2016年12月26日

コラム

  • CO☆PITプログラム

IT部門の未来 求められる思考パターンの転換

2016年 IT部門リーダー他流試合 プログラム

様々な産業へ先端テクノロジーが浸透し、あらゆる「モノ」が見える化、つながることで、従来とは異なるアプローチのビジネスが多く誕生している。 顧客価値の再定義が繰り返される日々。企業のフロント部門は、常に進化が求められており、ITシステムを担う部門も同様である。 従来のシステムの面倒をみることから、企業戦略に欠かせない役割を担うことが期待される。 日々、ビジネス環境の変化が進行していく中で、IT部門の次世代リーダーたちは、将来をどのように描いているのか。 企業の躍進を牽引していくであろうIT部門の変革者に、4つの問いからせまった。


IT部門は、なぜ今、思考パターンの変化が求められるのか ~問われる存在意義~

私達の未来。ITの急激な進展は、既存システムの保守・運用に対する価値を相対的に低下させ、別領域へのバリューシフトを促す。 IT部門の新しいミッションは、他社・他部門と連携してビジネスを創出していく主体組織になること。 実現していくには、ニーズに応える(業務部門の御用聞き)から、新しい領域へ切り込んでいく(組織の先駆者)、大胆な思考パターンの拡張が求められる。

「ただシステムを作るだけでは利益は生まれない」「ユーザーに言われるがまま、振り回されるがままのシステムに魅力はない」 「過去の成功体験にしがみついていては、次の挑戦ができない」「政治・駆け引きだけでは、真にユーザーに寄り添ったシステムは生まれない」 「システムの面倒だけで手一杯、身動きが取れない」

組織成長に欠かせない危機感が具体的な言葉になり、交錯し続ける。現行の延長線上に組織の生存はない。従来の思考パターンに捉われない 行動を作り、不要な行動は捨て去ることで、未来を変えていきたい。マーケットニーズの多様化に応えるべく、既存サービスに知能化・自動化が取り込まれ、 人間には異なる価値を生み出すよう代謝が促される節目の今、彼らは何をすべきか。

次の時代に求められる組織の思考パターンを探求し、転換していくこと。この1点に尽きると彼らは語った。

思考転換すべき5つの視点とは何か ~御用聞きから牽引者へ~

「目先」から「将来」への転換

「忙しい」「お金がない」「リソースがない」を中心にしたコミュニケーションスタイル。未来への投資を遅らせ、自組織の都合を優先していないだろうか。 ストッパーを外せない組織と個人に残るものは、先送りされ続けた課題だけかもしれない。

とりあえず構築したサブシステムと、合体を繰り返す基幹システムは将来の利益を生みださない。将来の利益は、本質的なユーザーニーズへ 徹底的に応え続けることしかない。

「経験」から「発想」への転換
IT革新のスピードは激しい。今日の常識は、明日の非常識。だから、培った経験に頼り切ったワークスタイルは通用しない。 こだわらないこと。経験にしがみつかず、常に新しい発想を持って、本質に近づく。 初めての職場は、物事がフラットに見える。異動した直後に見る不思議な光景。不思議を具現化した言葉こそ、組織環境を変えていくアイデアの原石。 初見を大切に。

「専業」から「兼業」への転換
システム開発だけの専従キャリアは、別の能力を持った組織・個人との、ビジネス基軸の接点が生まれにくい。 ビジネスとITを複線化した能力を持つことが、IT部門のプレゼンス向上の前提条件。 使えるシステム(仕様通り)と使われるシステム(ビジネス貢献)とでは、雲泥の差があり、利益を生み出すのは、後者のみ。

「批判」から「学習」への転換
華々しい構想の頓挫。失敗の理由は、実行しないことが大半だ。文句や批評をしているだけで、活動が前進せず、何も起こらない。 前進していく過程で生まれる、成功と失敗の教訓こそが、変化しつづけるビジネスニーズに応え続ける武器になる。 WebAPIを活用した異業種連携や、ビッグデータ解析による企業コンサルティング等、ITで牽引していく事業領域において 日々蓄積していた教訓こそが、ブレークスルーの起爆剤になる。

「費やす」から「稼ぐ」への転換
IT部門は投資コストが高い領域を扱うからこそ、経営直結の組織になるか、コストを垂れ流す組織になるか、選べる立場にある。 往々にして、システムの面倒屋であり、経営を担うことには及び腰ではないだろうか。経営戦略に責任を持ち、フロント部門と一緒に 経営指標を作っていく覚悟が、今後必ず求められる。 ITコストの大半を占める保守作業1つとっても、テクノロジーを駆使した取組みにより、大幅なコスト削減や予防保守への展開が待たれる。

思考転換した場合、しない場合の未来を教えてください ~花形になるか お荷物になるか~

思考転換した未来 [花形組織] 
「会社の新しい中核部門へ」 
経営、ユーザーからの圧倒的な信頼を勝ち取り、会社の右腕的な存在として辣腕を振るうことが期待される。 斬新なアイデアを事業化していくノウハウを持ち、マーケットと組織に環境変化をもたらす、他部門から尊敬される組織体へ変貌を遂げる。 会社の新製品発表会やメディア対応は、IT部門が一手に担う。

現行踏襲の未来 [お荷物組織] 
「会社の言いなり部門へ」 
システムの開発・維持・運用は、クラウド・IoT・AI・ロボティクス等の技術進展により、自動化領域が拡大する。 人間が担当するクリエイティブな領域は、専門家を有する組織への外注、コスト面ではオフショア展開が主流になる。 意思なく会社の要望に応え続け、コスト削減と技術移転を進めた結果、従来業務はテクノロジーにより奪われ、 コンピタンスは外部委譲した、スペシャリティのない組織へ縮小・退行する。

喫緊に立ち向かうべき課題は何か ~挑戦しない組織の再建~

思考パターンの変化を組織全体に促し、描いた未来を実現するには、役職者が失敗しながら成功を掴んでいく姿を、規範として見せることが何より大切。 部下がはじめの一歩を踏み出せるかは、上司の失敗と向き合う姿勢に現れる。一歩踏み出した後は、その挑戦を組織で支援していく環境作りが求められる。 例えば、補償制度(0.25人月/月は自由な創作活動の時間、月1回社長への企画コンペティションの開催、及び1案件必ず選出・予算化・専任組織の立上げ制度、 プロジェクト失敗時はノウハウを必須共有[しくじり先生スタイル])を設け、組織の風土を一気に変えていく仕掛けを作る。 特に、組織長は、企業内の能力者をマッチング、異能集団化させ、「新しさ」を追求するプロジェクトの立上げから終結までをリソース、財務、制度、 コミュニケーション面から支援する。

10名のリーダーは、組織長の目線から未来の組織を描くことで、これから起こる課題を自ら作り出した。ただし、職場には、今起こっている課題が山積している。 経営と現場の想いをつなぎ、組織をダイナミックに動かし、課題解決を実現して欲しい。苦労と苦難の先にある未来を切り拓くため、牽引者として働きが、 今から期待される。

本内容は、個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません。