくもに削減するのではなく、別のシステムやツールに置き換えて利便性を高めつつ全体の費用を下げたり、従業員のモチベーションが上がるように工夫したりして、長期的にコスト削減を継続していけるようにしましょう。

ちなみに、マニュアル作成ツールは、マニュアルや標準作業手順書の作成のほか、製品の取扱説明書の作成も可能です。製品リリース直前まで作成でき、共通部分は一括で修正するなどの対応でリードタイムを大幅短縮でき、取扱説明書作成の外注コストを抑えつつスピーディに事業展開できます。次の参考事例をご覧ください。

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ご参考:経済産業省「2021年企業活動基本調査(2020年度実績)」(PDF)

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