Effective manual creation

効果的なマニュアル活用法

-すべてのナレッジを価値に変える-

仕事に役立つマニュアルとは?メリット・デメリットを解説

2021/10/1

あなたは、「仕事に役立つマニュアル」と聞くと、どんなマニュアルをイメージしますか?

「文章がわかりやすい」
「困ったときに読めば、ヒントをくれる」
「必要な情報が全部書いてある」

こんなイメージでしょうか。

週の半分以上が在宅勤務となり、後輩社員の横に座って指導する機会が少なくなった。そこで、マニュアルをベースに新人や後輩を指導していく方向になり、今のマニュアルを見直すことになった。どんなマニュアルを作ると、仕事に役立つだろうかと考えている。

このように「仕事に役立つマニュアルとはどんなもの?」とお考えの方に向けて、仕事にメリットをもたらしてくれるマニュアルの作り方やコツについて解説します。

関連記事:『マニュアル作成が成功する7つのコツ!実施ステップやツール選定のポイント・手順書との違いも解説

マニュアルが仕事にもたらすメリット

仕事に役立つマニュアルがあると、どんなメリットがあるでしょうか。

仕事を教える側は「一から教えなくて済む」と助かりますし、教わる側は「今から何をするのか、今後どんな作業があるのか、全体像がつかめる」と安心できます。また、職場に初めて赴任した上司は、忙しい部下の手を止めさせることなく、職場の業務内容を詳しく理解することができます。

このように、マニュアルはたくさんのメリットをもたらしてくれますが、今回は仕事を教える側から見たメリットを5つご紹介します。今は仕事を教わる側にいる方も、いずれは教える側になりますから、ぜひご覧ください。

メリット1 教える手間や時間を省ける

マニュアルがあると、仕事を教える手間や時間を省くことができます。

新任者が来たら、まずマニュアルを読んでもらい、概要や基本的な作業を理解してもらう。その後、実際に手を動かす場面でOJTを行う。このような指導ができるので、新任者を集め、研修の時間を設けてレクチャーしたり、横にずっと貼り付いて指導したりする手間や時間をかけずに済みます。

一から口頭で教える手間や時間を省くことができると、新任者は指導待ちの時間を減らすことができ、教える側は別のことに時間を使えるようになります。

メリット2 引き継ぎが楽になる

マニュアルがあると、引き継ぎが楽になります。

自分の後任者に、限られた時間内に引き継ぎをしなくてはならない場合、マニュアルをベースに引き継ぎをすれば、イレギュラーなケースや仕事をしていて得たノウハウなどの説明に時間を割くことができます。

引き継ぎがしっかりできると、忘れた頃に後任者から質問をされることもなく、次の仕事に集中できます。

メリット3 やるべきことが明確になる

マニュアルがあると、やるべきことが明確になります。

仕事をしていて、こんなことはありませんか。

  • トラブルが発生したとき、どの部署がどこまで対応するのかでもめる。
  • 新しい業務が発生したとき、とりあえずはベテラン社員が対応したけれど、今後どの課の誰がやるか、あいまいなままになる。

こういったことは、業務範囲が明確でないことから起こります。マニュアルで業務範囲を明かしておけば、自分の部署のやるべきことが明確になります。

やるべきことが明確になると、行動しやすくなります。トラブルや新しい業務が発生したときも、マニュアルで決まっているならば自分が動かなくてはいけない、と担当者が自覚でき、迅速に対応できます

メリット4 誰がやるかがはっきりする

マニュアルがあると、誰がやるかがはっきりします。

この仕事は何の業務の担当者が行う、とわかっていれば、その担当者が不在のときでも、別の人が代わりに遂行するか取り急ぎの対応を行うなど、アクションをとることができます。「この仕事はAさんしか知らないから誰も代替できない」といった属人化を防ぐことができます。

役割分担がはっきりすると、誰がどうやっているのかよくわからない仕事がなくなり、サポートし合える空気が生まれます。自分が不在にしても大丈夫だという安心感が生まれ、休暇も取りやすくなります。

メリット5 やり方が統一できる

マニュアルがあると、仕事のやり方を統一できます。

社員それぞれのやり方が違うと、結果が同じでも、そこに至るまでのプロセスが全く違う場合があります。プロセスが違うと、必要な手続きや連絡を行っていない可能性があります。そこを確認したり、やり直したりといった無駄が生じてしまいます。

仕事のやり方が統一できると、こういった無駄な作業や、品質のばらつきを防止できます。また、やり方が統一されると「これが一番いいんだ」と自分のやり方に固執する社員がいなくなり、教えやすく教わりやすい環境になって職場の人間関係が良好になっていきます。

マニュアルが仕事にもたらすデメリット

マニュアルは、あれば何でも良い、何でも役立つというわけではありません。仕事に役立つマニュアルでないと、マニュアルの存在がかえってリスクを生み出すデメリットとなってしまう場合があります。

どのようなリスクが発生し得るかを知り、カバーする方法を考えましょう。カバーする方法は、後述する「仕事に役立つマニュアル作りのポイント」でもご紹介しますので、そちらも参考にしてみてください。

マニュアル人間を生み出すリスク

マニュアルがあると、いわゆる「マニュアル人間」が生み出されることがあります。

マニュアル人間とは、マニュアルにあることはやるけれども、マニュアルにないことに対応するのは苦手で、自分で考えて行動しようとしないタイプの人をいいます。
また、マニュアルに頼るあまり、常にマニュアルを見ながら仕事をし、仕事を覚えようとしない、言われたらやる「指示待ち人間」も登場しがちです。

このようなタイプの人が出てくると、どうなるでしょうか。
仕事は未来永劫同じではなく、時代や状況に合わせて変化していくものです。そういった変化に対応するための工夫がなされず、時代遅れになるおそれがあります。そうすると、ビジネスチャンスを逃したり、お客様を怒らせてしまったりすることにもつながりかねません。

マニュアル人間を生み出さないためには、マニュアルの書き方が重要です。
他のケースや可能性があると表現したり、複数のケースに対応できるように参考事例を入れたりするなど、マニュアルを読んだ人が頭をめぐらせるような工夫をします。

さらに、定期的にマニュアルの見直しを行うことも効果的です。実際に業務にあたっている本人からマニュアルやその業務についての意見を出してもらう機会を作り、その上でマニュアルを更新していきましょう。

指導がマニュアル頼みになるリスク

マニュアルがあると、先輩社員が指導をマニュアルに頼るリスクが出てきます。

先輩社員が「これを読んでおいて」と後輩社員にマニュアルを渡したあと、つい忙しさにかまけて必要な説明も省いてしまう、というものです。後輩社員はマニュアルを自分流に解釈し、注意しなければならないことも注意せず自己判断してしまうおそれがあります。

指導をマニュアルに丸投げすることのないよう、先輩社員に周知徹底することが大事です。
それと同時に、マニュアルの書き方を工夫しましょう。例えば「この画面以外の画面が表示された場合は、必ず他の人に確認する」と記載しておく、全てのケースは網羅していないと注意書きをする、などの方法があります。

手段を目的化するリスク

マニュアルがあると、手段を目的化する人が出てくることがあります。

マニュアルに書かれた業務を行うことはあくまで手段であり、本来の仕事の目的は、業務遂行によって組織の目標を達成することです。手段、つまり業務遂行を目的と考え、業務をこなすことに集中し、真の目的を失念する人が出てくるおそれがあります。

手段を目的化してしまう人を生み出さないためには、社内におけるその業務の立ち位置や、業務遂行の先にある目的をマニュアルに記載する工夫が必要です。
また、マニュアルの目的については、詳しくご紹介した記事がありますのでこちらも参考にしてください。
マニュアルの目的とは?すぐ出る導入効果4つと書き方のコツも解説

仕事に役立つマニュアルの作り方

次に、デメリットにならない、仕事に役立つマニュアルの作り方を見ていきましょう。

真に仕事に役立つマニュアルは、カバーする業務範囲や構成がしっかりしており、論理的なものです。
「手当たり次第に、知っている業務からマニュアルを作り始める」といった作り方では、メリットをもたらすマニュアルとはなりません。5つのステップで具体的にご説明します。

手順1 マニュアルでカバーする範囲を決定

第一に、マニュアルでカバーする業務の範囲を決めます

あなたの部署の業務を全てマニュアル化するのか、部分的にマニュアル化するのかを決めます。全社的にマニュアルを作成するのであれば、カバーする範囲を他の部署の担当者とすり合わせした上で決めます。

カバーする範囲を決めておくと、マニュアル作成にどのくらい日数がかかるか見通しが立ちますし、次の構成や執筆の段階に進んだときに、迷わずに作業を進めることができます。

注意点としては、範囲を決めるときはあまり狭くしない方が良いでしょう。なぜなら、最初は不要と思ったけれども、マニュアル作成を進めるうちに範囲に入れたい業務が出てくることがあるからです。その場合、無計画に建て増しした建物のように、レベル感が違うものが統一感なく付け足される可能性があります。
逆に、範囲に入れておいたけれど作成は後回しにする場合は、その部分の構成だけ作って「作成中」として空けておけばよいのです。

手順2 マニュアルの構成を決定

第二に、マニュアルの構成を決め、目次を作ります

構成とは、マニュアル全体の骨組みを指します。例えば第一部から第三部まで3つに分けるとして、第一部にどの業務を書く、などと決めます。
マニュアルの目次は、本の目次と同じように、一部→一章→一節といった階層にしていきます。

構成を決めておけば、抜け漏れなく、対象とする範囲を網羅することができます。また、目次を作るためにも、構成は必要です。

注意点としては、目次の見出しは、内容を書く前の段階では仮のもの、マニュアル作成者が作成中に迷わないわかりやすいものでよい、ということです。内容を書いた後に、マニュアルを読む人にとってわかりやすい言葉や表現に変更すれば大丈夫です。

手順3 内容を書く

第三に、マニュアルの内容を書きます

<書くための準備>

  • 新入社員や転入者など、誰が読むか、誰がわかるレベルで書くかを決める。
  • 業務で使用している資料やデータ、画面イメージ、帳票類など、書くときに必要な材料を用意する。
  • 正確な帳票名やシステム名、部署名を確認する。略称や通称がある場合はかっこ書きするか、マニュアル内では統一して正式名称を使うか、決めておく。

これらを見ながら、仕事の流れに沿って書いていきます。

基本的な内容を一通り書き出すことができたら、業務の社内における位置付けや、業務の意味、参考事例など、より理解が深まる情報を肉付けしていきましょう。また、業務前の準備としてすべきことをチェックリストにする、図を入れるなど、文字が多い箇所を改善します。
手順の2でおおまかに決めた見出しも、マニュアルを読む人がわかるような表現に修正しましょう。

最後に、書いた人以外の人が読み、業務内容や表示に誤りがないかを確認します。

手順4 試験的に運用

第四に、マニュアルができたら、まずは試験的に運用します

業務を始める前に、担当者にマニュアルを読んでもらいます。そしてマニュアルを見ながら業務を行ってもらいます。マニュアルに記載した業務全てについて、一通り完了するまで行いましょう。

そのあと、担当者に「内容が正確だったか」「業務に役立ったか」「気づいた点、改良すべき点はあるか」などとヒアリングします。

どの職場でもそうですが、いきなり完璧なマニュアルを作ることは不可能です。まずはいろいろな意見が寄せられます。しかしそれは、マニュアルに多くの要素を盛り込めている証拠です。むしろ、何も意見が出ないということは、抽象的な書き方をしていたり、実際はいろいろなケースがあるのに最低限のことしか記載していなかったりする可能性があります。意見の量に関わらず、試験版マニュアルを見直しましょう。

手順5 マニュアルの改善を繰り返す

最後は、修正したマニュアルを使った業務をスタートさせ、あとは定期的にマニュアルの改善を繰り返していきます

手順4で担当者から寄せられた意見や、作成者が見直して気づいた点を踏まえ、マニュアルを改善します。必ずしも、全ての意見を反映させなくてもよいのです。効果的であると思われるものを改善しましょう。その上で、マニュアルを使った業務を本格的に開始し、その後定期的にマニュアルを見直します。

定期的(年1回、半年に1回など)、また随時(業務でルール変更があった都度)に、業務の担当者にヒアリングして改良すべき点があれば変えていきます。

仕事に役立つマニュアルを作る5つのポイント

最後に、仕事に役立つマニュアル作りのポイントを5つご紹介します。

この5つのポイントを押さえることで、先ほど挙げた3つのデメリットを発生させない、長く活用されるマニュアルを作ることができます。参考にしてみてください。

ポイント1 わかりやすい文章で記述

わかりやすい文章で記述しましょう。

わかりやすい文章を書くために取り入れると良いのが、5W1Hです。
「相手(Who)・時(When)・場所(Where)・何を(What)・理由(Why)・方法(How)」

人に何かを伝え、行動してもらうための文章では、5W1Hを入れることで読み手が行動できるようになります。一つの文章に全てを入れるということではなく、一つの段落を目安に盛り込みましょう。 例えばこんな具合です。

注意点としては、一番抜けやすいのは「方法(How)」です。「確認する」「報告する」といった抽象的な言葉で記述せず、「電話連絡する」「メール送信する」と具体的に記述するよう心がけましょう。

ポイント2 仕事の全体像をつかめるよう作成

仕事の全体像をつかめるように作成しましょう。

「〇〇課の業務はこれ。これは5ステップまである。これをやればよい」という書き方では、〇〇課の業務のことしか分からない、5ステップをやることが目標だと考える社員を造成してしまいます。

この業務が社内でどんな役割を担っているのかといった前提を説明し、業務が行われると組織の目標にどう影響するのかといった効果や作用まで言及できると、デメリットで紹介した「手段を目的化する人が発生するリスク」をカバーできます。
やる気のある人は、これを読めば広い視野を持てるようになり、考えて行動できるようになります。

ポイント3 複数のケースに対応できるよう作成

複数のケースに対応できるよう作成しましょう。

業務の基本となる事項だけでなく、他の可能性もある場合はそれを盛り込みます

例えば、基本となる「A・B・Cの書類を受領する」というケースだけでなく、「Aの書類がない場合」「AとBの書類がない場合」など、発生し得るケースをできる限り記載します。加えて、過去の珍しい事例があれば記載しましょう。
そうすると、読み手が「ここではいろいろなパターンがあるのか」と想定できるようになり、デメリットで紹介した「マニュアル人間を生み出すリスク」や「指導がマニュアル頼みになるリスク」をカバーできます。

注意点としては、複数のケースを盛り込みすぎて基本事項が読み取りにくくならないようにすることです。短文で書いたり小さな囲みにしたりと、見た目を工夫しましょう。

ポイント4 視覚的にもわかりやすく作成

視覚的にも、わかりやすく作成しましょう。

商談でのプレゼンテーションで、初めて見る人が一目で内容をつかめるように資料を工夫するのと同じです。初めてマニュアルを読む人が、パッと内容をつかめるように工夫しましょう。

このように文字でつらつらと書くよりも、次のようなフローチャート図にした方がわかりやすくなる場合があります。

表や図がなく、文字だらけになりそうな場合は、見出しの色を変えたり、改行を多くして余白を入れたりするのがおすすめです。

ポイント5 トラブルなどにも対応できるよう作成

トラブルなどにも対応できるように作成しましょう。

業務の基本的な流れ以外に、過去に発生したトラブルや失敗とその対応をマニュアルに入れておきましょう。誰かのミスは、その人だけが起こすものではなく、また別の人が起こす可能性があるものです。そういう事例と、トラブルや失敗を起こさないための予防策、起こしてしまった場合の対応策などをできる限り盛り込むと、仕事に役立つマニュアルとなります。

まとめ

マニュアルが仕事にもたらすメリットやデメリット、仕事に役立つマニュアルの作り方と作る際のコツをご紹介しました。

仕事に役立つマニュアルがあれば、教える手間や時間が少なくて済む、引き継ぎが楽になる、やるべきことや役割分担、やり方が明確になる、といったメリットを実感できます。

ただし、マニュアルの内容によっては、マニュアルに頼る社員や、指導をマニュアル任せにする先輩社員、マニュアルの業務をこなすことだけに熱中してしまう社員などが出て、デメリットとなってしまいます。

このようなデメリットをなくすためには、ポイントを押さえたマニュアル作りが重要になってきます。 まず、マニュアルでカバーする業務範囲を定め、きちんと構成を決めた上でマニュアルを執筆します。そして、作成したらスモールスタートし、改善点が見つかったら反映させ、真に使いやすいマニュアルに進化させていく、というのが作り方の流れです。

ポイントとしては、5W1Hを押さえた文章で視覚的にわかりやすいマニュアルにすること、全体像をつかみやすく、複数のケースやトラブルにも対応できるよう作成することです。

マニュアルを作ることは、業務プロセスの見直しになります。「1課と2課で、作業の重複があることが判明した」「先輩の能率のよいやり方を知ることができた」など、さまざまな発見が出てきます。
業務プロセスの見直しをすると、がぜん働きやすくなります。ぜひ仕事に役立つマニュアル作りにチャレンジしてみてください。

記事一覧ページへ戻る

お問い合わせはこちらから