業務の改善に役立つSOPとは?標準作業手順書の作成手順をわかりやすく解説
2022/1/14
業務の場で活用されるマニュアルには、いろいろな種類があります。
- マニュアル(部署全体など広い対象業務について、全体像とその詳しい手順が書かれたもの)
- 手順書(一つの業務について、詳しい手順が書かれたもの)
- チェックリスト(一つの業務について、チェックしながら業務を行えるもの)
- 取扱説明書(機器の使い方や注意点について書かれたもの)
- SOP(一つの業務について、標準的な手順が書かれたもの)
本記事では、SOP(標準作業手順書)に焦点を当て、SOPがもたらす効果やマニュアルとの違い、作成手順や作成の注意点をわかりやすく解説します。SOPやマニュアルを作成する前に、ぜひご覧ください。
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SOPとは
まずは、SOP(標準作業手順書)がどういうものかをご紹介していきます。
SOPとは「Standard Operating Procedures」の略 であり、製品やサービスについての作業で、最も標準的な手順を記したものです。安全で確実に、いつでも同じように実行できる再現性があり、無駄がなく効率的な手順が記載され、イメージとしては、マニュアルよりも短文で簡潔になります。
特に、製造業や医療・医薬などの現場において使われています。医薬品の治験では、治験の開始前に用意すべきものとなっています。
SOPがもたらす5つの効果
SOPを活用すると、業務でさまざまな良い効果を得ることができます。
従業員にとっては、安全かつ効率的な手順を学ぶことができるので、安心して仕事を始められますし、組織にとっては、従業員への教育時間短縮や、ミスや迷いの少ない効率的な業務運営などの効果が大きいものです。
具体的にどのような効果が期待できるのか、5つご紹介します。
【効果1】業務の効率化が図れる
SOPを活用して、業務の効率化を図ることができます。
標準的な手順を定め、誰にもわかりやすいように記したSOPがあると、それに沿って業務を行うことができます。そうすると、業務フローが明確なので、作業がわからなくて試行錯誤するなどの無駄な時間を費やさずに済みます。
また、担当者がミスなく作業できるため、間違えて手戻る、判断を迷う、などの無駄な手間の発生を防ぐことができます。
作業の過程が明確で無駄がないと、成果物も一定の品質を保つことができ、効率のよい業務運営となります。
【効果2】業務の属人化を防げる
SOPで手順を定めておくと、業務の属人化を防ぐことができます。
標準的な手順があるということは、業務が個人のノウハウに依存せず、誰が担当しても結果を出せる、ということになります。
異動や退職などで人が入れ替わっても業務を継続することができ、きちんとSOPに沿って作業をすることでその作業の品質が保たれるため、作業結果が安定します。
「自分が休むことはできない」「ベテラン従業員が休んだら誰もわからない」といった心理的不安がなくなったり、こっそりと特別なオペレーションを行うといった不正を防いだりする効果があります。
【効果3】教育時間の短縮ができる
研修や引継ぎでの、教育時間の短縮ができます。
新入社員や新任担当者が来たら、まずSOPで標準的な手順をつかんでもらいます。それを理解した上で、応用的な手順を説明すると、業務が頭に入りやすくなります。
教える側にとっても、新しい人の理解度が高い方が、教育時間を短縮することができます。それにより生み出された時間を、特異な事例の対応やトラブルのフォローに回すことも可能です。
異動や退職などで引継ぎを行う際も、既にあるSOPを中心に説明を行い、補足事項や注意点などを加えればよいので、多忙な引継ぎ期間でもあわてずに引継ぐことができます。
【効果4】従業員の意識向上が期待できる
従業員の意識向上が期待できます。
SOPがあることで、未習熟の従業員は、手順の習得がスムーズになります。わからなくなったらすぐに立ち戻り復習できるベースとなります。
熟練の従業員は、未習熟者を教える際や気になることがあった際に改めて見直すことで、業務内容を再確認できます。そして「こうしたらどうだろう?」と工夫を考えるきっかけとなり、標準的な手順よりも良い手順を模索していこう、という意識が高まっていきます。
【効果5】安全性の向上が期待できる
SOPに沿った業務遂行により、安全性の向上が期待できます。
安全かつ確実に業務を遂行できる標準的な手順があるので、未習熟者でも安心して業務に取り組むことができます。
特に、注意を要する作業や手順のミスが命に関わるような作業では、標準的な手順がないまま業務を行った場合は重大な問題が発生するので、従業員の安全を守るためにも、SOPに基づいた教育が求められます。
SOPとマニュアルの違いは?
一見似ているSOPとマニュアルでは、どんな違いがあるのでしょうか。
その業務の「一番効率的で誰にもわかる標準的な手順」を示す文書、という機能は共通していますが、記載する業務範囲や使用する対象者が異なります。詳しく見てみましょう。
マニュアル
マニュアルは、その業務についての考え方や背景、全体の流れ、手順、注意点などを体系的にまとめた文書です。
マニュアルの目的としては、詳しい手順だけでなく、業務の全体像を把握して自律的に業務遂行できるレベルに高めていくものです。一つの作業について詳しく手順を知るというよりも、全体の流れをつかみ、マニュアルに記載されていない事態が発生しても解決策を考えられるような、業務に対する深い理解を求めます。
マニュアルに記載する対象範囲は、業務に関するあらゆる情報です。関連部署や、業務を円滑に行うコツや注意点、トラブルシューティング、過去の事例など、その業務についてのナレッジを蓄積していく場所といえます。
マニュアルの使用者は、業務に関わるすべての従業員が対象となります。
SOP
SOPは、作業内容や業務の標準的な手順を、詳しく明確に記載した指示書です。
SOPの目的としては、標準的な手順や求める結果のレベルを、誰が見てもわかるように記載することで、業務の進捗状況を共有し、成果物の質を維持していくものです。SOPを作成した後も、承認者によってSOPの記載内容が承認され、基本的にはSOPに沿った業務が求められます。
SOPに記載する対象範囲は、その業務の基本的な手順です。コツや注意点といった、アドバイス的な内容ではなく、必ず行われる手順について記載されます。
SOPとマニュアルを両方使用している職場では、別々の存在というよりは、SOPがマニュアルに内包されるものとなります。
SOPの使用者は、基本的にはその業務を初めて行う未習熟者が対象となります。
SOPを作成する5つの手順
SOPとマニュアルの違いはつかめたでしょうか。
次に、SOPを作成する手順をご紹介します。SOPは、その業務を初めて行う担当者が使用するものです。ここをイメージしながら、読んでみてください。
【手順1】業務の選定を行う
第1に、SOPに記載する業務の選定を行います。
基幹となる業務や、組織の目標と関わり今後重要となっていく業務、課題解決が急務の業務、といったものを優先的に選びます。
そして、それらの業務のうち、どのプロセスをSOPに記載するかを決めていきます。例えば、定期点検の業務のうち、取り扱う部品数が多く、部品どうしが似ていて間違えやすいため、部品交換作業についてSOPを作成する、などと決めます。
対象となる業務が決まったら、この段階で、SOPの作成者と承認者を決定します。
【手順2】目標設定を明確にする
第2に、SOPによる目標設定を明確にします。
SOPの目的は、業務の進捗状況や成果物の質を、明確につかめるようにすることです。SOPに沿って作業を行い、どのような結果を得られるのかを明文化しましょう。
例えば、機器の定期点検についての作業であれば、点検の正しい手順とともに、「Aの部品にサビが付着していないこと」など、誰が見てもわかる判断基準を記載します。
【手順3】使用者と利用場面を決める
第3に、SOPの使用者と利用場面を決めます。
SOPを使用する人が、どのような知識や経験を持つ人なのか。例えば、新入社員なのか、もしくは組立・調整・保守といった流れの中で、組立や調整を経験したあと保守を担当する人なのかによって、専門用語や基礎知識についての解説をどの程度盛り込むかどうかが決まります。
次に、利用場面を明確にしましょう。例えば、作業が行われるのは社内なのか社外なのか、作業は準備段階のものか作業段階のものか、といったシーンをはっきりさせる、ということです。
当たり前のようですが、これらを定めるのと定めないのとでは、SOPでの言葉の選び方や表現が変わってきます。ぜひしっかり取り組んでみてください。
【手順4】形式を決める
第4に、SOPの形式を決めます。
業務に応じて、使用者がわかりやすい形式を選びます。主な形式には、以下のものがあります。
- ステップ式(シンプルな箇条書きのもの)
- 段階的ステップ式(1、1‐1、1‐2など、手順が段階に分かれ、項目が多いもの)
- フローチャート式(フローチャート図の図形で表現し、複数の部署を行き来するような手順や、判断によりフローが分岐するような手順のもの)
- チェックリスト式(箇条書きの項目に加え、はい・いいえやデータを記録するもの)
これらの本文に、表紙・目次・用語集・参考資料などを加えて作成します。そして、承認者が記載内容を承認し、完成させます。
【手順5】運用方法を決める
第5に、SOPの運用方法を決めます。
運用とは、完成したSOPを仮運用するかどうか、今後の更新はどのようにするかなどのことです。
仮運用については、例えば仮運用は2週間とする、想定した使用者がスムーズにSOPに沿って業務を行うことができたか、そのフィードバックをどう行うか、といったことを決めます。
更新については、例えば半年に一度、業務実態とSOPが一致しているかを見直し、乖離している場合は原因を調査し乖離を解消する、といったことを決めておきます。原因によっては、SOPの内容だけでなく、SOPの設置場所や研修方法を見直す必要があるかもしれません。数日程度の更新期間を設けた方がよいでしょう。
SOP作成の注意点とコツ
SOPは、具体的に、初心者にもわかりやすいように、複雑な業務を整理して見やすく記載する必要があります。作成時の注意点とコツをまとめましたので、参考にしてみてください。
見やすく簡潔にまとめる
SOPの文章は、見やすく簡潔にまとめましょう。
SOPは、作業をしながら見るものです。言葉を一つひとつ追い、一生懸命読み取らないとわからないようでは、作業に時間がかかってしまいます。
次のような工夫を心がけてみてください。
- 重要な語句は、意識的に文章の前半へ持っていく。
- 一文を短くシンプルにする。
- 図や表、イラスト、写真などを交えて説明する。
要点を分かりやすく記載する
要点を分かりやすく記載しましょう。
業務のプロセスを正確に表そうとするあまりに、詳しい前提条件や、誰でも判断できるレベルのことまで記載してしまうと、判断が難しいことや間違えやすいことが埋もれてしまい、ミスを防止できなくなります。「要するに、こういうこと」と要約した内容を記載し、足りなければ加えるようにします。
次のようなことに注意して、作成しましょう。
- 直接関係のない情報は入れない。
- フローチャートは難解になりがちなので、必要なこと以外はそぎ落とすくらいの意識で作成する。
- ひと目見ただけでわかるよう、大切な箇所は目立たせる。
成果の測定をする
SOP導入後の、成果の測定をしましょう。
SOPを作成したあとは、仮運用して、ミスを防ぎ組織の課題を解決するものになっているか、質の高い結果が生み出され組織の目標を達成するものになっているか確認しましょう。SOPの適用前と適用後で具体的に何が変わっているか、数値化できる変化などをできる限り洗い出すと、SOPの効果を感じ取ることができ、組織が活性化していきます。
体裁を整えただけで更新しない、形骸化したSOPにしてしまうと、効果が出ないだけでなく、作成に費やしたエネルギーが無駄になってしまいます。せっかく作り上げたSOPを運用していくモチベーションを保つためにも、成果を測定してみましょう。
常に最善であるように改善していく
SOPが、常に最善であるように改善していきましょう。
人間の細胞が入れ替わっていくように、業務も組織も、未来永劫同じものであり続けるわけではありません。例えば、部品の調達先が変わり仕様が変更になった、システムのアップデートにより画面が変わったなど、日々変化が出てきます。そういった変化を見逃さず、SOPに反映させていくと、最新の手続きを職場のメンバーで共有することができ、新しい人が来てもすぐSOPを教育に活用させることができます。
SOPを使用している人が意見を出しやすい雰囲気づくりを心がけ、意見を聞いて改善につなげていきましょう。
ツールを使う
SOPを効率的に作成するために、ツールを活用しましょう。
冒頭でご紹介したように、マニュアルには、SOPのほか手順書やチェックリスト、取扱説明書といった種類があります。業務内容によってこれらを使い分けている職場では、ミス防止や目標達成、ノウハウや知見の蓄積に役立てています。
こういった多種多様なマニュアルを一つのシステムで作成し、作成後の運用もしやすいのがマニュアル作成ツールです。一度作成したSOPやマニュアルを更新しやすいので、ナレッジの集積場所になりどんどん業務が改善されていく好循環にはいることができます。
特に、マニュアル作成ツールの中でも「KnowledgeSh@re」は、セキュリティ対策が万全な富士通グループの「富士通クラウド」が基盤となっているので、セキュリティ面でも安心です。
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『KnowledgeSh@reのご紹介パンフレット (PDF:1,090KB)』
まとめ
今回は、SOP(標準作業手順書)について、SOPがもたらす効果やマニュアルの違い、SOP作成の手順とコツを詳しくご紹介しました。
SOPは、業務の最適な手順をまとめたものであり、業務を初めて行う人がSOPに沿って業務を遂行するものです。
誰もが間違えやすい箇所を守り、手戻りなどの無駄や重大なミスを防止するので、業務品質が安定し、作業の安全性も確保できます。新人への教育時間を短縮でき、業務が属人化しにくくなり、従業員の習熟度が上がる、といった効果があります。
SOPはマニュアルと似た存在でもありますが、SOPは標準的な手順を簡潔にまとめたものであり、マニュアルはコツやノウハウも交えた詳細な手順を、あらゆる業務に関する情報とともにまとめたものです。
SOPの作成手順は、次の5ステップです。
- 対象業務の選定を行う
- 目標設定を明確にする
- 使用者と利用場面を決める
- 形式を決め、完成させる
- SOP作成後の運用方法を決める
SOP作成の注意点とコツは、一番はシンプルに要点を見やすく書くことです。そして、SOP導入後の成果を測ると同時に更新を続けていくこと、SOP作成・運用が楽になるマニュアル作成ツールを活用することも、SOPを無理なく導入するために大事なポイントです。
SOP作成の参考にしていただき、SOPを組織の課題解決や目標達成にフル活用してみてください。
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