マニュアル作成が成功する7つのコツ!実施ステップやツール選定のポイント・手順書との違いも解説
「仕事は口頭で教わるので、みんな自分の覚え書きというかマニュアルを作るんです。でも、それだと教える人独自のやり方なのか、別の先輩に聞くと違う答えが返ってくることがあるんですよ。統一されたマニュアルがあればいいのにと思うけれど、一人ではとても業務の合間には作れないので、悩んでいます」
あるとき、部下にこう相談された。
確かに、自分用のマニュアルを全員が作るようなら、社内で共通のマニュアルを用意すべきだろう。社員一人ではマニュアルは作れない。部署全体、会社全体で取り組まないといけない課題だ。
企業全体で覚え書き体制をやめ、社員のやる気が出る体制にしなくては、とマニュアル作成の構想を練り始めたが、どのように進めればよいのかと迷っている…。
このようなマニュアル作りを検討されている方のヒントとなるよう、マニュアル作成について徹底的に解説します。
マニュアル作成を成功させるための基本知識
マニュアル作成を成功させるための基本知識から解説をはじめていきます。まずは、マニュアル作成の目的とよく混同される手順書と違いについて確認していきましょう。
マニュアル作成の4つの目的
マニュアル作成には以下4つの目的があります。
- 業務効率化
- 対応品質の統一
- ノウハウの共有
- 属人化の回避
一つずつ詳しく見ていきましょう。
業務効率化
まず、マニュアルを作成する1つ目の目的は業務効率化です。
マニュアルがあれば業務にかかる時間を大きく短縮できます。業務フローや業務内容、技術的なノウハウをこれから業務に携わる従業員に周知できます。
例えば業務マニュアルを参照することで、次にどのような手順を踏めば良いのか、何に気をつけたら良いのか、わからないことは誰に聞けば良いのかなどがわかります。
多くの従業員が業務を滞りなく遂行するために、マニュアルが非常に役に立ちます。
対応品質の統一
マニュアルを作成する2つ目の目的は対応品質の統一です。
マニュアルを使えば、能力の高い人と同等の品質で全員が業務を遂行する方法を組織に浸透させることができます。
マニュアル記載の手順に忠実に従って実施することで、個々の経歴や経験値によるバラツキを防止することも可能です。
従業員の対応品質を統一することが、マニュアル作成の大きな目的です。
ノウハウの共有
マニュアルを作成する3つ目の目的はノウハウの共有です。
企業が活動を続ける中で、多くの知見が個人や部署に暗黙知として蓄積されていきます。マニュアルの作成を通じて、それらを言葉に落とし込むことでノウハウを引き出し、体系化することで組織として活用できるようになります。
従業員が抱え込んでしまったノウハウを言語化し共有するために、マニュアル作成が効果を発揮します。
属人化の回避
マニュアルを作成する4つ目の目的は属人化の回避です。
企業が事業を進める中で「この業務ができるのはこの人しかいない」「この人が一番詳しい」など専門知識と経験が高いベテラン従業員に業務を任せっきりにしてしまうケースがあります。
しかし、そういった運用をしていると、例えば特定の従業員が不在になった際、その業務を理解している従業員が他に誰もいないため、作業が滞ってしまうという問題が起きます。
マニュアルによって業務フローや手順が共有されていれば、特定の個人に頼らずに業務を遂行できるようになります。
属人化回避を目的として、マニュアルを作成することも多いと言えます。
マニュアル作成で押さえるべき手順書との3つの違い
マニュアルと手順書の違いは何でしょうか。
大きく異なる点は3つあります。要点をまとめた次の一覧表をご覧ください。
マニュアル | 手順書 | |
---|---|---|
目的 | 社員が高品質な成果を出すと共に、業務課題を達成する | 社員がみな同じ品質の結果を出す |
役割 | 手順と共に、概要、背景、理由などを説明する | 手順を具体的に説明する |
取り扱う情報量 | 多い(広範囲にわたる) | 少ない(範囲が限定的) |
それぞれの違いについて、詳しく解説していきます。
違い1 目的
まず、マニュアルと手順書では、目的が異なります。
マニュアルの目的は「社員がその業務を理解して先のことを考えながら行動し、高品質な成果を出した結果、経営目標や業務課題を達成する」ことにあります。ただ業務を行うだけでなく、質の高い仕事をしてビジネスの目標を達成することがねらいです。
一方、手順書の目的は「社員がその業務を理解でき、同じ品質で結果を出す」ことにあります。作業の安定的な完遂がねらいとなります。
違い2 役割
次に、マニュアルと手順書では、役割が異なります。
マニュアルの役割は「業務の手順と共に、概要、背景、理由などを説明する」ことにあります。具体的に社内に向け作業について説明するだけでなく、その作業の理由を知ることで、作業の前後の手続きや影響範囲について配慮しながら行動をとるよう促すものです。業務のフローをつかみ、どのようなプロセスを経るのかが理解できます。
手順書の役割は「業務の手順を説明する」ことにあります。より詳細で具体的なものであり、それを見れば誰でも同じ作業ができるものです。
マニュアルは総論と各論から成り立っているイメージであり、手順書は各論のイメージ、つまり個別の事案を述べたものです。ですから手順書はマニュアルの一部分ともいえます。
違い3 取り扱う情報量
3点目に、マニュアルと手順書では、取り扱う情報量が異なります。
マニュアルの情報量は多く、業務に関する全体のノウハウや作業方法がまとめられます。
一方、手順書の情報量は少なく、一人でもできるような小さな規模の作業について、工程や進め方をまとめるものです。
そのため、マニュアルと手順書の目次イメージはこのようになります。
小さな規模の作業を説明したものといえば、取扱説明書があります。取扱説明書は機械や備品などの「モノ」の操作方法を述べたものであり、人の動作を説明する手順書とは異なる、という特長を覚えておいてください。
関連記事:『業務の改善に役立つSOPとは?標準作業手順書の作成手順をわかりやすく解説』
マニュアルの作成手順を5つのステップで解説
次にマニュアル作成の手順について解説をしていきます。マニュアルには、以下の5つのステップがあります。
- 目的を定める
- スケジュールを決定する
- タイトルや見出しなどの全体像を考える
- ITツール・フォーマットを決める
- 書き出してみてまとめる
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 目的を定める
1つ目のステップは、目的を定めることです。
曖昧な目的のまま作るマニュアルは、何のためのマニュアルかどういうシーンで使うべきかわからなくなり、年々使われなくなります。
最初に何を目的として作るのか、どのような従業員に読んでほしいか、どのようなシーンで使われるかを具体的に考えることが大切です。
目的をしっかりと決めることで、定期的にメンテナンスも行われ、運用開始後も長く使われるマニュアルが完成します。
2. スケジュールを決定する
2つ目のステップは、スケジュールを決定することです。
リリースする納期を確認し、作成に必要な時間は全体でどれくらいか、情報整理や見出し作成、内容作成それぞれにどのくらいの時間が必要かをスケジュールに細かく落とし込んでいきます。
一度で完成するのではなく、展開してブラッシュアップすること、利用者の声を聞きながら改善を繰り返してマニュアルの完成度を高めることが大切です。
余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
3. タイトルや見出しなどの全体像を考える
3つ目のステップは、タイトルや見出しなどの全体像を考えていくことです。
マニュアルの骨組みとなる構成を最初に決めて、目次や見出しを整えていきます。
全体構成がしっかりと決まることで自然と書くべき内容が決まり、本来の作成目的と内容が一致し、書きやすい、読んでいてわかりやすいマニュアルとなります。
また、このタイミングでマニュアル作成に関わる主なメンバーに確認をすることで、手戻りを減らし、効率的にマニュアルを作成することができます。
4. ITツール・フォーマットを決める
4つ目のステップは、ITツール・フォーマットを決めることです。
マニュアル作成においては、ITツールを活用することがポイントです。特にテレワークが定着した現代にあった、マニュアル作成に特化したクラウドサービスも増えています。
マニュアル作成ツールを活用すれば、業務用のフォーマットやデザインテンプレート、目次生成機能も用意されており、構成変更も簡単にできます。
自社で共有する際のフォーマットを決めることも大事です。
例えばローカル保存可能な長く慣れ親しんでいるPDF形式や、検索性やモバイル表示やセキュリティ対策に優れているWebマニュアルなどがあります。
特に最近では、モバイルでいつでも閲覧ができるWebマニュアルの活用が増えています。
5. 書き出してまとめる
骨組みとなる構成が完成し、フォーマットも決まった後は、流れに沿って実際の手順を書き進めていきます。
書き出す際に意識したい点は以下の通りです。
- 読み手を意識すること
- 説明文をシンプルに短くすること
- 初心者にもわかりやすい表現であること
- 具体的に書きすぎない
- 文章+図表+背景など視覚的にわかりやすくすること
実際に書き出して記事をまとめること、定期的に内容が逸れていないか確認していきましょう。
マニュアル作成を成功させる7つのコツ
マニュアル作成を成功させるためには、以下7つのコツを抑えることです。
- 伝えたいことをシンプルに書く
- 初心者が理解できる表現にする
- 読み手を具体的にイメージする
- 見た目のわかりやすさにこだわる
- 運用開始後も継続して見直す
- 読み手が即実行できる内容にする
- ITツールを活用する
一つずつ詳しく見ていきましょう。
伝えたいことをシンプルに書く
1つ目のコツは、伝えたいことをシンプルに書くことです。
冗長にならないように意識をして書かないと、文章が長くなり読まれなくなってしまう可能性があります。読み手にはシンプルな内容が伝わりやすいと言えます。
書く際に特に意識したいことは、難解な言葉を使わないことです。
難しい表現は読み手にとって理解するのに時間がかかるため、読み手に合わせた分かりやすい表現を多く取り入れていきましょう。
業務に直接関わりがない第三者に内容をチェックしてもらうのもおすすめです。
良いマニュアルを作成するためには、一番伝えたいことを短いシンプルな表現で書くことが大切です。
初心者が理解できる表現をする
2つ目のコツは、初心者が読んで理解できる表現にすることです。
マニュアルを読む人は、新入社員であれベテラン社員であれ、知らないことや分からないことがあって読みますから、その業務に関して初心者であると言えます。そのような人が読んで、内容を理解できる表現を心がけることがコツです。
具体的には、次のポイントを意識してみてください。
- 5W1Hの情報をできる限り入れる。
(5W1Hとは…Whenいつ Whereどこで Whoだれが Whatなにを Whyなぜ Howどのように) - 文章の説明を補うような、画像やイラスト、動画を挿入する。
- 専門用語はできるだけ言い換える。使う場合は意味を併記するか、「用語集」としてまとめて説明する。
読み手を具体的にイメージする
3つ目のコツは、読み手を具体的にイメージすることです。
読み手を意識することで客観的な視点、伝わりやすい表現で書くことができます。
新人従業員なのか業務未経験者なのか等、誰に読んでもらうかを具体的に想定することで、マニュアルで使用する単語も変わってきます。
マニュアルの下書き原稿は完成したら実際に対象者に読んでもらってアドバイスをもらうのも良いでしょう。
良いマニュアルを作成するためには、読み手を具体的にイメージすることがとても重要です。
見た目のわかりやすさにこだわる
4つ目のコツは、見た目のわかりやすさにこだわることです。
文章の内容がわかりやすいのはもちろんですが、見た目も重要な要素です。 文章のみで構成されたものは読みにくく、読み手にストレスを与える可能性もあるからです。
デザインを工夫することで、読み手に重要な情報を視覚的に訴えることができます。例えば、文章を説明するための図や表を追加することで、実際の業務をイメージできるようになります。
またフローチャートを記載することで、全体の流れや今の位置を理解できるようになります。
わかりやすさにこだわったマニュアルは簡単に理解でき読み手の頭に入りやすく、長く使われます。
運用開始後も継続して見直す
5つ目のコツは、運用開始後も継続して見直すことです。
マニュアルは一度作ったら終わりではありません。運用開始後の継続的な見直しが大事です。マニュアルを劣化させないためにも定期的にアップデートしていきましょう。
例えば業務内容の変化・OSなどの環境の変化、組織の変化などに合わせて、内容を更新していきます。
更新時にマニュアル作成担当者が不在となるということもないように、あらかじめ役割や引き継ぎのルール決めを行っておきましょう。
読み手が即実行できる内容にする
6つ目のコツは、読み手がすぐに実行できる、行動できる内容を記載することです。
抽象的な内容だと、読み手は行動することができなくなります。
例えば「〇〇伝票を△△課に確認する」といった内容では、「その伝票がない場合は確認するのか?しなくてよいのか?」が分かりません。
具体的には、次のポイントを意識してみてください。
- 抽象的な言葉を具体的にする。
【改良前】「〇〇伝票を△△課に確認する」
【改良後】「〇〇伝票の有無を、遅くとも当日の15時までに△△課に確認し、ある場合は16時までに入力を完了させる」 - メリットや目的を、「〇〇を△△するため、~」など、ワンフレーズでもいいので記載する。
- 時系列の流れがわかるようにタイムテーブルや図表を活用する。
ITツールを活用する
7つ目のコツは、ITツールを活用することです。特に最近ではマニュアル作成に特化したクラウドサービスが選ばれています。
マニュアル作成ツールは、フォーマットやデザインパターン・装飾が充実しているため、ツールを初めて使う従業員でも品質の高いマニュアルを簡単に作ることができます。
また完了時は自動的にクラウド環境に保存されるため、わざわざ資料を共有する手間もなく、更新作業を容易に行えます。
運用面においても、ITツールは表示性・検索性・アクセス管理でとても優れています。
閲覧する端末の種類がPCやモバイルと複数あっても表示が崩れることもありません。端末に依存されずに表示可能です。
全文検索だけでなく属性を指定した検索ができるなど検索面でも非常に優れています。
また、クラウドサービスであればセキュリティ対策も最初から内包されています。自社の競争力の源泉であるノウハウを他社に流出しないためにも、セキュリティ対策の充実したサービスを選ぶことがポイントです。
関連記事:『マニュアル定着化に役立つチェックリストとは?メリット・デメリットと作成方法を解説』
マニュアル作成ツールを選ぶ3つのポイント
最後に、マニュアル作成に必須であるITツールを選ぶポイントについて以下の3点を解説します。
- 更新しやすい
- モバイルでも見やすい
- セキュリティ面でも信頼ができる
一つずつ詳しく見ていきましょう。
更新しやすい
マニュアル作成のツールを選ぶ1つ目のポイントは、更新のしやすいことです。
業務内容や組織・環境の変化に合わせて、マニュアルも更新対応が必要です。
ITツールにはマニュアル更新作業を効率的に行うための機能があります。例えば、クラウド環境に保存することで迅速な共有が可能、更新箇所や履歴を追えるなどがあります。
一人が作成して終わりではなく、更新しやすいこと、複数の人が更新することを意識してツールを選びましょう。
モバイルでも見やすい
マニュアル作成のツールを選ぶ2つ目のポイントは、モバイルでも見やすいことです。
デスク以外でも情報を確認したいなど、モバイルからマニュアルを表示することが近年増えています。
何も意識せずに運用すると、ファイルサイズが大きいPDFデータをモバイルでダウンロードすることになり、参照に時間がかかる可能性があります。
またページめくりの際にフリーズしてしまうなどの問題も生じてしまいます。
表示形式がモバイルスマートフォンに対応していないと、ページの一部が表示されないなどの不具合も起こる可能性があり、閲覧者はストレスを感じてしまいます。モバイル表示に強いITツールを使えば、表示にストレスを感じることもなります。ページをめくる操作もスムーズです。また簡単に検索できて情報を特定しやすいというメリットもあります。
マニュアル作成ツールを選ぶ際は、モバイルで表示・検索しても全く問題ないかをチェックしましょう。
セキュリティ面も信頼ができる
マニュアル作成のツールを選ぶ3つ目のポイントは、セキュリティ面で信頼できることです。マニュアルに記載される内容は企業にとっては重要なノウハウ情報です。
作成したマニュアルが不正アクセスやサイバー攻撃に対してどのような対策をしているか、データは安全なところに置かれているか、外部のネットワーク経由で閲覧しても安全かなどを確認していきましょう。
最近では、マニュアル作成ツールもクラウドサービスが多くなっています。信頼できるベンダーのクラウドサービスを選んで、自社のデータをセキュリティリスクから回避させましょう。
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まとめ
マニュアル作成の目的、作成手順、成功させるためのコツを本記事で伝えていきました。働き方の多様性が高まり、今までのようにオフィスで人に聞く機会が減った企業も増えています。
クラウドサービスを使うことで現在の働き方に適したマニュアルの作成・運営がしやすくなります。本記事で紹介したマニュアル作成ツールを選ぶポイントも参考にして、ITツールを選んでみてください。
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