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現場が変わった!働く人が主役の業務マニュアル活用術

「テクノロジー」と「コンテンツの切り口」で、読みたくなる業務マニュアルを作る
現場が変わった! 働く人が主役の業務マニュアル活用術

2020/10/6

皆さんの職場にも何らかの「業務マニュアル」があると思います。それでは、その業務マニュアルは十分に活用されているでしょうか?

「現場が変わった! 働く人が主役の業務マニュアル活用術」と題し、現場の従業員が積極的に“活用したくなる”業務マニュアル作成のコツについて、富士通ラーニングメディア コミュニケーションデザイン部の原 小百合が講演した内容をご紹介します。

なぜ業務マニュアルは “キャビネットの肥やし”になるのか

少子高齢化による労働力不足、人材の流動化、グローバル化など、働く現場の環境は大きく変化しています。職場におけるノウハウの継承や人材の早期育成は、もはや喫緊の経営課題になっているといえるでしょう。

そうした課題の解決策として注目されるのが「業務マニュアル」です。そもそも業務マニュアルは、業務の「基本ルール」や「基本手順」を集約して明文化したもの。社員の経験やスキルを問わず、業務マニュアルに則って作業してもらうことで業務の標準化が図れます。もちろん新人や初心者に、効率よく業務を習得してもらえるメリットもあります。さらには「業務の基本ルールが明確になることで、業務改善の“基”となる気づきも得られやすくなります」と、原は説明します。

富士通ラーニングメディア コミュニケーションデザイン部 部長 原 小百合

富士通ラーニングメディア コミュニケーションデザイン部
部長 原 小百合

しかし実際には、業務マニュアルを効果的に活用できている企業は多くありません。業務マニュアルの作成には手間と時間がかかり、しかも中身(コンテンツ)の作成にはノウハウも必要です。業務の変化スピードにマニュアルの更新が追いつかないという課題もあります。こうした面倒な事情があるので、あえてマニュアルを作っていないケースもあるでしょう。

では、こうした課題を解決するにはどうすればよいのでしょうか。原は、業務マニュアルの管理や作成を「効率化」すること、また欲しい情報が一目瞭然でわかる「社員が読みたくなるような」業務マニュアルを心がけて作ることが大切だと訴えます。

ここで株式会社フィット(以下、フィット)の代表取締役社長である藤原広光氏が登壇し、業務マニュアルを根本から改善したことで、現場で頻繁に活用されるようになった成功事例を紹介しました。フィットは人工知能(AI)を活用して、ドキュメントを自動的にレイアウトするサービスを開発/提供している企業です。藤原氏は業務マニュアルにまつわる課題を次のように指摘します。

「ホテルやレストランといった現場では、読み手の利便性が悪かったり、管理や作成/更新作業が煩雑だったりするマニュアルは、まず読んでもらえません。ほとんどの場合、キャビネットの奥に眠っています」(藤原氏)

株式会社フィット 代表取締役社長 藤原 広光氏

株式会社フィット 代表取締役社長 藤原 広光氏

例えばあるホテルでは、紙のマニュアルを本部で作成して現場に配布し、内容の改訂時には本部から各店舗あてに改訂や差し替えの通達を出していました。しかし、現場である各店舗では「集合研修が終われば誰もマニュアルを開かない」状態が続いており、改訂時の確認や運用も各店舗店長任せだったため、全社的な情報更新が徹底されていないという課題を抱えていたのです。

藤原氏はまず、現場の従業員にマニュアルを身近な存在に感じてもらうため、これまで紙だったマニュアルを電子化してPCやスマートフォン、タブレットで閲覧できる環境を整えました。

マニュアルを電子化したことで、内容の改訂や差し替えの手間も大幅に削減されました。また、従業員のアクセス(閲覧)状況も把握できるので、細やかな指導も可能になりました。さらに電子マニュアルの特性を生かし、文章では伝えにくい部分を動画化したところ、閲覧率は格段に向上しました。

こうしたさまざまな工夫を重ねるうちに、現場からも「こんなマニュアルが欲しい」といった積極的な要望が寄せられるようになり、現在では現場スタッフと本部がインタラクティブにやり取りしながら、業務マニュアルのブラッシュアップを進めています。

「誰が」「何の目的で」活用する業務マニュアルなのかを明確に

それでは、“活用される業務マニュアル”を作成するためのポイントは何でしょうか。その1つとして原は「テクノロジーを活用すること」を挙げます。

例えば、富士通ラーニングメディアが2019年にリリースした、クラウドで業務マニュアルを作成し、タイムリーに配信/共有できるSaaS型のサービス「KnowledgeSh@re」です。

KnowledgeSh@reは、これまで「暗黙知」の部分が多かった業務プロセスを可視化して「形式知」に変えます。また、マニュアルを利用する従業員の側でコメントのテキストや音声、動画なども挿入できる仕様になっているので、SNSのようにやり取りしながら、現場の“気づき”を取り込むことも可能です。利用者の閲覧履歴をログとして取得したり、マニュアルに記載された手順ごとにチェックボックスを設定したりすることもできるので、現場の従業員が「どのくらいの頻度で閲覧し」「どのくらい理解しているか」を把握することもできます。

個人の知を確実に企業の知に変える

さらに原はもう1つ、活用される業務マニュアル作成のポイントとして「『体系的なコンテンツ』と、『小さなコンテンツ』を組み合わせること」を挙げました。

体系的なコンテンツとは、業務のつながりやフローを理解し、業務全体を体系的に学ぶためのコンテンツです。一方、小さなコンテンツとは、説明対象である業務範囲を限定し、最小限の情報を素早く得るためのコンテンツです。マニュアル作成においては、両者の違いを明確に理解したうえで、「誰が」「いつ」「どこで」「何のために」「何を」「どのように」使うのかを具体的に想定し、その目的に沿った切り口でコンテンツを制作することが重要です。

業務マニュアルの制作ポイント

「その際に留意したいのは、『シンプルに作る』こと。デザインやレイアウトに凝りすぎず、読みやすさを最優先しましょう。そのためには、あらかじめコンテンツをテンプレート(定型)化しておくことがよいでしょう。もちろん、扱いやすい制作ツールを選択することはいうまでもありません」(原)

必要な人に、必要な情報だけを提供する業務マニュアルを作成することで、利用者に最も伝えたい情報を明確にすることができ、また利用者の学習負荷も軽減できます。原は「業務マニュアルの制作は、ソフトウェア設計と同様に『企画』と『設計』が大切です」と説きます。前述したとおり、誰のために、どんな業務マニュアルを作成したいのか、またどんな構成で、どんな見せ方をすれば効果的なのかを明確にしたうえで、現場目線でコンテンツを作成することが大切です。

「業務マニュアルの完成は『ゴール』ではなく『スタート』です。強い現場を実現するためには、改善を繰り返す必要があります。業務マニュアルの改訂や運用は、技術と知見を最大限に活用し、現場を巻き込んで作成していくことが大切です」(原)

注:「ラーニングイノベーション2019」にて開催したセミナーのレポートです。

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