多言語マニュアルとは?求められる背景と作成のコツ、ツール活用のメリットを解説!
2022/08/09
近年、日本で働く外国籍の人が増え、その出身地も世界中に広がってきました。企業のダイバーシティの推進は目標ではなく前提となりつつあります。また、多くの企業がグローバル戦略を掲げ、海外市場への進出に取り組んでいます。
日本語だけでなく、多様な言語でスタッフの人材育成を行う時代ですから、さまざまな言語に対応できるマニュアルを持つことが喫緊の課題となっています。
この記事では、多言語マニュアルについて詳しく解説します。マニュアルの多言語化を考えている企業の方や、これからマニュアル作りに着手する企業の方にも、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
- <業務マニュアルクラウドツールをお悩みの方へ>
- 業務マニュアルをクラウド化することで
どのようなメリットが得られるのか、 - 『業務マニュアルをクラウド化するメリットとは?』
- ~業務マニュアルクラウドツールをお悩みの方は必見!~
- 資料ダウンロード
ご紹介しています。
多言語マニュアルとは
多言語マニュアルとは、さまざまな言語に翻訳されたマニュアルです。日本語と英語など二、三か国語にとどまらず、多くの言語に翻訳対応しているもので、60か国語ほどに対応するものもあります。
英語を理解する人の正確な数を算出するのは難しいですが、一般的には、英語を使用する人口は約13億人とされています。また、中国語(北京語)を使用する人は約11億人います。世界の人口は約78億人ですから、さまざまな国や地域でのビジネスを行うとなると、英語版や中国語版マニュアルだけがあればよいわけではなさそうです。
スタッフの出身地や、海外展開していきたい地域によっては、複数の言語をカバーするマニュアルが必要となります。
多言語マニュアルが必要な背景
企業で多言語マニュアルが必要となってきた背景には、次の2つの理由が挙げられます。
- 外国人労働者の増加とその多国籍化
- 日本企業のグローバル化
どのような背景なのか、それぞれご説明します。
外国人労働者の増加とその多国籍化
日本で働く外国人が増加し、かつ多国籍化していることが、背景にあります。
日本にいる外国人労働者数は、この10年間右肩上がりです。厚生労働省のデータ(※1)によると、2010年は在留資格外国人労働者数が約65万人でしたが、2020年には約172万人になり、国籍も増えています。
また、政府は1963年に制定された観光基本法を2006年に全面改訂し観光立国推進基本法と改め、2017年には基本計画を発表しています。観光を重要な政策と位置づけており、今後も海外の人々の行き来が盛んになる見通しです。
さまざまな国や地域に日本の魅力が伝わり、日本で働きたいと考える外国人が今後も増える可能性があります。日本語版マニュアルを理解できるまでの日本語を習得するには時間が必要なため、多言語によるマニュアルが必要となります。
日本企業のグローバル化
日本企業がグローバルサービスに積極的に乗り出していることも、背景に挙げられます。
日本の製品やサービスの品質の良さや、きめ細やかなニーズに対応できる魅力が伝わり、日本企業の海外展開が増えています。海外展開を行う日本企業は、コロナ禍を経ても海外事業の推進を経営戦略の一つとして重要な位置づけとする傾向にあります。
海外展開には、海外拠点における外国人スタッフの教育や、現地のお客様のために、多言語の操作説明や商品の取扱説明書などが必要となります。そのため、さまざまな言語のマニュアルが求められるようになりました。
多言語マニュアルを作成するコツ
現在使用している日本語版マニュアルをそのまま多言語に翻訳しようとすると、時間がかかり、費用もかかってきます。多言語マニュアルを早期に手間なく作成するには、コツがあります。
それは、日本語版のマニュアルを整理すること、グローバルなデザインにすること、マニュアル作成ツールを活用することです。これらのコツを6つのポイントにわけて、詳しく説明します。
【ポイント1】具体的かつ明確な表現にする
1つ目のポイントは、日本語版マニュアルを具体的かつ明確な表現にすることです。
なぜなら、曖昧な表現や主語がない文章、「言わずもがな」「当社の常識」といった内容が含まれる文章があるからです。そのまま翻訳しようとすると、プロの翻訳者にとっても難解な内容だったり、AIによる翻訳でも誤訳を引き起こしたりする可能性があります。
マニュアルの内容を全面的に改訂するほどの作業ではありません。曖昧な部分をはっきりさせる、表現をわかりやすくする、という視点で見直してみてください。
次のポイントを心がけてみましょう。
- 短文にする
- 主語、述語をはっきりさせる
- 5W1Hをできる限り記述する
- 曖昧な部分を具体的な数字にする(例:「夕方」→「17時」、「ある程度集まったら」→「50個集まったら」)
- 漏れなくダブりなく記述する(例:「〇〇のケース」→「〇〇があるケース、〇〇がないケース」と両方記述する)
【ポイント2】用語を統一する
2つ目のポイントは、用語を統一することです。
日本語の段階で、用語や表現が統一されていないと、日本語では似た意味に使う言葉どうしであっても、翻訳したらそれぞれが別の意味の言葉になってしまうリスクがあります。
手順のポイントとなる用語については、用語集を作り、用語や表現を定めましょう。マニュアル内で使う用語の定義がはっきりすると、日本語版マニュアルもわかりやすくなります。
ポイントとなる日本語を、外国語で併記するのもおすすめです。日本人が多言語マニュアルを見たときに何の説明のマニュアルかわかりやすくなりますし、日本語表現をそのまま覚えてもらえる効果もあります。
【ポイント3】グローバルなデザイン
3つ目のポイントは、グローバルなデザインにすることです。
グローバルなデザインとは、どの国の人にも理解してもらいやすいデザインであり、例えばイラスト、半角記号、余裕をもったレイアウトなどが挙げられます。それぞれのポイントについて、見てみましょう。
イラスト
国によって解釈がわかれる表現があります。例えば、「親指を立てたマーク」がさまざまな意味にとられたり、「チェックマーク」が「済」の意味なのか「未済(これから作業を行う)」の意味なのか迷わせたりする場合があります。
こういったものは使わないようにして、機械の絵や写真をそのまま使用する、文字で「OK」「NG」と表現する、などの工夫をしましょう。
半角記号
ダブルバイト(全角)の文字を使用しないようにしましょう。国によって使用しているOSが異なりますので、意図通りの文字に表示されない可能性があります。
余裕をもったレイアウト
日本語の漢字は、言葉の意味を表す表意文字ですが、アルファベットなどで表現される外国語の多くは表音文字であり、例えば日本語から英語にすると約20%文字が増えます。項目を詰めすぎず、1ページあたりの余白を多めにとるようにしましょう。
【ポイント4】英語マニュアルをベースにする
4つ目のポイントは、英語版のマニュアルをベースにすることです。
言語距離という言葉がありますが、これは似通った言語どうしが、どのくらい似ているかを意味しています。特にヨーロッパで使用される言語は言語距離が近く、語彙が似ています。ドイツ語、オランダ語、スウェーデン語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、チェコ語、ギリシャ語など、かなりの数に上ります。
多言語マニュアル作成において、英語版を作成しないケースはまずないでしょう。第一に英語版を作成し、英語版のマニュアルをベースに多言語化すると、翻訳がスムーズに行われるとともに、質もよくなります。
【ポイント5】公開後も改訂する
5つ目のポイントは、公開後も改訂することです。
マニュアルにおいては、マニュアルを公開した後に発生した手順の変更や、わかりにくい表現の修正など、改訂対象の箇所が発生したら定期的にマニュアルに反映させていくことが重要です。
多言語マニュアルの全てのバージョンにきちんと改訂を反映させ、「ある言語のマニュアルだけ改訂が漏れてしまった」ということのないように改訂作業を管理していく必要があります。
公開したら終わりではなく、公開後も改訂し常に最新の状態にしておくと、形骸化せずスタッフに長く活用されるマニュアルとなります。
【ポイント6】ツールを活用する
6つ目のポイントは、マニュアル作成ツールを活用することです。
マニュアル作成ツールとは、マニュアルの作成から共有・公開まで1つのツールで行えるものであり、オンラインツールですので、スタッフは世界のどの場所からでも閲覧できます。
マニュアルに必要な章立てがテンプレート化されており、WordやExcelのデータを取り込んだり、写真や動画を挿入できたりします。また、多言語翻訳機能や、改訂のためのコメント入力機能、マニュアル作成者・承認者の権限管理機能などもあるため、多言語マニュアルの作成や運用、改訂作業をサポートしてくれます。
マニュアル作成ツールを活用するメリットについて、次の章でご説明します。
多言語マニュアル作成にツールを使うメリット
【ポイント6】で、マニュアル作成ツールについて触れました。多言語マニュアルの作成にどのようなメリットがあるのか、主なメリットを4つご紹介します。
【メリット1】自社で内製化できる
マニュアル作成から翻訳までの工程を、自社で内製化できるメリットです。
近年は、さまざまなマニュアル作成ツールが開発されています。「多言語対応」「翻訳機能」といった特徴のあるツールを選んで使用すると、マニュアルの作成から翻訳まで自社内で行うことができます。
内製化できると、多言語マニュアルの公開が早期化し、翻訳を外部業者に委託する必要がなくなり、全体としてコストを抑えられます。
【メリット2】多言語翻訳機能
多言語翻訳機能によって、幅広い言語に対応できるメリットです。
自動翻訳する機能があるツールでは、日本語から英語だけでなく、複数の言語に対応しており、60~100ほどの言語に対応するものもあります。
また、原文とする言語を自由に選択できるツールもあります。このような機能を使うと、多言語マニュアルを作成する【ポイント4】の「英語マニュアルをベースにする」で述べたように、英語を原文言語に指定することで英語版のマニュアルをベースにできます。
【メリット3】電子化・紙両方に対応
電子版マニュアルと紙版マニュアルを、同時に完成させ配信できるメリットです。
1つのマニュアル作成ツール上で、さまざまな種類のマニュアル(作業手順書、チェックリスト、製品の取扱説明書など)を取り扱うことができますし、ツール上でマニュアルが完成すると、Webサイトに掲載する電子版マニュアルと紙版マニュアルを同時に完成させることができます。
例えば、国内の工場では紙版マニュアルを使用し、海外の工場では電子版マニュアルを使用するなど、場所によって出力方法が違っても内容は同期されることになります。特に製造業においては、製品の取扱説明書について、電子版と紙版を同時に配信できると、製品のリリースを早期化できるメリットがあります。
【メリット4】改訂作業が楽になる
改訂作業が楽になるメリットです。
マニュアル作成ツールで、作成から多言語への翻訳まで管理できていると、マニュアルの改訂を行えば多言語版も自動的に修正され、改訂のたびに翻訳対応を行わなくてよくなります。
また、希望する言語が翻訳対象になっていないマニュアル作成ツールであっても、例えば多言語ドキュメント管理の機能があれば、改訂作業が楽になります。この機能は、基本となる言語のマニュアルを改訂すると他の言語のマニュアルの該当箇所にフラグを立てるものです。この機能があれば、修正箇所の指定が容易になり、翻訳にかかる工数が削減できます。
まとめ
日本の企業で働くスタッフの国籍が多様化していることや、日本企業が海外に拠点を持つことで海外のお客様やスタッフとの関わりが増えていることなどから、マニュアルの多言語化が求められるようになってきました。
多言語マニュアルを早期に手間なく完成させ、かつ長く活用されるマニュアルにするためには、翻訳してもわかりやすい端的な内容にすることや、グローバルなデザインにすること、マニュアル作成ツールを活用することがコツです。
マニュアル作成ツールを使うと、次のようなメリットがあります。
- 自社で内製化できる
- 多言語翻訳機能がある
- 電子化・紙両方に対応できる
- 改訂作業が楽になる
時機を逃さず海外事業を展開するためにも、ツールの活用はおすすめです。どんな機能があるのか、自社に合うツールがあるか、ぜひ一度検討してみてください。
お役立ち資料:『『業務マニュアルをクラウド化するメリットとは?』~業務マニュアルクラウドツールをお悩みの方は必見!~』
富士通ラーニングメディアの「KnowledgeSh@re」
多言語マニュアル作りにもKnowledgeSh@re(ナレッジシェア)が役立ちます。どのようなツールなのか、60日間の無料体験で確認できます。
マニュアル作成・共有ツール「KnowledgeSh@re」を60日間お試しいただけます。
『KnowledgeSh@re無料トライアル』
資料はこちら
関連記事:『仕事に役立つマニュアルとは?メリット・デメリットを解説』
(※1)「厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」