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ナレッジワーカーとは?言葉の定義・必要なスキル・育成するポイントについてくまなく解説!

ナレッジワーカーとは?言葉の定義・必要なスキル・育成するポイントについてくまなく解説!

2024/03/04

ナレッジワーカーという言葉をご存知でしょうか。

1990年代以降、日本で広まったナレッジマネジメント(知識経営)の考え方とともに、ナレッジワーカーの概念が普及しつつあります。

この記事では、ナレッジワーカーの定義や求められるスキル、ナレッジワーカーを育成するポイントなどについて説明します。ナレッジワーカーの定義や背景を知ることで理解が深まり、人材育成のヒントとなれば幸いです。

ナレッジワーカーの定義とは?

ナレッジワーカーとは、knowledge(知識)とworker(労働者)を組み合わせて作られた語句であり、ナレッジを取り扱い、知的生産物を生み出す労働者のことです。

ナレッジは知識や常識、認識などの意味があり、ビジネスにおける意味としては、特許を得るような専門的技術だけでなく、業務知識や過去の事例、業務の過程で得られた知見や技術など、幅広いノウハウやコツが含まれる言葉です。

経営学者・社会学者のピーター・F・ドラッカーは、1960年代の著書『断絶の時代-来たるべき知識社会の構想-』の中で、ナレッジワーカーについて「専門職や管理職、技術職」と表現しています。専門職には、エンジニア、デザイナー、教師、医師、ケースワーカーなどの名称を挙げており、筋肉(肉体)を主に使う労働者に対して、知識を主に使う労働者であると述べています。また「1975年か少なくとも80年までには、この知識労働者のグループは、アメリカの民間労働力の過半を占めることになるであろう」と予見していました。

ドラッカーの予見のように、現代の日本においても、商業やサービス業などの第三次産業、さらに近年のITやAIの技術の進化に伴う第四次産業の広がりにより、ナレッジワーカーの幅はさらに増えつつあります。

ナレッジワーカーが世間に認識されるようになった背景

ナレッジワーカーが世間に認識されるようになった背景は2つあります。それぞれについてご説明します。

VUCAに対応する必要性

ナレッジワーカーが世間に認識されるようになった背景

企業は、VUCAの時代に対応する必要性に迫られている状況にあります。

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、変化が激しく不安定な状況を表現したもので、近年ビジネス環境を評する言葉として使われるようになりました。

モノがない時代には、第一次・第二次産業が何よりも優先され、モノが行き届き市場が成熟した後は、まだ見ぬ体験や充実したサービスが求められ、第三次産業が発展しました。そして現在は不安定な世界情勢やコロナ禍など、先行きを見通しにくい不透明な状況の中、地球環境の保護や従業員の労働環境に配慮した産業のあり方が問われています。

このような状況下において企業は、変化にすぐ対応できる、柔軟性の高い組織づくりが必要となってきました。決まったことをただ実行するだけではなく、知識や経験をもとに自律的に判断・行動できるナレッジワーカーが求められています。

テクノロジーの発展

ナレッジワーカーが世間に認識されるようになった背景

テクノロジーが日々発展し、人間とロボットの果たす役割の変化や、ナレッジを従業員間で継承する手法の整備が進んでいます。

危険な肉体労働や膨大なデータの処理といった、人間が持続的に取り組むのが困難な業務を機械やロボットが担当し、人間は、ナレッジを活用し、さらにそこから新しいナレッジを創造する業務を担当するようになりました。また、ITの進化によってシステムやツールが多様化し、データの保存容量も増加したことで、業務のナレッジを蓄積し共有化しやすい仕組みができています。

このような状況から企業のナレッジに対する考え方が変わり、既存のナレッジから新たなナレッジを創造できるナレッジワーカーは、大きな価値を持つ存在として注目されています。

ナレッジワーカーの類義語・対義語

ナレッジワーカーについて理解を深めるために、類義語や対義語となる言葉の意味をご紹介します。

ナレッジワーカーの類義語ホワイトカラー

ナレッジワーカーの類義語・対義語

ナレッジワーカーに似ている言葉として、ホワイトカラーという言葉があります。

日本でホワイトカラーという言葉が使われ出したのは20世紀半ばのこと。建設業や製造業などの作業着で働くブルーカラーの労働者との対比で出現した言葉で、青い襟の作業着ではなく白い襟のワイシャツを着てデスクワークを行う、営業や事務、人事や総務などといった労働者を指す言葉です。肉体労働ではないため、業務中の怪我などは少ないものの、精神的なストレスが多いことから、精神を使う「精神労働者」だと呼ばれることもありました。

ホワイトカラーは肉体を主に提供する労働ではない点でナレッジワーカーと似ていますが、ナレッジワーカーは、知識を取り扱い、そして新しい知識を創造していく労働者すべてを指しています。したがって、ナレッジワーカーの概念の方が広く、その中にホワイトカラーが含まれると考えるとわかりやすいでしょう。

ナレッジワーカーの対義語マニュアルワーカー

ナレッジワーカーと対になる言葉として、マニュアルワーカーという言葉があります。

マニュアルワーカーとは、マニュアルの記載通りに作業を行う労働者のことを指した表現です。マニュアル通りの作業を実践した後、得られた結果をふまえてさらに効率的な手順を編み出したり、結果を分析した上で違う材料に切り替えたりするなどの「新しい知識の創造」までは行っていない点が、ナレッジワーカーとは異なります。

ナレッジワーカーとされる職場に所属する人でも、単にマニュアル通りの作業を実践する役割ならば、マニュアルワーカーといえます。ナレッジワーカーに託された使命は、今ある知識をもとに新しい知識を生み出していくことですから、継続的に知的錬磨を続けることが求められます。

ナレッジワーカーの代表的な職種

ナレッジワーカーの代表的な職種

ナレッジワーカーには、どんな職種があるのか、代表的な職種についてご紹介します。

まず、提供する商品が無形の職種です。無形の商品は法律や金融商品、市場や業務についてのアドバイスなどがあり、例えば弁護士や税理士、金融機関勤務の人、マーケター、コンサルタント、ITエンジニア、医療・福祉サービスに従事する人などが挙げられます。

次に、所属する組織が有形の商品を提供していても、ナレッジを活用し働く職種はナレッジワーカーです。例えば工場を持つ製造業であれば、本社で営業や事務、人事や総務などを担当する、従来ホワイトカラーと呼ばれる職種や、研究所や製造現場に近いところで研究や開発を行う職種などです。定型の作業を行うだけでなく、知識や経験をもとに新しい知識を発見し業務に活かしていく仕事は、ナレッジワーカーといえます。

ナレッジワーカーに求められるスキル

ナレッジワーカーに求められるスキルとは、どのようなものでしょうか。

キーワードはインプットとアウトプットです。知識を扱うナレッジワーカーには、主体的にインプットを行う能力が求められます。また、知識は無形であることから、知識について人と伝え合う際に適切なアウトプットを行う能力が求められるでしょう。

ナレッジワーカーに必要となるスキルを7つご紹介します。

情報収集力

ナレッジを仕入れる情報収集力です。

ナレッジワーカーにとってナレッジは材料であり、加工し商品化する対象です。マニュアルや職場の規則、業界のルールに沿って業務を行うだけでなく、業務の周辺情報や新しい知識、より良いコツを積極的に仕入れ、新しいナレッジを生産していく必要があります。

情報収集力を高めるには、目の前の状況を意識して観察するのがポイントです。同じ職場にいても、驚くほど情報を持っている人と、何も情報を得ていない人がいるでしょう。この差は何かというと、人脈や経験だけでなく「意識して情報を観察しているか」です。テレビやネットの情報に接する際や人と話すとき、業務に関するワードを意識していると、情報が飛び込んでくるようになります。

分析力

ナレッジワーカーに求められるスキル

収集したナレッジを分析する力です。

分析とは、物事を要素分けし、それらが何で構成されているか、どんな性質かを細かいところまで明確にする作業です。業務を遂行した結果、想定通りの成果が得られたのか、時間通りに終わらずトラブルが発生するなどマイナスになったのか、期待を上回る成果を得たのか。それぞれの成果を記録し、経緯や理由を検証する過程に粘り強く取り組むことができれば、分析力があるといえます。

分析力を高めるポイントは、基本となる「記録や分類・整理」などをおろそかにしないことと、さまざまな角度から物事を見ることです。分析に役立つフレームワークなどもありますから、それらを活用することで多角度からのアプローチができるように鍛えるとよいでしょう。

思考力

ナレッジについて思考する力です。

ナレッジワーカーが最も求められる能力であり、個人差が出る能力でもあります。得られたナレッジをもとに改善策を考えたり、複数の選択肢から最適なものを選んだり、業務に取り組む適任者を決めたりするなど、広く深い考察が求められます。

思考力を高めるには、「今やっていることの本質は何か」「目的は何か」を常につかむ習慣をつけるとよいでしょう。あれこれ思いめぐらすうちに、つい本筋から外れたり、目的ではなく手段を意識してしまったりしますから、目的を見失わないようにすることがポイントです。

発想力

ナレッジワーカーに求められるスキル

新しいナレッジを創造する種となる、発想力です。

ナレッジワーカーは、今あるナレッジをもとに、新しいナレッジを生み出すことが期待されています。例えば、事務であれば、より少人数で遂行できてミスのない手順を考案したり、商品開発の現場では、顧客の声をもとに2つの機能を1つの商品にまとめてみたりするなど、従来よりも一歩進んだナレッジを作り出します。そのためには、固定概念にとらわれない発想力が必要となります。

発想力を高めるには、目的に最短距離で到達するやり方をまず考えてみたり、従来の行動と逆の行動に置き換えてみたり、一見関係のなさそうな業務どうしをつなげてみたりと、「今誰もやっていないこと」を探るようにしてみましょう。

チャレンジ精神

新しいナレッジを実践する、チャレンジ精神です。

新しいナレッジを考案したら、それを実践してみないと次のナレッジ創造につながっていきませんから、ナレッジの実践も重要です。ナレッジワーカーは、新しいナレッジを実践しようとするチャレンジ精神も必要となります。

チャレンジ精神は、性格に基づくものではなく、誰でも持つことができます。「自分は引っ込み思案でチャレンジ精神はない」などと思い込まず、「今日は、まだ歩いたことのない道を歩いてみよう」というような気持ちで実行に移してみてください。重要なのは実行を続けることであり、小さな一歩も毎日継続して続ければ、やがて大きなイノベーションにつながります。

情報発信力

ナレッジをアウトプットして人に伝える、情報発信力です。

ナレッジは無形の情報であり、作るのに設備や手間を必要とする有形のものではありませんから、短時間で広く伝えられる性質のものです。知っているか知らないかで業務に影響が出ますから、得たナレッジをできるだけ早く、適切な関係者間で共有するための情報発信力が求められます。

情報発信力を発揮していくためには、個人の姿勢だけでなく、職場環境もポイントとなります。重要なナレッジを隠したり出し惜しみしたりすることなく伝えられる良好な人間関係や、ナレッジを発信する手段があることが前提です。

コミュニケーション能力

ナレッジワーカーに求められるスキル

ナレッジをより効果的に人に伝達し、人を動かすコミュニケーション能力です。

コミュニケーションには聞く力と伝える力があります。ナレッジワーカーの扱うナレッジは無形ですから、現物を手に取って説得することができません。ですから相手の状況を聞く力と、相手に伝えて行動してもらう力を特に必要とします。相手の状況を把握した上で、効果的な伝達方法を選択し、相手が新しいナレッジを実践できるように表現します。

コミュニケーション能力を高めるには、相手の話を先入観なく聞くことと、表現力を磨くことがポイントです。表現力は、言葉や図にしたり、やって見せたり、画像や動画にしたりするなど、自分の得意な方法を伸ばすとよいでしょう。特に相手に伝わりやすいのは比喩です。説明するとき、別の分野のことに置き換えるとわかりやすくなります。

ナレッジワーカーを育成する3つのポイント

企業において、ナレッジワーカーを育成するために留意するとよいポイントが3つあります。それぞれどのようなポイントなのか、見ていきましょう。

ナレッジを共有しやすい企業風土の醸成

ナレッジを共有しやすい企業風土を醸成します。

ナレッジの蓄積・共有を重視する方針を経営層が宣言し、ナレッジを共有しやすい風土を作っていきます。業務に追われて多忙な状況では、ナレッジの共有まで手が回らないこともありますから、トップがナレッジを共有していく姿勢を見せないと、組織に浸透しにくいものです。

さらに、ナレッジを出し惜しむことなく協力し合うような人間関係が構築できるよう、適切な人員配置を行います。ナレッジワーカーに求められるスキルはさまざまで、すべてを兼ね備えた人ばかりとは限りません。情報発信が得意な人、思考力がある人など強みがありますから、お互いが補い合い、成長していけるような配置を行いましょう。

ナレッジ共有体制の整備

ナレッジワーカーを育成する3つのポイント

ナレッジを共有しやすい体制を整備します。

ナレッジ共有の企業風土を醸成するとともに、共有の体制を整えます。ナレッジワーカーがナレッジを蓄積し、さらに新しいナレッジを生み出していくためには、効率的にナレッジを記録していけるシステムやツールが必要となります。テクノロジーの発展に伴い、多様なツールが開発されています。例えばグループウェアやマニュアル作成ツール、文書管理システム、チャットツールなどが挙げられます。

そして、ナレッジの共有意欲を高めるような体制を導入しましょう。ナレッジの蓄積や共有、新しいナレッジ創造や実践への取り組みに対する評価制度や報酬を設けるなど、ハード・ソフト両面で取り組んでいくと理想的です。

企業のスタイルに合う育成方法の実施

企業のマネジメントスタイルに合う育成方法を実施します。

トップダウン型でのマネジメントであれば、経営層が直接ナレッジワーカーの育成に取り組んでいきます。ボトムアップ型でのマネジメントでは、経営層は自律的なナレッジワーカーたちの環境を整えるなど支援に徹します。

大手企業において多く見られるミドル・アップダウン型(中間管理職やチームリーダーが小グループを管理するスタイル)では、マネージャーやチームリーダーがナレッジワーカーの育成に取り組み、経営層はマネージャーの育成とナレッジワーカーの支援に取り組みます。

マネジメントスタイルや企業規模によって最適な育成方法は異なりますが、重要なのは、一部の従業員だけをナレッジワーカーとして育成していくのではなく、ナレッジワーカーの輪を広げ、全員参加で育成していくことです。ナレッジは人と人の関わり合いによってさらに良いものになります。新入社員であっても、専門職でなくても優れたナレッジを生み出す可能性を秘めていますから、全員参加で育成していきましょう。

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まとめ

今回は、ナレッジワーカーについて、注目される背景やナレッジワーカーに似た言葉の意味、ナレッジワーカーの職種や求められるスキル、育成するためのポイントなどを解説しました。

ナレッジワーカーとはナレッジ(知識)を主に取り扱う労働者であり、弁護士やコンサルタントといった専門的な職種や、企業においては営業や事務、研究・開発職など、今あるナレッジを活用して業務を行い、さらに新しいナレッジを創造し実践していく働き方の職種を指しています。ナレッジは無形であることから、高度なインプットやアウトプットのスキルが求められます。

企業においてナレッジワーカーを育成していくには、経営層がナレッジ共有の風土を醸成し、ツールなどのハード面とナレッジ共有を評価するソフト面の体制を整備します。近年、ITの進化によって多様なツールが開発されていますが、例えばマニュアル作成ツールであれば、業務マニュアルの形態でナレッジを蓄積していくことができ、共有や新しいナレッジの書き込みも容易です。育成方法は組織のマネジメントスタイルに合うものを選び、ナレッジワーカーの活躍の場を作っていきましょう。

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参考文献:
『断絶の時代-来たるべき知識社会の構想-』(ピーター・F・ドラッカー著、林雄二郎訳 ダイヤモンド社)

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