反転学習とは何か?注目される理由やメリット・課題について徹底解説
2022/08/03
反転学習(Flipped Learning)とは何か、知っていますか?
アメリカの教育現場で2000年頃から実施が始まったものです。日本においても、2011年に東京大学で「Flipped Classroom」として初めて授業が行われ、その後各地の小学校や高校などで実施されています。企業の人材育成においても、社員研修に反転学習を取り入れる企業が増えています。
この記事では、反転学習のやり方やメリット・課題について詳しく解説します。企業の人事や研修を担当される方や教育機関の方にぜひご覧いただければ幸いです。
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反転学習とは
反転学習とは、「授業で学習し、自宅で復習する」という流れを反転させ、「自宅で予習し、授業でさらに学習する」という流れにするものです。
例えば、企業研修であれば、社員は自宅で予習した後、集合研修を受講します。学校での授業であれば、生徒が自宅で予習した後、学校で授業を受けます。
研修や授業のやり方としては、その場で初めて内容を説明するのではなく、予習内容を元に議論を行ったり、質疑応答で内容を深掘りしたりするものになります。
反転学習の具体的な方法
反転学習の具体的な方法をご紹介します。
まず、受講生に予習する内容を伝えます。動画やe-learningのリンク先ややっておくべき課題、予習の期限を伝達します。
そして、社会人の研修では、講義の日にはロールプレイングやグループでのプレゼンテーション、不明点の質疑応答などを実施します。学校や塾といった教育機関では、授業の日は確認テストや調査内容の発表、質疑応答、グループワークやディスカッションといった掘り下げた学習を行います。
反転学習と反転授業
反転学習に似た言葉に、反転授業という言葉があります。
これらは同じ意味であり、反転授業は、より「授業」に軸足を置いた表現といえます。
生徒が自宅で先に学習するというスタイルは、従来の講義スタイルの授業からは180度異なっており、教師にとっては教室で生徒の理解度をつかみやすくなるというメリットがあります。
生徒にとっても、インプットを踏まえてのアウトプットの場ができることで学習内容がより定着しますし、わからないことを明確化して臨むことで質問ができるため、疑問点を放置しないで済むメリットがあります。
反転学習が注目される理由
近年、反転学習が注目されるようになった理由が2つあります。
- アメリカで実証済みの効果
- オンライン教育の普及
それぞれの理由について、ご説明します。
【理由1】アメリカで実証済みの効果
1つ目の理由は、アメリカで実証済みの効果があることです。
アメリカの小中学校で、ビデオ教材を用いることで学習意欲が向上した事例や、大学でオンライン講座を反転学習の予習に用いたところ、学生の講座修了率が向上した事例があります。(※1)
また、アメリカで反転学習の指導方法を実践してきた先駆者で、著書『反転授業』を同僚のジョナサン・バーグマン氏と共著したアーロン・サムズ氏によると、反転学習は授業の質を向上させるものであり、これまでは理解と暗記をさせることが中心だった授業を、新しく先進的な内容に変化させる効果があったとのことです。
日本においても、大学だけでなく、小学校や高校において取り組みが行われ、より深い学びが促進される効果が出ています。2019年の研究結果では、従来の予習と、反転学習の予習で比較すると予習の精度や記憶の保持に効果が認められています。(※2)
【理由2】オンライン教育の普及
2つ目の理由は、オンライン教育の普及です。
インターネット環境が普及し、学校や家庭にPCやタブレットが備えられるようになり、動画などのデジタル教材の共有がしやすくなりました。また、近年はコロナ禍によってリモートワーク化が進み、自宅へのPCの配備やネットワーク環境が整いつつあります。
このような状況により、動画や音声などデジタル教材のオンライン配信や、アプリやツールでの学習を行うことが可能になりました。
資料やテキストを読むだけの予習から、動画などで事前講義を受ける形の予習が可能になったことで、反転学習に注目が集まるようになりました。
反転学習はハイブリッド型学習の一つ
教室における対面の授業と、オンラインによる学習を組み合わせる方法はハイブリッド型学習と呼ばれ、特にコロナ禍で教育機関での取り組みが進みました。反転学習はハイブリッド型学習の一つです。
まず、ハイブリッド型には以下の3つの方式があります。
- ハイフレックス型(HyFlex:Hybrid-Flexible)…教室での対面授業をオンライン配信し、対面授業とオンライン授業を同時に行う方式。受講生はどちらかに参加する。
- ブレンド型…単元の内容次第で、オンライン学習と対面授業を交互に行う方式。
- 分散型…受講生を2つのグループに分けて分散させ、1つのグループが教室での対面授業、もう1つのグループはオンライン学習を行い、次回は入れ替える方式。
3つの方式のうち、反転学習は(2)のブレンド型の一部です。例えば、全10回の授業があるとして、第1回はオンライン学習、第2回は教室でのディスカッション、第3回はフィールドワークによる調査、といったように運営する場合、1回と2回の組み合わせが反転学習にあたります。
反転学習のメリット
反転学習のメリットは、主に3つあります。
- 深く理解できる
- アウトプットの習慣が身につく
- 個別のサポートが可能
どのようなメリットなのか、ご説明します。
【メリット1】深く理解できる
1つ目は、深く理解できるメリットです。
反転学習には主に動画やe-learningといったツールが使用されますが、これらは何回も再生できるので、よくわからなかった箇所を理解するまで繰り返すことができます。
また、自分のペースに合わせて効果的に学習できます。短めの再生時間でまめに学習したい人や一度に再生してまとめて学習したい人、ノートを取りながら聴きたい人やノートを書かず耳からの情報に集中したい人など、学習のペースは人それぞれです。
ノートを取るのに時間がほしい人にとっても、教室での対面授業よりしっかりノートを書くことができます。
【メリット2】アウトプットの習慣が身につく
2つ目は、アウトプットの習慣が身につくメリットです。
反転学習は、教師ではなく受講生が主体となり、アウトプットに焦点を当てた学習方法です。予め学んだ後に行う授業では、テストや演習のほか、プレゼンテーションやロールプレイ、ディスカッションやディベートなどで知識のアウトプットを行います。学習の順序を反転させることで、学んだことをアウトプットする場を確保できるのです。
学習は「インプット→アウトプット」の両方を行うことで知識が定着しますが、反転学習では両方の時間を確実にとることができるので、より知識が定着しやすくなります。知識が定着することを体験し、アウトプットの大切さを実感できるので、アウトプットの習慣が身につきます。
【メリット3】個別のサポートが可能
3つ目は、個別のサポートが可能というメリットです。
授業がアウトプットの場になり、受講生のアウトプットを見ることで、教える側は一人ひとりの理解度を確認することができます。
それぞれの受講生に合わせて、復習のための課題を出したり、理解をより深めるための参考文献を紹介したりするなど、きめ細やかなサポートが可能になります。
反転学習が抱える課題
反転学習はメリットのある学習方法ですが、一方で以下のような課題も指摘されています。
- 時間の使い方の工夫
- 予習の重要性の理解
- 研修や授業運営の負担増
一つずつ見ていきましょう。
時間の使い方の工夫
受講生は、予習の時間を捻出するために、時間の使い方を工夫する必要があります。
反転学習は予習することが前提であり、予習しないで授業や研修に臨むのでは、期待する効果を得られないばかりか、内容によっては全くついていけなくなることもあります。
予習する習慣がこれまでなかった人もいることを考え、予習のための時間を自発的に確保する仕組みや働きかけを行い、授業や研修当日までに余裕を持った日程で予習の期間を設けるようにしましょう。
予習の重要性の理解
受講生に、予習をすることの重要性をいかに理解してもらうかが課題です。
反転学習のための予習は、ただ行うだけでなく、品質も大切です。しっかりと予習を行い、予習内容を活かして効果的な授業を行うためには、次のようなポイントが求められます。
- 定められた期限までに、参加者全員が必ず予習を行うこと
- 動画などの予習教材はただ視聴するだけでなく、内容をつかむこと
- 不明点があれば調べてみて、それでもわからない場合はリストアップしておくなど、能動的に学習すること
予習をやらなかったり、やったとしても動画や資料をざっと眺めるだけで済ませたりすると、授業の場では何もアウトプットできず、反転学習の意味がなくなってしまいます。この点を受講生に認識させる必要があります。
研修や授業運営の負担増
反転学習が軌道に乗るまでの、研修や授業の運営の負担増をいかにクリアするかという課題があります。
従来の学習内容を予習と授業に分け、予習のためのデジタル教材を制作し、さらに授業の内容を変更する手間がかかります。また、受講生が予習をしたかどうか、どの程度行ったか進捗状況の管理という新たな仕事も生まれます。
デジタル教材の制作や進捗管理については、システムやツールを活用してクリアする方法もあります。次の章で、おすすめのツールをご紹介します。
反転学習を成功させるにはマニュアル作成ツールがおすすめ
反転学習における課題をクリアし、成功させるには、オンラインで使えるマニュアル作成ツールがおすすめです。
マニュアル作成ツールで、文字やイラスト、写真、動画などでわかりやすい教科書を作ります。オンラインツールですので、24時間どこの場所でも閲覧できますし、項目についての理解度チェックテストをツール内に設置することもできます。管理者は、課題の進捗状況を把握できます。
企業の業務研修やスキル研修、教育機関での基礎知識の学習など、さまざまな学びの場で広く活用することができます。
研修のためだけでなく、そのままマニュアルやテキストとして使用できますので、「紙のマニュアルを電子化したい」といった課題を持つ職場や、「毎年の講義にテキストとして使用したい」というニーズのある教育機関で、特におすすめです。
反転学習にマニュアル作成ツールを使うメリットが3つありますので、ご紹介します。
学習進捗の確認
受講生がどこまで学習を進めたか、進捗状況の確認ができます。
例えば、マニュアル作成ツールでは、受講生がチェックマークを入力したり、複数の選択肢から選んだり、記述式の回答をしたりする機能があります。説明した内容に関するテストとして使用したり、意見や感想を述べさせたりすると、受講生の理解度をチェックすることができます。
そして、ツールでは受講生と管理者の権限を分けて管理することが可能であり、受講生の進捗状況を管理者が把握できるようになっています。
このような機能により、受講生がどこまで理解したか、決められた予習の範囲を完了させたかをつかむことができます。
運営側の負担軽減
デジタル教材の制作が早く手間なくできることで、運営側の負担を軽減できます。
教材は、動画だけでなく、文字や図、表、写真などあらゆる表現方法で説明する必要があります。これまで作成していたWordの文章やExcelの表などを挿入したい場合もあります。先ほど触れた理解度チェックのための設問も盛り込みたいものです。
こういったあらゆる素材を、「ここにタイトルを入れる」「本文を入れる」などとテンプレート化された画面に入れていくだけで、体系的な業務のマニュアルや授業のテキストが出来上がります。
オンライン上で閲覧するだけでなく、紙での印刷もできますので、PCやタブレットがない場所でも予習を進めることが可能です。
PCやタブレットの有効活用
職場や学校から配布されたPCやタブレットを有効活用することができます。
コロナ禍や働き方改革によってリモートワークが広まり、それに伴って職場からPCを貸与されたり、学校からタブレットを配布されたりする人が増えています。マニュアル作成ツールはインターネット環境があれば使用できますので、それらの端末で、予習を進めることができます。
まとめ
反転学習とは、「教室内の学習」と「教室外の学習(宿題)」が反転し、先に自宅で「教室外の学習」をした後、教室で「教室内の学習」をするものです。
予習することで、受講生はより深く学習内容を理解でき、アウトプットの習慣も身につけることができます。教える側は受講生の理解度を把握しやすくなり、より良い授業内容やサポートとなるよう工夫できます。
ただ、反転学習の課題としては、受講生が予習を確実に行えるか、予習の進捗状況を管理者が把握できるかが挙げられます。予習のための教材準備の負担も大きくなります。
この課題を解決し、同時に体系的な教材作りにも寄与するのがマニュアル作成ツールです。入力が簡単で、オンラインで閲覧でき、紙による印刷もできます。予習状況を把握する機能もありますので、反転学習に最適なツールといえます。
こういったツールを活用して、学習効果の高い反転学習にぜひ取り組んでみてください。
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