eラーニングとは~人材育成の今と未来を紐解く~【前編】

eラーニングとは

HR techなど、いま、企業組織の人材育成へのテクノロジー活用について注目が集まっています。 デジタルテクノロジーがビジネスの中に深く浸透していく中で、そのテクノロジーに踊らされずに効果的に人材育成や能力開発に活用したいと考えている方も多いのではないでしょうか。

今回は人材育成のテクノロジーの中で、あらためてeラーニングについての最新事情や魅力、未来の可能性について、前編・後編に分けてお届けします。

【前編】eラーニングの基礎とトレンドを紹介!

前編では、eラーニングの仕組みや機能など、基本知識をおさらいしつつ、人材育成におけるeラーニングの必要性、最新動向に迫ります。

目次

話者プロフィール

上川 俊一

上川 俊一富士通ラーニングメディア執行役員、ラーニングICT事業部長兼ナレッジサービス事業本部員。1990年代のパソコンとインターネットの普及期からeラーニングに関わり、人材開発制度構築やマーケティングの経験を経て、2013年にeラーニングの世界に戻った。

eラーニングの基礎知識

素材・インタラクション・アセスメント&フィードバックがeラーニングの三大要素

eラーニングとは、インターネットに代表されるITを利用する学習のことです。ですから、インターネット経由で講義を受けることも、スマートフォンで問題を解くことも、eラーニングと言えます。

このeラーニングにはまず、「素材」が必要です。素材とは、Webブラウザで参照できる教科書や参考書はもちろんのこと、誰かが書いたブログや動画共有サイトで公開されている動画、Wikipediaのように整理されたWeb上の記述なども指します。そこから学びが得られ、課題が解決するのであれば、あらゆるものが素材と言えるのです。

では、素材がITで提供されていればeラーニングとして完成かというと、そうではありません。素材で学んでいる最中には「ここはどういう意味だろう」「もう少し詳しく知りたいな」と、詳しい知識を持っている人、素材を作った人に質問したいことが出てくるはずです。その要望に応えるため、eラーニングには「インタラクション」、いわゆるQ&Aの機能が求められます。

それから、「アセスメントとフィードバック」の機能も必要です。アセスメントとは、学びによってどの程度の知見を得られたのかを確かめるテストです。そのテストで満点が取れていれば、そして、そのことが学んだ本人にフィードバックされれば、素材とインタラクションによる学びが一定の効果を上げたことがわかります。

特に企業におけるeラーニングの目的は、単に従業員に学ばせることではなく、学びによって能力を付けてもらい、結果的に企業へ貢献してもらうことなので、学びがどの程度の効果を得たかはしっかりと確認する必要があるでしょう。ですから、アセスメントは欠かせません。

このように、企業におけるeラーニングの最もシンプルな構成要素は、素材、インタラクション、そして、アセスメント&フィードバックとなります。

eラーニングの構成要素の図

eラーニングの歴史はインターネットの歴史

こうしたeラーニングの構想は、パソコンがオフィスや家庭に普及し始めた1990年代には既にありました。弊社もその頃、「サイバー・キャンパス」という言葉を使ってeラーニング事業に取り組んでいました。

eラーニングの根幹は、その頃と今とで変わるものではありません。しかし、この30年ほどでインターネット環境の整備が劇的に進んだことで、動画や音声など、容量の大きな素材もインターネット経由で提供できるようになりました。eラーニングの発展は、インターネットの発展とともにあったと言うことができます。

この30年間で変わったのは、インターネット環境だけではありません。パソコンそのものも高性能になりましたし、何より、ビジネス環境が激変しました。社会の変化のスピードは加速しており、企業における戦略立案の方針も、人材育成も、そのスピードを前提にする必要があるのです。

eラーニングの必要性

先行きが見えない時代にこそeラーニングが求められる

最近、VUCA(ブーカ)という言葉がよく聞かれます。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたこの造語は、今後、社会の構造がどのように変化していくかの予測がとても難しいことを意味しています。私たちは、向かっている方向が曖昧な社会に生きているのです。

ですから、人材育成についても、かつてのような「部下は上司の背中を見て育つ」といった考え方はもう通用しません。じっくりと時間をかけて、部下が上司のように育った頃には、その部下の活躍の場は、既に失われてしまっているかもしれません。

その瞬間に求められる人材であり続けるためには、その瞬間に求められる知識やスキルを早急に身につける必要があります。なので、企業はそれを前提とした人材育成をしなくてはなりません。

スキマ時間を使えるeラーニングは学び直しに最適

一方で、人材育成の世界には「70:20:10の法則」が存在します。これは、リーダーになるための知見の7割は仕事上での経験から、2割は上司などの人から、1割が研修から学びを得られるといった意味です。ここで1割とされる研修には、多くの予算は割けないという企業も少なくないでしょう。しかし、1割であっても研修が重要なのも事実です。そこで、研修のために会場を用意したり講師を招いたり、また、忙しい従業員を集めて長時間拘束したりする必要のない、eラーニングへの期待が高まってきています。

人材育成における70:20:10の法則

eラーニングは、働き方改革が進む、これからの時代に求められる働き方もサポートできます。少子高齢化の進行で、今後、社会での働き手が不足していくことは明らかです。企業として、優秀な従業員には定年後も働き続けてもらいたいと考えるはずです。そのためには、社会の変革とそれに伴って求められる知識やスキルを身に付けてもらいたい――いわゆる学び直しをしてもらいたいものの、そのための時間を、今の仕事を休んで捻出されるのは困るのも事実です。企業が、定年後も働き続けてほしいと考える人=現場を離れられては困る人のことだからです。このように多忙な中で学んでほしい人にとって、スキマ時間を生かせるeラーニングは、最適な学びの場と言えます。

eラーニングのトレンド

eラーニングのトレンドは、動画・ゲーム・マイクロラーニング

ここで、昨今のeラーニングのトレンドをご紹介します。

まずは「動画」です。MOOC(ムーク)という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。Massive Open Online Courseの略で、もともとは、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学を中心に組織した、誰でも学べるオンライン大学のことです。それが、大学などの教育機関がオンラインで、そして無料で公開する講義という意味の一般名称になりました。大学へ通う時間や費用はないけれど、学習への強い意欲を持っている人に適したeラーニングと言えるでしょう。ただし、その大学で学んだという公式な資格を得るには、別途費用が必要なケースもあるようです。

「ゲーム」のようなeラーニングも増えています。一般に、学習用の素材は起承転結を意識して作られ、誰が学習しても、同じ結論に導かれるようになっています。ゲームでは、途中で選ぶ選択肢によって、ハッピーエンドになったりバッドエンドになったりしますが、このゲームの要素を取り入れ、学習者の学習意欲をかき立てるような素材が増えているのです。さらに今後は、話題になっているVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を組み合わせることで、遊びの要素を足したものも出てくると、より学習意欲をかき立てるものになるのではないでしょうか。

最後に、マイクロラーニングを紹介します。これは、主に数分程度の動画素材を使ったピンポイントでの学びです。ミレニアル世代と呼ばれる若者世代は、わからないことがあると、すぐにスマートフォンで調べるのが当たり前になっています。その延長線上で、従来は長時間の講義や厚い書物で学んでいたような内容を、いつでもどこでも、手軽に学びたいというニーズがあります。それに応えるのがマイクロラーニングです。

マイクロラーニング

学習者の内容に合わせたeラーニング選びがカギになる

動画もゲームもマイクロラーニングも、学びたい意欲のある人、学び方を知っている人にとっては魅力的な選択肢です。一方で、個々人が学びたいと思っているというよりは、企業や事業所全体でISO(国際標準化機構)の認証を得るために、企業側で学ばせたいと思っているような学習内容も存在しますし、学び方に自信のない人もいるでしょう。

こうした内容や人については、オーソドックスなインストラクション型のeラーニングが適しています。学習目標を設定し、その目標達成のためにどういったことを学んでいくのかという観点で作られる素材を使った学びです。eラーニングだけでなく、講師が教える講義タイプでの学びも有効です。企業における研修は、学びの内容や対象によって、その手段を変えることが重要であり、現在、その選択肢はかなり揃いつつあります。

「e講義動画ライブラリ」について

マイクロラーニング素材に活用できる「e講義動画ライブラリ」

弊社が開発した「e講義動画ライブラリ」には、長時間に及ぶ講義動画を、マイクロラーニング素材としても利用できる検索機能が付いています。学習者は、キーワードを入力することで、長い講義中、そのキーワードについて語られた部分だけに即座にアクセスし、該当部分の動画を視聴することができます。eラーニング担当者がわざわざマイクロラーニング用の素材を用意することなく、実質的なマイクロラーニングを実現できるのです。学習者にとっては、欲しい情報だけを短時間で得られる便利な機能です。

e講義動画ライブラリ