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製造業のマニュアル運用を成功させる5つのポイントとは?重要性・作成の流れ・効率化の方法まで詳しく解説

製造業のマニュアル運用を成功させる5つのポイントとは?重要性・作成の流れ・効率化の方法まで詳しく解説

2023/08/04

製造業では、専門的な技術を用いて多くの工程を設計通りに遂行するなど、高度で複雑な業務が行われています。さらに、厳格な管理が必要な材料や大型重機などを扱う場合もありますから、業務においては十分な注意が必要です。そのため、製造業において、マニュアルは従業員を守り業務への理解を助ける重要な存在だといえます。

この記事では、製造業における、マニュアル作成の流れやマニュアル運用を成功させる5つのポイント、マニュアル作成を効率的に行う方法などをご紹介します。

製品の生産体制や従業員の人材育成に課題を感じている方や、マニュアル作成の流れや効率的にマニュアル作成する方法を知りたい方に、参考にしていただければ幸いです。

マニュアルが製造業にとって重要である理由

製造業において、マニュアルを活用すると次のような成果を得ることができます。

  • ミスの軽減
  • 製品の品質維持
  • 業務効率化
  • ナレッジの共有

なぜこのような成果を得られるのか、一つずつご説明します。

ミスの軽減

マニュアルを見ながら業務を行うことで、作業ミスを軽減できます。

マニュアルに沿って、手順を一つひとつ確認しながら業務を進めることで、ミスが起こりにくくなります。また、もし想定外のミスが発生すれば、マニュアルがミスの事例を記録できる場所となるため、現場に居合わせていない従業員や、新しく入った従業員も起こしやすいミスの内容を知ることができます。

人間の記憶は曖昧になることがあります。作業に慣れたベテラン従業員であっても、改めてマニュアルを見ると「この手順はここしばらくやっていない」という場合もありますから、マニュアルに人間の記憶力をサポートしてもらうとよいでしょう。

製品の品質維持

マニュアルが製造業にとって重要である理由

マニュアルに沿って指導すると、指導内容が安定してばらつきが減り、製造する製品の品質を一定レベルに維持できるようになります。

製造業において、品質維持は不良率を上げないための重要な要素です。不良率が上がると原価への影響も発生しますし、場合によっては取引先や顧客からのクレーム発生のおそれもあります。

品質維持のためには、従業員に業務の手順や背景、ミスにつながる注意点などをきちんと理解して取り組んでもらう必要があります。例えば製造時の室内気温や湿度、物質の色や温度など、細かい状況の変化を把握しながら行う難しい作業では特に、マニュアルがあれば口頭での指導よりも抜けもれなく伝達でき、製品の品質を保つことにつながります。

業務効率化

マニュアルにエラーやトラブルの対処法を記載すると、トラブル時に取るべき行動や予防のためのノウハウを伝達でき、ムダな手間や時間の発生を抑え業務効率化になります

ムダな手間や時間とは、対処法がわからず迷う時間や、間違えた作業をやり直す時間、やり方がわからなくて指導を待つ時間、口頭の指導だけでは覚えられず何度も同じことを聞く時間などが挙げられます。マニュアルに対処法が書いてあると、こうした手間や時間を減らし、効率的に生産を進行させることができます。

また、マニュアルを作成することで各担当の作業数やボリュームを可視化できるようになります。作業時間や人数にムリのある工程や、繁閑期にムラのある役割分担を見つけて是正していくと、さらなる業務効率化につながります。

ナレッジの共有

マニュアルが製造業にとって重要である理由

マニュアルは、社内ナレッジを蓄積・共有して次世代へ継承するツールとなります。

従業員が業務を行う過程で、さまざまなコツやノウハウが生まれます。例えば、作業が立て込んだ際に短時間で完了させる方法や優先順位のつけ方など、業務全体をうまく回すコツもあるでしょう。それらを誰か一人の従業員の頭の中にとどめておくのではなく、マニュアルによって従業員どうしで共有すれば、そのコツを基にさらによいやり方を模索していくことにつながります。

マニュアルは、日々生まれるノウハウを記録していく土台となり、新しい世代が新たなナレッジを追加していける場となります。

製造業におけるマニュアル作成の流れ

製造業の企業において、どのようにマニュアル作成を行うとよいのか、流れをご紹介します。

  • マニュアル作成の目的を明確にする
  • スケジュールを立てる
  • 作業工程をリストアップする
  • マニュアルの構成を作る
  • マニュアル本文をまとめる
  • 印刷・電子化を行う

1.マニュアル作成の目的を明確にする

製造業におけるマニュアル作成の流れ

マニュアルを作成することで達成したい目的を明確にします。

マニュアルによって、いま認識している組織のどんな課題を解消するのかを洗い出します。例を挙げてみましょう。

「新商品の生産ラインを早期に安定稼働化させる」
「転入者の1対1OJT指導期間を1か月から2週間に短縮し、教育コストを減らす」
「新入社員の半年間の見習い期間を3か月に短縮し、従業員の早期戦力化をはかる」
「ベテラン従業員の定年退職前にナレッジを集約し、若手従業員への技術承継を急ぐ」
「属人化している業務を役割分担し、標準化していく」

目的が明らかになると、マニュアル化対象の業務範囲や作成の優先順位、読み手、作成者、マニュアルの完成イメージ(紙面なのか、電子化するのか)などが定まります。特に、想定する読み手が誰なのか(新人か、他の業務の経験者かなど)によってマニュアルの難易度が変わってきますから、最初に目的をはっきりと定めることが大事です。

2.スケジュールを立てる

マニュアル作成のスケジュールを立案します。

マニュアル作成には時間がかかります。業務の現状について担当者からヒアリングし、文章を書き、写真やイラストなどの材料を用意し、想定する読み手にわかるような表現に手直しするなど、時間と手間が必要となります。マニュアル作成担当の従業員が業務のかたわら作成を行う場合は、残業が増えたり本業に影響が出たりしないよう、無理のないスケジュールを組むとよいでしょう。

おおまかなステップとしては、「作成→内容チェック→共有(印刷や電子化)→公開→その後の管理」となります。内容チェックを行う担当者(上司やベテラン従業員など)も決めておきましょう。

3.作業工程をリストアップする

製造業におけるマニュアル作成の流れ

マニュアルに盛り込みたい作業工程をリストアップします。

いきなり文章を書き出すと、必要な項目が抜けてしまったり、妙に詳細な箇所があったりなど、ばらつきが発生することがあります。ばらつきのないように、キーワードを書き出し、箇条書きにした上で、そこに盛り込みたい要素を肉付けしていくとよいでしょう。

4.マニュアルの構成を作る

マニュアルの基本構成に合わせて、内容の順番を調整します。

一般的なマニュアルの構成は「表紙、目次、概要や流れ(フローチャートなど)、本文、索引」となっています。すでに社内にマニュアルがある場合は、それを基本として同じ構成にそろえると迷わずに作成できますし、ない場合は一般的な構成に合わせるとよいでしょう。そして、構成に合わせてリストアップした内容の順番を調整します。例えば「作業前の準備→作業→作業後の状態」といった順番にするとわかりやすいでしょう。

ある程度の構成が決まったら、今の段階での目次を作成します。内容のキーワードをそのまま見出しにして、作成者にわかりやすい言葉で目次を作ります。内容を書き終えたあとで、読者にわかりやすい言葉に修正するとよいでしょう。

5.マニュアル本文をまとめる

製造業におけるマニュアル作成の流れ

文章を書き、必要な写真や図を用意して、マニュアルの本文をまとめます。

今回作成するマニュアルの読み手に合わせたレベルの言葉や表現を使います。例えば新人が読む想定であれば、専門用語には読み方やわかりやすい解説を記載したり、作業前に必ず行うべきことは目立つよう大きな文字にしたりすると、業務について詳しくない新人も見落としなく読めるでしょう。

写真や図のほか、イラストや表も活用し、多忙な従業員がパッと見ただけで内容をつかめるようなマニュアルにすると、現場で活用されるマニュアルになります。

6.印刷・電子化を行う

マニュアルの本文が完成し、内容チェックが終わったら、印刷や電子化作業を行います。

マニュアルを使う現場によっては、紙のマニュアルの方が見ながら作業しやすい場合もありますし、電子化してタブレットやスマートフォンで閲覧する方が作業しやすい場合もあります。次のように場合分けをしてみましょう。

・紙版…
パソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末が使えない現場端末が貸与されていない従業員向け、マニュアルの数や分量が少ない、など

・電子版…
端末が使える現場、マニュアルの内容が頻繁に変わる、マニュアルの数や分量が多くキーワード検索したい、など

今後状況が変化する可能性があるなら、紙版と電子版の両方を用意しておくとよいでしょう。

製造業のマニュアル運用を成功させる5つのポイント

作成したマニュアルを活用し、マニュアルの目的を達成していくためには、作成後も適切な運用を行うことが求められます。製造業の企業において、マニュアル運用を成功させるためのポイントを5つご説明します。

  • 注意事項・重要事項はわかりやすく記載する
  • 想定した読み手が理解しやすい表現にする
  • デザインはシンプルにする
  • 適宜改訂を行う
  • マニュアルによって課題が解決されているか確認する

【ポイント1】注意事項・重要事項はわかりやすく記載する

製造業のマニュアル運用を成功させる5つのポイント

業務において注意すべき事項や、特に重要な事項はわかりやすく記載しましょう。

製造業における製品製造のプロセスでは、怪我の危険や健康への影響の可能性があります。また、手順の順序を間違えることで、製造する製品への影響が発生するおそれもあります。注意すべき事項や重要事項については「警告」「注意」などの文字が目に入るよう工夫し、文章は一文を短く端的な表現を心がけ、注意喚起をしましょう。

こうすることで作業する従業員や製品への影響発生を抑えるとともに、マニュアルの改訂においても注意事項・重要事項を誤って削除することを防ぎます

【ポイント2】想定した読み手が理解しやすい表現にする

マニュアルの読み手となる従業員が理解しやすい表現にしましょう。

マニュアル作成の目的によって、読み手となる従業員はさまざまです。例えば、新人や他業種からの転入者が読む場合は、専門的すぎない平易な文章で書く方がわかりやすくなります。外国人従業員が読む場合は、バックグラウンドによって異なる理解をされないよう、イラストなどに注意する必要があります。専門的な技術についてのマニュアルで、読み手は業務の経験者であるならば、より高いレベルの業務を担うため、詳細な定義を記載する必要があるでしょう。

もし、さまざまな従業員が読み手となる場合は、初めてその業務に携わる人を想定して書くとよいでしょう。

【ポイント3】デザインはシンプルにする

製造業のマニュアル運用を成功させる5つのポイント

マニュアルのデザインはシンプルなものにしましょう。

シンプルなデザインだと、従業員が作業中に参照しやすくなりますし、マニュアル作成者の手間が楽になります。マニュアルは一度作成したら終わりではなく、作成後の修正や改訂作業があります。作成者が引き続き改訂していくとは限りませんから、今後関わる人のためにもデザインで手間をかけるのは控えた方が望ましいでしょう。例えば、罫線や囲みをあれこれ入れたり、文字の色を何色も使い分けてカラフルにしたりなどの凝ったデザインは、業務のためのマニュアルには不要なものです。

デザインでは、次のような工夫をしてみましょう。

  • 余白を多めにとる
  • 文字や写真の配置をそろえる
  • 文字のサイズや色を一定にする

余白を多くしたり、文字や写真の配置を整えたりすると、視認性が高く読みやすいマニュアルになります。文字の色は、注意事項は目立つ色にして、他は黒で統一してもよいでしょう。

【ポイント4】適宜改訂を行う

マニュアルは、適切なタイミングで改訂を行いましょう。

最新の内容が反映されていないと従業員はマニュアルを見なくなっていき、形骸化します。これでは作成のために投入したコストがムダになってしまいます。

一般的には、マニュアルは随時改訂・定期改訂と2種類の改訂タイミングを設けます。「随時」は業務内容や法令などの変更があったらその都度改訂するもの。「定期」は、半年ごと・一年ごとなど期日を決めて、その時点で最新の状態にするものです。仕事の繁忙期を避けて余裕のある時期に期日を決めるとよいでしょう。

また、最新版がどれなのか、バージョン管理を徹底しましょう。紙版でも電子版でもバージョン管理をきちんと行わないと、うっかり新人に古いマニュアルを手渡してしまった、などということもあり得ます。

【ポイント5】マニュアルによって課題が解決されているか確認する

マニュアル作成のときに策定した目的と現状を照らし合わせ、課題解決状況を確認しましょう。

マニュアルを作成する目的として、解決したい課題を洗い出していますが、マニュアル完成後に解決に向かっているかをチェックします。

具体的な数値が入っている目的については、現状の数値を計測し、解決状況を確認します。数値のないものについては、マニュアル作成前と比較してみて、どの程度課題を解決しているのかを把握します。もし期待したような状況ではないなら、マニュアル自体やマニュアル活用体制に問題がないか見直す必要があります。

製造業のマニュアル作成を効率化する方法

製造業の多忙な現場においてマニュアル作成を効率的に行うには、効率よく作成や管理が行えるツールを活用する方法があります。主なツールに、マニュアル作成ツールとテンプレートの2つがあります。

どのようなツールなのか、メリット・デメリットに触れながらご紹介します。

マニュアル作成ツール

製造業のマニュアル作成を効率化する方法

マニュアル作成ツールとは、マニュアルや手順書などを作成・共有するためのツールであり、1つのツールで多種類のマニュアルを作成できるものです。マニュアルはクラウドに保存され、インターネットに接続できる端末から閲覧するイメージです。

メリットとしては、マニュアルの基本構成がテンプレート化されており、業務内容を入力するだけで効率的にマニュアルを作成できる点があります。また、クラウド保存であるため、重い動画や画像も取り入れられ、タブレットやスマートフォンなどの端末で閲覧が可能な点も挙げられます。

デメリットは、コストがかかる点です。ツールによってコストがさまざまですので、自社ではどれほどのコストになるかを導入時に見積もる必要があります。

ツールの中には多言語翻訳や研修教材化できる機能もあり、取扱説明書や標準作業手順書(SOP)なども1つのツールで作成可能なものもあります。マニュアル作成によって解決したい課題やマニュアルの規模をイメージしてから見積りを依頼するとよいでしょう。

テンプレート

製造業のマニュアル作成を効率化する方法

テンプレートとは、Microsoft Officeソフト(WordやPowerPointなど)のテンプレートや、GoogleドキュメントやGoogleサイトにあるテンプレート、あるいはWebサイトで無料提供されているものです。

メリットとしては、Microsoft OfficeソフトやGoogleドキュメントの取り扱いに慣れている人が一般的に多いため、マニュアル作成者が効率的に作成できる点です。また、会社としてソフトのライセンスを所有していれば、ツールに関してコストがかからない点が最大のメリットです。

デメリットは、マニュアル作成に特化したテンプレートではないため、作成したいマニュアルによってはかえってレイアウトやデザインに手間がかかる点や、Googleではデータ量次第で有料になる点です。データを保存するサーバの用意や、改訂のたびに増えるファイルのバージョン管理にも注意が必要です。

マニュアルの分量が少ない場合や、まず部分的にマニュアルを作成したい場合に活用するとよいでしょう。

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まとめ

今回は、製造業の企業におけるマニュアル運用について解説しました。

専門的で高度な技術を扱い、危険を伴う作業もある製造業では、従業員が業務を深く理解することが求められます。ミスの軽減や品質維持、業務効率化や自社の貴重なナレッジの共有にもつながるため、従業員の業務理解を助けるマニュアルは重要な存在となります。

製造業におけるマニュアル作成の手順や、マニュアル運用を成功させる5つのポイント、マニュアル作成を効率化する2つのツールをご紹介しました。多忙な製造業においては、マニュアル作成ツールやテンプレートを活用しながら効率的に取り組むと、短期間でマニュアルを整備することができます。マニュアル作成の効率化については、以下の記事もぜひご参照ください。

関連記事:『マニュアル作成を効率化するための方法とは?作成手順・効率化するためのポイント・ツールの選び方について詳しく解説!

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