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製造業のDXとは?注目される背景・メリット・課題・事例について詳しく解説!

製造業のDXとは?注目される背景・メリット・課題・事例について詳しく解説!

2023/06/06

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデータやデジタル技術を活用し、製品やサービスの品質向上や、業務プロセスの改善に役立てることです。

さまざまな業種でDXの活用が進みつつありますが、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)がまとめた「DX白書2023」によれば、製造業のDXに取り組んでいる企業の割合は20~30%にとどまっています。製造業は、業種によっては業務工程が多く複雑でデータ化が難しいことや、設備投資やIT人材育成などの面で課題があり、なかなかDXを推進しにくい状況にあります。

しかし、工程が多く複雑だからこそ、DX化に取り組むことで大きな効果を挙げられる可能性があります。そこで、この記事では、製造業においてDXが求められる理由やDXのメリット、課題や具体策などを詳しく解説します。

製造業におけるDXの具体的な推進策を知ることでDX化を前進させたいとお考えの方に、参考にしていただければ幸いです。

製造業におけるDXとは?

製造業におけるDXは、次の2つの側面があります。

  • データやデジタル技術を活用することで、製造する製品の品質向上やビジネスモデルの進化をはかり、顧客のニーズに応える
  • 製品の生産プロセスを改善し、生産体制の強化や生産性の向上を実現する

例えばDXで活用できるデジタル技術としては、IoT、クラウド、ドローン、ロボット、AIなどがあります。さらに経済産業省が官民一体となって業種横断的に活用できるデジタル基盤の構築やデータ連携を遂行することで、今までになかったサービスを生み出すことにつながります。

ビジネスモデルの向上の例では、例えば自動車産業において、クラウドのデータセンターでデータを収集・解析することで、地図データの更新やオンデマンド配車など多様なサービスを提供できるようにするなど、存在していなかったサービスを生み出し、顧客や社会の困りごとを解消できます。

業務プロセスの改善の例では、例えば生産管理システムを導入することで生産から販売まで1つのフローで管理したり、マニュアルや取扱説明書を全社共通のツールで管理することで、変更点をリアルタイムで反映させたりなど、少ない人手で従来よりも大きな成果を上げることができます。

製造業においてDXが必要になった理由

製造業においてDXが必要になった理由

製造業においてDXが求められるのは、ものづくりを行う製造業ならではの理由があります。

ものづくりではサプライチェーンにさまざまな関係者が介在することから、自社を取り巻く環境からの課題、例えば次のような課題が大きく影響します。

  • 環境問題(カーボンニュートラルやエネルギー効率、リサイクルへの対応)
  • 不安定な世界情勢、自然災害やパンデミックなどによる仕入れ状況の変化
  • デジタルディスラプター(起業当初からDXをベースに低コストで市場に参入する新設企業)の出現
  • 海外の企業との競争激化

こういった課題に立ち向かうために、海外で取り組みが進むDXを日本でも積極的に活用していく必要があります。

さらに、製造業は他業種と比較すると工程が複雑であり、高い技術力を必要とするため、従業員間のナレッジ承継に時間がかかる業種でもあります。少子高齢化が進む日本は人手不足であり、ナレッジを引き継ぎ発展させていくために、人手不足をカバーし業務プロセスを効率化するデジタル技術が求められます。

製造業におけるDXのメリット

製造業でDXに取り組むと、次のようなメリットを得ることができます。

  • 生産性向上
  • 情報の可視化
  • 顧客満足度向上

どのようなメリットなのか見ていきましょう。

生産性向上

製造業においてDXを推進すると、業務プロセスの改善につながり、それによって生産性が向上していくメリットがあります。

生産性向上は、製品を製造するために投入するコストを抑え、生産される製品の量を増やしたり質を上げたりすること。例えば材料や仕掛品を保管する倉庫で在庫管理システムを刷新したり、搬出入をロボット化したりすることで人手の必要な場面を減らす、などの取り組みがあります。

DXによって人の数を減らし、かつ稼働を一定に維持して生産の質を高めていくことで、生産性向上につながります。

情報の可視化

情報の可視化

製造業で、DXによって情報を可視化することにより、ナレッジを集約し事業の発展につなげられるメリットがあります。

例えば、自社で蓄積した生産や販売のデータをデジタル化し、数人の社員でしか共有できなかった情報をバーチャルオフィスで社内の誰もがリアルタイムに共有できる状態にします。どんなデータがどのプロセスで得られるのかを知り、技術やデータを他の工程で応用するなど、多くの人の目で検証することにつながります。

DXの体制下で新しいナレッジを創造し、さらなる事業の発展を促すことができます。

顧客満足度向上

製造業でDX化に取り組み、製品・サービスの質が高まると、顧客満足度の向上につながるメリットがあります。

例えば、衛生用品メーカーでは、紙おむつを在庫把握し自動発注するシステムを開発することで、保育園に保護者がおむつを持参しなくてはならない不便さを解消した例があります。また、産業機械メーカーでは、建設機械が故障した際にスマートフォンで撮影すると状態を診断できるアプリを開発することで、迅速な故障対応や故障データ蓄積・活用につながった例など、顧客の不便さを解消する取り組みがなされています。

DXによって顧客の不便さや困りごとを解消し、同時にデータを蓄積していくことで、今後さらに役立つ製品・サービスを開発する好循環に入り、「この企業の製品がいい」と顧客ロイヤルティを向上することにもつながっていきます。

製造業のDXにおける課題

製造業においてDXに取り組むにあたっては、次のような課題があります。

  • IT人材の採用や育成が必要
  • 設備投資できる予算の有無
  • 属人化している業務の把握

どのような課題なのか、わかりやすくご説明します。

IT人材の採用や育成が必要

製造業のDXにおける課題

DXを推進するにあたって、ITスキルやノウハウ技術を持つ人材を採用し、育成することが必要となります。

DXは日本中の企業が取り組んでいる課題であり、IT人材が社会的に不足しています。IPAの「DX白書2023」によると、DX推進人材の確保が「やや不足」「大幅に不足」と回答した日本の企業は約80%にのぼっています。この調査では、製造業の企業が回答した割合が約40%ですから、製造業だけでなく多くの業界で不足していることがわかります。

経済産業省は、各企業のDXを後押しする取り組みとして「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を制定し、AIやIoT、データサイエンスなどの高度な専門的技術を身につけた人材の育成を支援しています。こうした人材の確保に加え、社外のITコンサルタントや特定技術を有する企業と提携するなど、人材確保の方策を模索する必要があります。

まずは、自社のDX取り組みの目的や方針を明確にして、求めるDX人材の人物像を明らかにすることから始めるとよいでしょう。

設備投資できる予算の有無

DXの取り組みには、システムやツールに設備投資できる予算が求められます。

システムやツールの開発、クラウドの利用には資金が必要ですが、既存の基幹システムの更新や維持、老朽化設備の入れ替えなどに予算を振り分ける必要もあり、DXに取り組むタイミングが先延ばしになりがちです。

メリハリのある予算の使い方を検討し、経済産業省によるIT導入のための補助金の活用も視野に入れながら、自社に最も効果的なDXの取り組みを策定していきましょう。

属人化している業務の把握

属人化している業務がどれほどあるか把握し、属人化を解消していく道筋を模索する課題です。

属人化とは、ある業務が、役割のものではなく特定の個人のものとなる状態のこと。製造業の技術者は、専門的な技術であればあるほど習得に時間がかかり、他業種の業務よりも属人化しやすく、かつ属人化を解消しにくい状況にあるといえます。

高い技術やノウハウが個人の頭の中にある状況では、他の人で共有して活用することができないままとなります。属人化している業務を把握し、データ化や言語化によって共有できるナレッジへ変換していくナレッジマネジメントの観点を取り入れるとよいでしょう。

製造業のDXを進める手順

製造業のDXを進める手順

製造業において、DXを推進していく手順を、3つのステップでご紹介します。

1.現場を理解しゴールを共有する

現場の状況を理解した上で、理想の状況をイメージし、そのイメージを共有します。

DXはさまざまなレベルで取り組むことができます。1つの部署の業務効率化から、全社的な変革、さらには社会のインフラとなるような仕組みづくりまで、一口にDXといってもさまざまなものがあります。まずは自社での困りごとや、顧客から寄せられた声をもとに、理想の状況をイメージします。

例えば「重要な工程なのに人手が足りない」「他社よりスピードで負けている」「この工程を外注したい/内製したい」など、どこの課題を改善したいか、意見を出しましょう。

そしてそれを実現するシステムやツールを調査し、実現可能性を確認し、ゴールのイメージをDX推進チーム内で共有します。経営陣の任命によるプロジェクトチームなど、部門ごとの取り組みではなく全社的な、もしくは部署横断的なチームを作り、そのチームが中心となっていくとよいでしょう。

2.計画の策定

製造業のDXを進める手順

DXの対象業務や実現方法を把握した後、現在のデータを収集し、DX推進計画を策定します。

生産量、販売数、工程に携わる従業員数、作業時間、フロー、ソフトやハードなどのIT資産、顧客や取引先からのデータ、他社データなど、社内外からのデータを集めます。これらのデータと、理想とする状態や他社の状況との差分を求めると、DX化の作業ボリュームをつかむことができます。

作業ボリュームや計画推進に必要な人員、予算を割り出し、具体的なスケジュールを立てていきましょう。

3.スモールスタート

DX推進計画に沿って着手したら、「着手→効果の確認」を段階的に行い、スモールスタートします。

DXの規模によっては、従来のシステムを置き換え大規模なシステム改変となる場合もあります。大規模な取り組みであっても、小規模の範囲から着手し効果を確認した上で範囲を広げていくと、改変によるリスクを最小限におさえることができます。大規模な予算がないときにも、少しずつ成果を出して余剰分を次のIT投資に回す流れを想定しておけば、ビジネス環境において予測不能な変化があっても変化に対応しやすいでしょう。

準備段階が長期にわたるとゴールが見えにくくなり、プロジェクトの人員が入れ替わって目的が手段化するおそれもあります。小さく進めて効果を確認し、次の段階に移る。この繰り返しで推進するとよいでしょう。

製造業におけるDX推進の具体策

製造業におけるDX推進の具体策

製造業において、DXの具体策にどのようなものがあるでしょうか。

  • 業務フローの見直し
  • 業務マニュアル作成
  • 業務効率化ツールの利用
  • クラウドサービスの利用

多くの製造業企業に共通する、業務プロセス改善についての具体策を4つご紹介します。

業務フローの見直し

業務フローの見直しを行い、DXによって課題を解決できる部分の改善に取り組みます。

例えば納期遅れや特定の工程への負荷集中などの課題があれば、まず製品の製造から販売まですべての業務フローを可視化します。そして、ムリ・ムダ・ムラのある箇所をつかんでいきます。ムリのある工程はないか、ムダな作業や重複した作業がないか、ムラがあって繁閑の差が大きい業務はないか、など一つひとつ検証します。

ポイントとなるのは、細かい点まですべて可視化することです。その部署では当たり前のことであっても、そこに問いを持つことから見直しが進むこともありますから、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識しながら可視化しましょう。

業務マニュアル作成

業務マニュアルを作成し社内で共有することによって、分散しているナレッジを管理できる体制にします。

製造業では、取扱説明書や操作説明書はあっても業務マニュアルを作成していないケースもあります。業務マニュアルの作成は、作成過程で現場のナレッジを集約することにつながり、社員教育や円滑な引き継ぎなど人材育成にもつながるテーマです。

マニュアル作成ツールを活用して紙のマニュアルをタブレットやスマートフォンで閲覧できるようにすることもDXです。そして、例えば各地の工場や部署ごとに分かれていた図面制作や設計作業に関するナレッジをマニュアルで集中管理するなどで、人手の省力化やノウハウの強化を実現できます。

業務効率化ツールの利用

業務効率化ツールとは、業務の効率化に重点をおいたツールのことで、一般的には次のような種類があります。

  • 文書管理ツール
  • ナレッジマネジメントシステム
  • RPA(ロボティックプロセスオートメーション)
  • 帳票電子化ツール
  • タスク管理・プロジェクト管理ツール

製造業においては、倉庫管理システムや生産管理システム、顧客管理ツールなどの活用も有効です。自社の課題から検討する方法と、ツールで実現できる理想状態から検討する方法の両面から取り組み、DX化を加速させるのも一法です。

クラウドサービスの利用

社内問合せの削減ができていない原因

DX化を検討する際、どんなデジタル技術を使うかに主眼を置きがちですが、データやツールの保管場所についてもよく検討することが重要です。

保存場所は、自社で運用するオンプレミスか、他社が提供するクラウドを利用するかの2種類があります。オンプレミスの場合は初期費用が大きくかかり、保守や増設などのメンテナンスを自社で行います。クラウドの場合は、利用期間に応じて費用がかかり、メンテナンスはサービス提供会社が行うこととなります。

データやツールの規模、予算、保守対応の人材の有無などで検討するとよいでしょう。セキュリティがどのように守られるのかもポイントとなります。

製造業のDXの取り組み事例

最後に、製造業においてDXに取り組んだ事例を3つご紹介します。

スマートファクトリー化で最適な生産計画・人員配置を実現

製造業のDXの取り組み事例

スマートファクトリーとは、工場内の設備や機器をネットワークに接続させてデータを把握することで、情報管理や効率的な業務運営を実現した工場のことです。

大手電機メーカーでは、リードタイム短縮や多品種少量生産、過剰在庫、属人的作業などの課題解決に取り組みました。グループ各社の設計基盤センターや拠点をネットワークでつないで大きな共同基盤を構築した上で、製品製造に係るデータを収集し、製造プロセスを可視化して問題を抽出し、問題解決に最適なアクションを策定して自動的にフィードバックを行う、というサイクルをスピーディに実施。

これにより、リードタイムの短縮や在庫の削減などの課題を解消し、適切な生産計画策定や人員配置も行えるようになりました。さらに、自社で培ったデータ収集・可視化技術をサービス化し、顧客との協業にも取り組んでいます。

生産管理システム導入で不良件数削減・収益増へ

生産管理システムとは、生産計画から製造、販売、在庫管理、原価計算まで、製造業に必要な業務を一括管理するためのツールです。

金属加工を手がける企業では、資材発注におけるムダや納期遅れ、不良品率の高さが課題であり、生産管理システムを導入して課題解決に取り組みました。製造に必要な資材を見やすく管理し、製品の性質(緊急対応であるか、工程数が多いか、納期が早いか)によって優先順位を自動判定させ、前工程で不良があれば工程を進捗できないよう制御する、などの多様な機能によって、人が目の前の業務に集中できる体制を構築しました。

資材発注のムダや納期遅れ、不良件数の大幅削減につながり、収益増にも貢献しています。

現場帳票のペーパーレス化で受注処理を省力化

工場で使用される帳票をペーパーレス化することで、受注処理を省力化しミスを削減した例です。

ゴム・プラスチック製品製造を手がける企業では、顧客からの注文書や仕入れ業者からの納品伝票を手入力するため、時間がかかりミスが発生する課題がありました。OCR(Optical Character Reader)によって、顧客ごとに仕様が異なる注文書や納品伝票をデジタル上で扱える文字データに変換し、業務の自動化をサポートするRPAによって基幹システムへ取り込む体制を構築しました。

受注処理や入荷処理の省力化につながる体制を構築できたことで、さらに紙帳票での経費精算デジタル化や、ISO関連書類のバージョン管理堅確化にもDXの取り組みを広げています。

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まとめ

今回は、製造業におけるDXについて解説しました。

製造業を取り巻く課題には、環境問題への対応や世界情勢による物価の影響などさまざまであり、IT人材確保や設備投資の予算、属人化しやすい業務体制などDXへのハードルがあります。ハードルをクリアしつつ、自社の抱える問題をDXによってどう解消していくか、DXの方法や具体策、DX取り組み事例をご紹介しました。

DXは、全社的なシステム連携を構築するような大規模な取り組みや、業務効率化としての第一歩の取り組みなど、レベル感は企業によってさまざまです。まずは現場の状況を理解し、発生している問題を把握し、業務フローの点検やマニュアルの整備を行うところからスタートしましょう。業務マニュアルを整備することで、社内共通ナレッジを蓄積し、さらなる業務効率化や生産性向上に発展できる材料を把握できます。

マニュアル作成ツールは、業務マニュアルや取扱説明書、標準作業書などをクラウドで一括保存しDXを推進するツールであり、業務プロセスの効率化だけでなく、製造業で必須となる取扱説明書の制作にも活用可能です。マニュアル作成ツール(KnowledgeSh@re)の活用事例や機能はこちらから確認できます。

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ご参考:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX白書2023」

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